ニキビ治療(総論)– Acne treatment –

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ニキビ(尋常性ざ瘡)とは?

ニキビ(尋常性ざ瘡)は毛穴が詰まり、アクネ菌が繁殖して炎症を引き起こす皮膚疾患です。10代の思春期に多く見られますが、大人ニキビとして20~30代以降にも頻繁に発症します。

ニキビの主な原因

ニキビ患者さんは、ニキビの原因を生活習慣の中に見つけ出そうとします。

  • 「食べ物が悪いの?」
  • 「顔を洗っていないから?メイクを落とさなかったから?」
  • 「ストレスが原因?」
  • 「何かのアレルギーかな?」
  • 「化粧品が合っていないのかしら?」

実は、ニキビの発生要因は遺伝的・体質的なものが主で、生活習慣やスキンケアの影響は限定的です。同じ生活習慣でも、ニキビができる人とできない人がいます。

ニキビの原因について、詳しくは下記のブログをご覧ください。

日本のニキビ治療の課題

日本のニキビ治療は欧米と比べ数十年遅れており、医学的根拠(エビデンス)の少ない美容治療や化粧品、医薬部外品が市場に多く出回っています。

  • 美容治療の問題点
    レーザー治療、光治療、ピーリング、PDT、イオン導入、ニキビ注射、ニキビワクチンなどはアメリカ皮膚科学会ガイドラインでは推奨されておらず、エビデンスが十分ではありません。
  • 化粧品・医薬部外品の問題点
    化粧品や医薬部外品で「ニキビを治す」ことが医学的に認められたものはありません。医薬部外品に配合されるグリチルリチン酸ジカリウムは、一定濃度配合すればニキビに効果があると宣伝できるものの、臨床的にはほぼ効果がなく、ニキビ治療には不向きです。
    今の日本では、効果のない化粧品や医薬部外品の誇大広告が野放しにされている現状があり、ネットリテラシーを高めて、広告に騙されないようにしてください。

保険治療の限界

日本の保険診療では主に抗生物質やアダパレン、ベンゾイルなどが処方されますが、効果に限界があり、長期間通院しても改善しない患者も多数います。ニキビの根本原因である皮脂腺のつまりは皮膚の奥にあるため、塗り薬が中心の皮膚科治療では、効果が出にくいという現状があります。

種類保険皮膚科で出される薬剤
抗生物質
(内服)
ミノマイシン、ミノサイクリン、ビブラマイシン、ルリッド、ロキシスロマイシン
抗生物質
(外用)
ダラシン、アクアチム、ゼビアックス、デュアック(ダラシン+ベピオ)
漢方薬清上防風湯、十味敗毒湯、桂枝茯苓丸ヨクイニン、芍薬甘草湯、当帰芍薬散、加味逍遙散、荊芥連翹湯、温経湯
ビタミンシナール、ハイチオール、フラビタン、ピドキサール
アダパレンディフェリンゲル、エピデュオゲル(ディフェリン+ベピオ)
ベンゾイルベピオゲル、エピデュオゲル(ディフェリン+ベピオ)、デュアック(ダラシン+ベピオ)

欧米のニキビ治療

アメリカ皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインでは、重症ニキビの第一選択薬としてイソトレチノインが推奨されています。また、中等症ではホルモン治療(低用量ピル・スピロノラクトン)が推奨されています。抗生物質の長期内服は推奨されていません。

アメリカ皮膚科学会ニキビ治療ガイドライン
アメリカ皮膚科学会ガイドラインより

当院が重視する治療のポイント

  1. 医学的根拠に基づいた治療
    欧米のガイドラインを基に、ニキビの重症度や患者様の状態に最適な治療を行います。
  2. 体の中からの治療
    外側からのケアだけでなく、飲み薬で体の内側から改善を図ります。
  3. 早期治療の徹底
    早期治療でニキビ跡のリスクを最小限に抑えます。凹みなどのニキビ跡は一生残ってしまうため、早期から適切な治療を開始します。

肌のクリニックのニキビ治療

当院では欧米のエビデンスに基づいた「イソトレチノイン」や「ホルモン治療」を中心に治療を行っています。詳細は各論ページをご覧ください。

ニキビ治療の一般的な質問

保険は効きますか?

いいえ。当院のニキビ治療は、すべて自費診療です。

肌のクリニックのニキビ治療にはどんなものがありますか?

欧米のニキビ治療ガイドラインに準拠し、男性の場合は「イソトレチノイン治療」、女性の場合は「 イソトレチノイン」もしくは「ホルモン療法」を行います。

治療成績を教えてください

治療中にほぼ新生ニキビがなくなる改善率は、ホルモン治療で95%以上、イソトレチノイン治療で98%以上です。ホルモン治療の再発率は60%以上と高めで、イソトレチノイン治療の再発率は30%です。

なぜ内側からの治療が重要なのですか?

「ニキビは内服薬によって体の中から治す」ことが大切です。実際にアメリカ皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインでも、中等症~重症の難治性ニキビに対しては、内服治療が推奨されています。

ニキビは単に皮膚の問題だけではありません。ホルモンバランスや免疫など体の内側の問題のほうが大きな原因となります。レーザーや光治療、ピーリング、塗り薬などの外面からのアプローチでは、新しく出てくるニキビを防ぐ効果は乏しいと言えます。

軽症のニキビは、まず保険内の外用薬で治療し、改善がない場合に内服薬による治療を行います。中等症以上のニキビには、内服薬を第一選択とします。

新生ニキビができなくなった後に、並行して、レーザーやピーリングでニキビ跡治療を行います。

この順番を間違えてしまうと、ピーリングやレーザーを受けて一時的に良くなったとしても、また新しくニキビができ、それがニキビ跡になってしまい、永遠に肌が綺麗にならないという悪循環に陥るため、注意が必要です。

参考文献・サイト一覧
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