イソトレチノインによるニキビ治療

目次

イソトレチノイン(アキュテイン)とは?

イソトレチノイン(アクネトレント)

イソトレチノイン(Isotretinoin)は、ニキビ治療における最も効果的な内服薬であり、ビタミンA誘導体(レチノイド)の一種です。多くの臨床試験でその有効性が証明されています。

イソトレチノインの製品名

  • アクネトレント(AKNETRENT)
  • アキュテイン(Accutane)
  • ロアキュテイン(Roaccutane, ロアキュタン)
  • イソトロイン(Isotroin)
  • ソトレット(Sotret)
  • クララビス(Claravis)

日本におけるニキビ治療の現状

日本のニキビ治療は欧米に比べ40年以上遅れています。多くの皮膚科では、抗生物質や外用薬を中心とした保険診療が主流ですが、これらの治療では十分な効果が得られないケースが少なくありません。

その結果、適切な治療が受けられずにニキビ跡(瘢痕・クレーター)が形成される患者が多く見られます。当院では、イソトレチノインを最終手段ではなく、早期治療の選択肢として推奨しています。

当院の実績

院長・岩橋は、前職時代に国内導入を先駆けた医師であり、日本で最も早く(20年以上前)イソトレチノインを導入し、これまでに2万人以上の患者を治療してきました。豊富な経験に基づいた専門的な治療を提供しています。

イソトレチノインの効果と作用機序

臨床データと知見に基づく高い有効性

  • 皮膚科治療で改善しなかった患者の98%以上が改善
  • 1クールの治療でほぼすべての炎症性ニキビが減少
  • 再発率は約30%と低く、ニキビの重症度も低下

*当院の統計による再発率は、治療終了後、新生ニキビの数が治療前の状態の1/3以上に戻った場合を再発としています。

作用機序

  • 皮脂腺の縮小
    • 皮脂分泌を抑え、ニキビの原因を根本から改善 7 8 20 21
  • 角化異常の正常化
    • 皮脂腺細胞や表皮細胞を正常化し、毛穴の詰まりを解消し、新しいニキビを予防 9
  • 抗炎症作用
    • 炎症を抑え、赤みや腫れを改善 11 12

イソトレチノインの経過写真

当院でイソトレチノインによるニキビ治療受けた患者さんの写真をご覧になりたい方は、下記を押してください。※写真を掲載している患者さんには、掲載について同意を頂いております。無断で掲載することはありませんので、ご安心ください。

症例写真1(顔の重症ニキビ)

初診時(治療前)の写真

顔全体に強い炎症を持った大きなニキビ(結節)が多数できています。複数のニキビが集まって一つの大きな塊となり、強く腫れ上がっています。ニキビが多発してつながった状態の「集簇性痤瘡(しゅうぞくせいざそう)」という重症のニキビです。

重症ニキビ治療前1
重症ニキビ治療前3

来院の経緯

20代男性の方です。15歳から顔のニキビに悩まされるようになり、近医の皮膚科で、抗生物質、外用剤、ビタミン剤、漢方薬含め、ほとんどすべての保険治療を長年受け続けていましたが改善せず、当院に来院されました。

当院の治療

何年も繰り返し大きなニキビができ続けているため、凹みやクレーターの跡が残ってしまうリスクを十分説明し、イソトレチノインによる治療を開始しました。

5ヶ月後写真

治療開始から5カ月が経過した際の写真です。膿疱や結節はなくなり、丘疹やコメドもほぼ消失しました。

重症ニキビ治療後1
重症ニキビ治療後3

解説

症状が重いニキビでは、治らないまま何年も治療が継続されていると、一生治らない萎縮性瘢痕(凹み)が残ることがしばしば問題となります。

また、ニキビが顔全体にあるときは、炎症で顔が腫れているため、ニキビ跡に気づきにくいのですが、ニキビが消失すると、ニキビの下に隠れていた跡が姿を現してきます。

多くの患者さんは、すでに当院に来院された時点で瘢痕が形成されてしまっていますが、瘢痕を残さないためにも、重症ニキビには早期治療が重要です。

症例写真2(顔の重症ニキビ)

初診時(治療前)の写真

硬結を伴った膿疱が多数でき、顔全体が腫れています。目周囲の皮膚にもニキビができ、大きく腫れあがって顔が変形していました。皮膚の下で膿瘍が合わさって一塊となる「集簇性ざ瘡(しゅうぞくせいざそう)」という重症のニキビです。

重症ニキビ治療前4
重症ニキビ治療前6
重症ニキビ治療前5

来院の経緯

10代後半の患者さんです。4年前よりニキビができ始め、近医の皮膚科で抗生物質の内服、外用剤、漢方薬等の治療を3年間行っていましたが、一時的に多少良くなることはあっても治癒にはほど遠い状態でした。

2ヶ月前から炎症がどんどん強くなり、硬結嚢腫が多発するようになったため、近医では手に負えなくなり、大学病院を紹介されました。しかし、大学病院でも近医と同様の保険治療が行われ、2ヶ月間で変化が認められず、ご両親が当院へ転院を希望し、受診されました。

【過去の治療歴】市販のニキビ治療薬(複数種類)、内服ビタミン剤、抗生物質(ミノサイクリンなど)、漢方薬(複数種類、詳細不明)、外用剤(アクアチムクリーム、ダラシンゲル、ディフェリンゲル、ベピオゲル、コンベック軟膏、スタデルム軟膏、デルモゾールG軟膏)

当院の治療

初診時には発熱も伴い、血液データではWBC16400 CRP4.17と全身の炎症も認めました。膿皮症を起こす基礎疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)、サルコイドーシス、γグロブリン血症、リウマチ、ウイルス性肝炎、悪性リンパ腫などの鑑別診断を行いましたが、すべて否定的でした。

集簇性ざ瘡は大きな瘢痕を残すリスクが高いため、すぐにイソトレチノインによる治療を行いました。

5ヶ月後写真

イソトレチノインを飲み始めて2週間後に、さらに膿瘍が多発したものの、1ヶ月後から徐々に改善していき、5ヶ月後に炎症は完全に治まりました。ニキビ跡の赤みはまだ強く残り、凹凸も認められますが、新生ニキビはなくなり、顔全体の腫れは引いています。

重症ニキビ治療後4
重症ニキビ治療後5

8ヶ月後写真

再発を抑えるため、1クールの治療期間を終えた後、イソトレチノインの低用量維持療法を行いました。また、治療中は再生因子やヒトプラセンタが配合された調剤化粧品(EGホワイトローションEGホワイトクリーム)による保湿を徹底し、ピーリングによるニキビ跡ケアを行いました。

重症ニキビ治療後6
重症ニキビ治療後8
重症ニキビ治療後7

*新しいカメラに変えたため、設定がうまくいかず青白く撮れています。

解説

写真の患者さんは、皮膚科で3年間も抗生物質を飲み続けていましたが、改善は認められませんでした。日本でのニキビ治療は、欧米と比較して40年以上遅れており、重症であるほど、早期に治療を行わなければ、生涯にわたってニキビ跡(色素沈着や凹凸)が残ってしまうことになります。

イソトレチノインによる治療は、ニキビ治療の「最終手段=最後に行う治療」ではありません。重症ニキビの場合は、瘢痕を残さないためにもできるだけ早期に治療する必要があります。

症例写真3(顔~フェイスラインの膿をもったニキビ)

初診時(治療前)の写真

首やフェイスラインから、額までニキビが多発しています。ニキビの炎症後の色素沈着や凹凸(肥厚性瘢痕と委縮性瘢痕)などのニキビ跡も多数認められます。

女性重症ニキビ1
女性重症ニキビ2
女性重症ニキビ3

来院の経緯

20代の女性です。10年前よりニキビに悩んでおり、皮膚科で内服の抗生物質、ビタミン、漢方等の保険治療を長年続けてきましたが、改善を認めませんでした。

1年前に美容外科を受診し、フォトフェイシャルを6回、ケミカルピーリングとイオン導入を12回受けたものの、半年前からさらに悪化してしまったため、エステで鎮静パックや角質取りなどの施術を受けました。しかしながら、全く改善しないため当院へ来院されました。

【過去の治療歴】内服ビタミン剤、抗生物質(詳細不明、複数内服)、漢方薬(十味敗毒湯・桂枝茯苓丸ヨクイニンなど)、外用剤(詳細不明だが複数使用)、ビタミンCイオン導入(美容外科)、フォトフェイシャル(美容外科)、グリコール酸ケミカルピーリング(美容外科)、鎮静パック(エステ治療)、角質取り(エステ治療)

当院の治療

ニキビに対してイソトレチノインによる治療を行いました。治療中のスキンケアは、再生因子やヒトプラセンタが配合されたEGホワイトローションEGホワイトクリームへ変更してもらい、ニキビ跡の赤みには、サリチル酸マクロゴールピーリングを複数回行いました。

1ヶ月後写真

治療1ヶ月後の肌の状態は、ニキビが治っている部分もあるものの、フェイスラインと首のニキビは悪化しています。

アキュテイン悪化

5ヶ月後写真

治療5ヶ月後には、新しいニキビはほぼでなくなりました。EGホワイトローションとEGホワイトクリームによるスキンケアとピーリングをイソトレチノイン治療と併せて行ったことで、強い赤みを帯びたニキビ跡は、薄くピンク色に変わり目立たなくなっています。

女性アキュテイン治療後
女性アキュテイン治療後
女性アキュテイン治療後

解説

イソトレチノインを内服すると、最初の1ヶ月は約3割の患者さんに、一過性にニキビの増悪が認められます。 悪化がひどい場合は、早めに用量を増やしたり、炎症を鎮めるお薬を処方いたします。

過去に様々な治療を長年受け続けてきても改善しなかったため、初診時に生涯残ってしまうニキビ跡が多数ありましたが、ご本人は常に明るく、治療に前向きであったのが印象的でした。

症例写真4(顎・首のニキビ)

初診時(治療前)の写真

あご、フェイスライン、首を中心に、赤いニキビが多発しています。 女性のニキビは、思春期の頃は、Tゾーンや頬にできやすく、大人になってから顎やフェイスライン、首にできやすい部位が下がってくることがあります。

顎ニキビ

来院の経緯

この女性は、15年前よりニキビに悩んでおり、皮膚科で硫黄カンフルローション、抗生物質の内服、漢方薬、ビタミンなどの治療を長年受けていました。 その後、経口避妊薬による治療を他院で1年以上継続したものの悪化し、2年前からはマスクなしでは歩けない状態になってしまい、当院に来院されました。

当院の治療

イソトレチノインによるニキビ治療と、EGホワイトローションクリームによるスキンケアを行いました。

4ヶ月後写真

ニキビの炎症は引いており、小さなコメドを含めて、新しいニキビは一切できなくなりました。ニキビ跡の色素沈着は目立たなくなり、肌質も改善しています。 治療後の写真で首元がすっきりしていますが、治療中にダイエットで痩せられたそうです。

顎ニキビ治療後

解説

イソトレチノインには、肌のターンオーバーを促進させる効果があり、ニキビ後の色素沈着を改善する効果があります。

また、保湿と美白のために調合された調剤化粧品を使用することで、肌の水分や油分バランスを整え、保湿力を高めることができます。これにより、肌のトーンや質感の改善を促すことが期待できます。

症例写真5(頬から首にかけてのニキビ)

初診時(治療前)の写真

顔全体、首、フェイスラインに赤み(紅斑)、細かい赤いニキビ(丘疹)が多発し、一部に大きな結節を認めます。ニキビ跡の色素沈着や凹み(萎縮性瘢痕)も認められます。

重症にきび
重症にきび
重症にきび

来院の経緯

20代の男性の患者さんです。顔全体~首にかけてのニキビのため、皮膚科を受診し、保険治療(内服と外用、詳細不明)を半年以上受けていたそうですが、悪化が続いていたため、当院を受診されました。

当院の治療

イソトレチノイン治療と併せて、サリチル酸マクロゴールピーリングを開始しました。

4ヶ月後写真

イソトレチノインの処方1ヶ月後から改善を認め、4ヶ月経過した時点では、新生ニキビ、活動性ニキビはほとんど無くなりました。

重症にきび治療後
重症にきび治療後
重症にきび治療後

解説

こちらの患者さんは、以前より多少のニキビがあったそうですが、当院へ来院する7ヶ月前より急に顔全体~首にかけて悪化した始めてたとのことです。

ニキビの原因は遺伝的要因が大部分を占めますが、環境変化やストレスなどが契機になることもあります。

イソトレチノインに対する反応は良く、1ヶ月でニキビが改善しましたが、再発を防ぐために6ヶ月間継続しました。

症例写真6(顔全体の赤いニキビ)

初診時(治療前)の写真

顔全体に炎症を伴った赤いニキビが多発しています。また、炎症後紅斑という赤いニキビ跡も多数認めます。

赤ニキビ
赤ニキビ

来院の経緯

20代の男性の方です。15年前より思春期ニキビが発生し、大学受験前に顔全体に広がりました。その後、社会人になってからニキビは徐々に落ち着いてきたものの、常に顔全体に赤ニキビが複数ある状態でした。

近医の皮膚科で抗生物質等の保険治療を何年か受けていましたが、改善しないため当院を受診しました。

当院の治療

イソトレチノインによるニキビ治療を開始しました。治療開始2週間後にニキビが悪化してしまい、心配になり当院へ電話がありましたが、そのまま継続するように説明しました。

5ヶ月後写真

初期悪化があったものの、2ヶ月後からニキビは落ち着き、5カ月目には新生ニキビ、活動性ニキビはなくなり、ニキビ跡の色素沈着や凹凸もあまり残らずに治癒しました。

赤ニキビ治療後
赤ニキビ治療後

解説

イソトレチノイン治療の場合は1ヶ月間は、約30%の患者さんで一過性にキビが悪化する可能性があります。

増悪した場合は、なるべくニキビに刺激を与えないようにし、そのままお薬を継続して頂きます。また、症状が重度の場合は、抗生剤などを処方することもありますが、ほとんどの患者さんが当院に来院する前に、長期間、複数の抗生物質を飲んでおり、耐性菌などの問題もあって効果が出ないケースも多くあります。

症例写真7(顔の白ニキビと赤ニキビ)

初診時写真

顔全体、特に頬とあごに、ニキビが原因の赤い炎症と白い膿が多数あります。また、ニキビ跡の陥凹(萎縮性瘢痕)も多数認めます。

赤ニキビと白ニキビ
赤ニキビと白ニキビ
赤ニキビと白ニキビ

来院の経緯

20代男性の方です。7年前よりニキビができ始め、4年前から現在にかけて顔全体に丘疹、膿疱(白ニキビ)が多発するようになりました。

市販のニキビ治療薬やピーリング石鹸、保険診療の抗生物質、ビタミン剤、漢方薬、ディフェリンゲルやベピオゲルなどの外用剤、クリアタッチ(光治療)など、さまざまな治療を受けてきましたが、治らないため当院を受診しました。

【過去の治療歴】市販のニキビ治療薬(複数種類)、ピーリング石鹸、ビタミン剤、抗生物質(セフロキシム、ロキシスロマイシン)、漢方薬(桂枝茯苓丸加ヨクイニン、当帰芍薬散、荊芥連翹湯)、外用剤(アクアチムクリーム、ダラシンローション、ディフェリンゲル、ベピオゲル)、光治療(クリアタッチ)

当院の治療

イソトレチノインによる治療を開始しました。

1ヶ月後写真

治療開始1ヶ月後に、膿を持ったニキビが多数出現し、悪化の程度がひどかったため、イソトレチノインを増量しました。

初診時に悪化する可能性を説明していたため、ニキビが悪化したにもかかわらず、前向きに治療に取り組んでいただけました。

赤ニキビと白ニキビの悪化
赤ニキビと白ニキビの悪化
赤ニキビと白ニキビの悪化

5ヶ月後写真

3ヶ月後の改善も乏しかったため、さらにイソトレチノインを増量し、5ヶ月目で赤い炎症性のニキビも膿を持った白ニキビも消失しました。ただ、ニキビ跡の凹みは一度出来てしまうと一生残ってしまうため、残存しています。

赤ニキビと白ニキビ治療後
赤ニキビと白ニキビ治療後
赤ニキビと白ニキビ治療後

解説

赤ニキビは赤く腫れ上がった炎症を持ったニキビの俗称です。白ニキビは、膿を持ったニキビのことを言います。黒ニキビは、ニキビの頭の部分の皮脂が酸化して黒くなった状態です。blackheadsとも呼ばれます。

ニキビの色による分類はあくまでも一般的な俗称であり、治療法に大きな違いはありません。重要なのは、ニキビができる原因である皮脂腺のつまりを改善することです。そのため、症状や患者の状態に応じて、適切な治療法を選択する必要があります。

この患者のケースのように、イソトレチノインによる改善が乏しい場合、薬の量を増量していく必要があります。

ニキビの一時的な初期悪化を嫌がる患者さんもいますが、最初に説明しているため、途中で治療を中断する患者さんはほとんどいません。症例の方も治療に前向きであったために、ニキビを治癒させることができました。

症例写真8(頭皮・うなじ・背中のニキビ)

初診時(治療前)の写真

頭皮の中~うなじ~背中~腰まで、全体に赤いニキビ(丘疹と結節)と膿をもった白いニキビ(膿疱)を認めます。長年繰り返していたため、赤や赤黒いニキビ跡の色素沈着が多数残っています。

背中の重症ニキビ

来院の経緯

10代の男性の方です。16歳から近医の皮膚科に数年間通院して保険治療を継続しており、抗生物質をトータルで2,3年間処方されて飲んでいましたが、改善せず当院を受診されました。

当院の治療

イソトレチノインによる治療を開始しました。イソトレチノインは飲み薬ですので、頭皮や背中のニキビであっても、部位は関係なく効果を発揮します。

6ヶ月後写真

治療開始から6カ月後の写真です。ニキビ跡の色素沈着は多数残っているものの、炎症は引き、膿疱性ざ瘡は治りました。

背中の重症ニキビ治療後

解説

初診時にイソトレチノインはニキビ治療薬であって、ニキビ跡を改善させる効果は少ないことを説明をしていますが、実際には肌のターンオーバーを亢進させる作用があるため、ニキビ跡の赤みも改善させる効果が期待できます。

こちらの患者さんは、6ヶ月後の肌の状態に満足されていたため、レーザーやピーリングなどのニキビ跡治療は希望されませんでした。ニキビが治った後に、跡の治療をするかどうかは、ご本人の希望を考慮して決定しています。

症例写真9(胸と背中のニキビ)

初診時(治療前)の写真

背中全体にニキビ跡の赤み(紅斑)、赤く細かいニキビ(丘疹)を多数認め、胸にも散在していました。ニキビ跡の黒っぽい色素沈着も数多く見られ、一部は肥厚性瘢痕(盛り上がり)となっていました。

胸ニキビ
背中ニキビ

来院の経緯

20代の男性の患者さんです。12歳から、顔だけでなく、背中や胸などの体のニキビに悩まされていました。

9年間という長期にわたって保険治療を受け続けており、ミノマイシン・ルリッドなどの抗生物質、ビタミンBやC、パントテン酸、エピデュオゲル・ディフェリンゲル・ベピオゲルなどの塗り薬を定期的に使用していましたが、ご本人曰く全く改善しなかったとのことで、当院へ来院されました。

当院の治療

イソトレチノインによる治療を開始しました。

5ヶ月後写真

治療5カ月には、新生ニキビはゼロになりました。胸と背中のニキビによる炎症が治まったため、色調も綺麗になっています。

しかし、胸には数か所「肥厚性瘢痕」と呼ばれる盛り上がったニキビ跡が残っています。背中は、炎症後の赤黒い色素沈着のため、まだらに見えます。

胸ニキビ治療後
背中ニキビ治療後

解説

この症例のケースのように、長期間ニキビが繰り返し出来続けていると、必ずニキビ跡が残ってしまいます。

適切な治療を行なえば、ニキビを治すことは難しいことではありません。しかし、ニキビ跡は一生残ってしまうため、早期にニキビ治療を行うことが大切です。 ニキビの早期治療により、ケロイドや瘢痕を防ぐことができます。

副作用と安全管理

イソトレチノインの主な副作用

イソトレチノインにはさまざまな副作用が報告されています。当院では、副作用について詳細な説明を行い、定期的な血液検査・尿検査を実施しながら安全な治療を提供しています。

主な副作用(発生頻度が高いもの)

  • 皮膚・粘膜の乾燥(ほぼ全患者に発生)
  • 口角炎・口唇炎(唇が荒れやすくなる)
  • ドライアイ
  • 鼻血
  • 赤ら顔(一時的な毛細血管の拡張による)
  • 一時的なニキビの悪化(治療初期の反応)
  • 脂質異常(血液検査で監視)

まれに発生する重篤な副作用

  • 肝機能障害(血液検査で監視)
  • 膵炎・肝炎(極めて稀、血液検査で監視
  • 潰瘍性大腸炎・クローン病(極めて稀、血液検査で監視
  • スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚障害)
  • 精神症状(極めて稀、うつ・自殺企図の報告あり)

女性の方への重要な注意点:胎児の催奇形性

イソトレチノインは、妊娠中に服用すると胎児に重篤な奇形を引き起こすリスクがあるため、厳格な避妊が必要です。

  • 服用中および中止後6ヶ月間は必ず避妊を継続
  • アメリカのiPLEDGEプログラムに基づく妊娠予防対策が推奨される

副作用については、初診時に医師が詳しく説明いたしますので、不安な点があれば遠慮なくご相談ください。

治療中止後の影響

イソトレチノインを辞めた後の皮脂の戻り方は個人差がありますが、多くは80-90%程度戻ります。そのため、イソトレチノインによる乾燥は、通常、治療終了後、1ヶ月ほどで徐々に改善します。

治療をしっかりと行うことで、終了後のニキビの再発レベルは低下します。必要に応じて2クール目の治療が必要になるケースもあります。

イソトレチノインは危険なのか?

「イソトレチノインは怖い」との声もありますが、適切な診察と副作用管理を行えば安全に使用可能です。当院では、厳格な検査と専門医による管理のもとで処方を行っています。

治療を受けることができない方

以下の方は「イソトレチノインによるニキビ治療」を受けることができない場合があります。医師にご相談ください。

  1.  15歳未満の方
    骨端線が閉鎖して、身長の伸びにくくなる可能性があります。
  2. 18歳未満の方
    18歳未満の方は初診時には保護者の方と同伴でなければ、薬の処方はできません。再診時はご本人だけでも診察可能です。
  3. 潰瘍性大腸炎、クローン病、重篤な肝障害などの既往がある方
  4. うつ病、統合失調症等を患っている方
    現在症状が落ち着いている患者さんは、診察の際に医師へご相談ください。
  5. 妊娠中、授乳中、妊活中の方
    妊娠中、授乳中、妊活中、または1年以内に妊娠の予定がある方は、イソトレチノインの内服はできません。
  6. アレルギーのある方
    イソトレチノイン製剤でアレルギーを起こしたことのある方、アスピリン喘息のある方、パラベン・大豆・ピーナッツアレルギーのある方は服用できません。
  7. レーシックを受けて6ヶ月経過していない方
    レーシック手術の前後6ヶ月はイソトレチノインを服用できません22
  8. 定期検査を受けられない方
    安全管理のため、通常1ヶ月に1回の検査が必要となります。遠方の方や特別な事情がある方には長めに処方することも可能ですので、診察時にご相談ください。

イソトレチノインの料金

イソトレチノインの購入については、日本で未承認の薬剤であり市販されておらず、一般の薬局では購入できません。また、強い薬のため、インターネット上での個人輸入も医師の処方箋がない限り禁止されており15、違法にオンラインで流通している品質不明の薬剤にご注意ください。

イソトレチノインの用量は、ニキビの重症度、体重、肌の状態によって変わります。女性で20~40mg、男性で40~60mgが平均的な用量です。

薬剤価格(税込)
ニキビ治療薬:イソトレチノイン 10mg 30日分9,240円
ニキビ治療薬:イソトレチノイン 20mg 30日分12,540円
ニキビ治療薬:イソトレチノイン 40mg 30日分25,080円

10mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
10mg 30日分
9,240円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
16,698円~17,754円
14,498円~15,554円

20mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
20mg 30日分
12,540円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
19,998円~21,054円
17,798円~18,854円

40mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
40mg 30日分
25,080円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
32,538円~33,594円
30,338円~31,394円

60mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
60mg 30日分
37,620円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
45,078円~46,134円
42,878円~43,934円

80mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
80mg 30日分
50,160円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
57,618円~58,674円
55,418円~56,474円

100mg 1ヶ月の治療費

項目料金(税込)
初診料
再診料
3,850円
1,650円
イソトレチノイン
100mg 30日分
62,700円
採血料 3,608円
尿検査
(女性のみ)
1,056円
合計 / 初診時
合計 / 再診時
70,158円~71,214円
67,958円~69,014円
  • 薬の処方には必ず診察と検査が必要となります。
  • 日本では未承認薬のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

イソトレチノイン内服中は肌が乾燥するため、保湿が重要です。当院でイソトレチノインを内服中の方は、処方後2カ月以内は一部の調剤化粧品を割引価格で購入できるようになりました。詳しくは院内の資料をご覧ください。

安全かつ専門的な治療を受けるなら肌のクリニック

日本初 イソトレチノイン導入医師が監修する最先端の治療
2万人以上 の重症ニキビ患者を治療してきた確かな実績
✔ 一般的な皮膚科治療では改善しない難治性ニキビに特化
✔ オンライン診療ではなく、医師による対面診察で最適な治療プランを提案
✔ 副作用を徹底管理し、安心・安全な治療を提供
✔ 初期悪化を可能な限り防ぎ、ニキビ跡を最小限に抑える
✔ レーザー、サブシジョン、各種注入療法との組み合わせでニキビ跡も包括的に治療

イソトレチノインのよくある質問

イソトレチノインとアキュテインは同じ薬ですか?

イソトレチノインとアキュテインは同じお薬です。イソトレチノインが成分名、アキュテインが製品名です。

イソトレチノインが効かない場合はありますか?

イソトレチノインの有効性は、文献上98%の患者さんが治癒、改善しますが、当院の臨床データでは99%以上の改善率です。適切な用量と期間治療することで、効果を最大限出すことができます。

イソトレチノインの効果はいつから出ますか?

イソトレチノインの効果は、最初の1ヶ月は悪化する可能性がありますが、その後2~3ヶ月で現れてきます。改善がない場合は、薬剤の量を調整する必要がありますので、医師にご相談ください。

イソトレチノインでニキビ跡は治りますか?

イソトレチノインは、皮膚のターンオーバーを亢進する作用があり、新しい肌に置き換わるスピードが速くなります。そのため、ニキビ跡の紅斑(赤み)を改善させる効果が期待できます。

ニキビ跡のクレーター(凹み)については、真皮という皮膚の深い部分に瘢痕組織(傷痕)が出来てしまっているため、イソトレチノインの効果は期待できません。

胎児の催奇形性について教えてください

イソトレチノインの重大な副作用の一つに、妊娠した女性に投与すると流産や胎児の奇形を引き起こすという重篤な副作用があります。

具体的な報告として、中枢神経系の奇形、耳の欠損や奇形、目の異常、心奇形、口蓋裂、胸腺や副甲状腺の奇形があります。女性の場合、服用前には必ず妊娠反応検査(可能であれば服用開始1ヶ月前の検査がより確実)を行い、毎月の定期診察時にも必ず妊娠反応の検査を行います 14

服用中はもちろんですが、服用中止後の6ヶ月間は必ず避妊(可能であれば2種類以上の避妊)を行っていただきます。男性が服用する場合は、男性側も服用中と中止後の1ヶ月間は避妊をしていただいています。(1ヶ月でお薬が体の中から代謝されて無くなりますが、女性には安全性のマージンを取って6ヶ月としています。)

なお、エトレチナート(チガソン)という乾癬の治療薬がありますが、こちらは親油性がより強く半減期が120日間と長いため、服用後に2年間の避妊が必要となります。イソトレチノインの半減期は15時間~20時間ですので、チガソンとは体内の残留性が異なります。

所定の期間きちんと避妊していただければ、通常妊娠と比較して胎児の奇形率が上昇することはありません。16年間の治療の中で、当院の患者さんからの胎児の奇形の報告は1例もありません。

上記のことでご心配なことがありましたら、診察の際に遠慮なく医師にご相談ください。

通院頻度と治療期間を教えてください

通常は1ヶ月に1度の通院、治療期間は6ヶ月間です。特別なご事情がある方は、最大2ヶ月分まで処方しておりますが、副作用チェックの検査を定期的に受けていただく必要がございますので、可能な限り1ヶ月に1度の診察と検査を推奨しております。

イソトレチノインでニキビの再発を抑える方法はありますか?

イソトレチノインは再発率が比較的低いお薬ですが、それでも約30%前後の患者さんは再発し、数クール治療を受けなければならないケースがあります。できるだけ再発率を少なくするためには、「適切なタイミング」で薬を飲み、「適切な用量と期間」を守ることが大切です。

飲むタイミング

イソトレチノインを飲む適切なタイミングは、「食直後」です。脂溶性(しようせい)のため、脂肪分と一緒に吸収されていきます。空腹時に飲むと吸収が悪くなるため、効果が弱くなります。当然、飲み忘れにも注意していただきます。

適切な用量と期間

アメリカやドイツの研究では、1クールの期間中、累積で体重1 kgあたり120 mg以上の用量を服用することが、再発率を低下させるためには重要であると報告されています。つまり、体重60 kgの重症ニキビ患者の場合、1クールの期間をを6ヶ月間とすると、1日あたり約40 mgが必要量となります 17

用量を多くすれば、さらに再発率が下がるという報告もあります。ドイツの試験では1クールの期間中、220 mg/kg以上の用量を服用すると、再発率が有意に低下しました 18

軽症~中等症のニキビの場合、低用量でも大きく再発率が変わるわけではないため、低用量で処方することが多くなります。再発率は累積用量に関係するという報告は多数ありますが、否定する見解もあります 19

当院では重症ニキビの方が多く来院されているため、1日あたり60 mg以上の用量を処方するケースもあります。当院で過去に処方した最大量は1日140 mgです。

用量を増やして服用期間を長くすれば、再発率と再発の程度を下げることができますが、副作用の出現率は高まります。再発率を下げるには、副作用の程度を見ながら、新生ニキビができなくなるまで薬の量を少しずつ増やしていく必要があります。

治療中にレーザーや脱毛を受けることができますか?

イソトレチノインは光の感受性を高めるため、内服中に光やレーザーを受けると、シミや色素沈着、瘢痕の原因となることがあります。

ただし、レーザーの種類や出力などによって可能なものもあり、当院では過去の治療経験や文献を踏まえて、あえて治療中にニキビ跡のレーザーを推奨することもあります。

脱毛については、原則治療後1カ月経過してから行っていただきますが、当院で医療脱毛を受ける場合は、出力などを当院が把握することができるため、肌の状態によって治療中可能とするケースもあります。

各治療の「治療間隔(インターバル)」も併せてご参照ください。

治療中に日焼けはだめですか?

イソトレチノインは光の感受性を高めるお薬ですので、日光過敏になる可能性があります。そのため、治療中と治療終了後最低2ヶ月間は日焼けを避けてください。

イソトレチノインと飲み合わせがあるお薬はありますか?

イソトレチノインはいくつかの薬と飲み合わせ、相互作用があります。以下の薬とは一緒に飲まないでください。

  1. テトラサイクリン系抗生物質(頭痛の原因となる頭蓋内圧を上げる副作用が増強する可能性)
    代表的な商品名:ビブラマイシン、ミノマイシン、ミノサイクリン、ミノペン
  2. 副腎皮質ステロイド剤(骨を弱くする作用が出る可能性)
    代表的な商品名:プレドニン、プレドニゾロン、セレスタミン
    ※外用ステロイド薬や吸入ステロイド薬、短期的なステロイドの点滴は問題ありません。
  3. 抗てんかん薬(骨を弱くする作用が出る可能性)
    てんかんなどで使う抗けいれん剤です。抗てんかん薬自体に骨を脆くする作用があり、イソトレチノインとの相互作用は明らかではありませんが、定期的な骨密度チェックをお勧めします。
  4. ビタミンA(副作用全般を増強させる恐れ)
    総合ビタミン剤にはビタミンAが入っているものが多いため、必ずパッケージを確認してください。βカロテンは摂取して問題ありません。食事やジュースから摂取するビタミンAは問題ありません。ビタミンAのサプリを内服する場合は、内服治療終了後から最低2カ月以上の期間を空けて下さい。
  5. セントジョーンズワート
    セントジョーンズワートと呼ばれるハーブは、ピルの効果を減弱させる可能性があるため、避妊目的でピルを飲んでいる方は、セントジョーンズワートの併用は避けてください。

外用剤で肌を乾燥させる製剤はお控えください。記載以外のお薬は一緒に飲んでも心配いりません。また、上記のお薬を気付かずに短期間飲んだとしても、問題が起こることは非常にまれです。

副作用が出たので余った薬を返品できますか?

一度処方したお薬の返品・返金は承っておりません。「薬の交換や返品は可能ですか?」のページも併せてご参照ください。

お酒と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

アルコールとの相互作用はありませんので、一緒に飲んでも大丈夫ですが、薬を飲む際は水で飲んでください。イソトレチノインを服用中にアルコールを多量に摂取すると肝機能障害などが起こりやすいため、過度な飲酒はお控えください。

薬を飲み忘れた時はどうしたら良いですか?

イソトレチノインを飲み忘れた場合、食直後の服用が理想ですので、当日中であれば、次の食事の後に飲むようにしてください。次の食事を食べない場合は、気づいたタイミングで飲んでください。前日に飲み忘れた分は、そのまま無視して飲まなくて構いません。

参考文献・サイト一覧
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