大きなニキビや深い場所にこもったニキビができると、皮膚の深層の「真皮」まで炎症が及び、傷になります。その傷が治る過程(創傷治癒過程・そうしょうちゆかてい)で、傷は肉芽組織→瘢痕組織に置き換わります。

この瘢痕組織が、ニキビ跡の原因となります。正常な真皮に近い構造で治っていけば、傷跡は目立ちませんが、創傷治癒過程がうまく働かないと、クレーター、肥厚性瘢痕、ケロイドなど、肌の凹凸となってしまいます。

ニキビ跡のでき方については、院長ブログの「ニキビ跡の凹凸・クレーターの形成」をご覧ください。

凹みの分類

ニキビ跡の凹み

ニキビ跡の凹みは、その形態によってアイスピック型、ローリング型、ボックス型の3つに分けられ、それに加えて、脂肪萎縮型が併存します。

アイスピック型

アイスピックで突っつかれたように、深くて狭い凹みは、アイスピック型と呼ばれています。凹みは真皮の奥深くまで到達し、ほぼ全層まで及んでいます。組織学的には表皮の下の真皮層が全くないか、ほとんど欠損している状態です。

ローリング型

ローリング型のニキビ跡は、線維化組織で表皮が筋膜と癒着して、引っ張られている状態になっています。線維化組織が、船の錨(イカリ)のように見えることから、海外では anchored acne scars(アンカード・アクネ・スカー)やtethered acne scars(テザード・アクネ・スカー)と呼ばれています。

辺縁はなだらかで、ボックス型のように直角ではないことで区別をします。顔の筋肉を動かした際に、筋肉の動きに引っ張られるように凹みが深くなれば、筋膜と癒着していると判断できます。

ボックス型

縁が直角に窪んでいるタイプのニキビ跡を、ボックス型と呼びます。表皮の下は瘢痕組織でがっちりと固まっていて、辺縁がローリング型のようになだらかではないことで見分けますが、実際には合併していることが多くあります。

脂肪萎縮型

皮下組織(脂肪組織)の萎縮によって起こるニキビ跡です。ニキビの炎症によって、脂肪組織に変性、瘢痕化が起こって凹み、そのことによってその上の真皮や表皮が凹みます。診断は、接線方向からのライティングと皮膚伸展テストを行って判断します。

加齢による脂肪組織や真皮の減少も一因です。若い頃には目立たなかったニキビ跡が、年齢を重ねるにつれて、肌のハリが衰えて目立ってくるというのも、同じ病態です。

凹みとクレーターの治療

ニキビ跡のタイプによって治療方法が若干異なります。

アイスピック型の治療

アイスピック型ニキビ跡凹みが深いため、最も治りにくいニキビ跡です。海外では瘢痕組織そのものをパンチングの器具でくり抜き(紙の穴あけパンチのように丸くくり抜きます。)、ピンセットで上に持ち上げて固定するくり抜き挙上法や、TCA(真皮まで溶かす強力な酸)を凹み部分に垂らし、瘢痕組織を除去して再構築させるTCA CROSSピーリングが行われています。

「肌のクリニック」では、くり抜き挙上法とTCA CROSSピーリングは、侵襲性の問題やダウンタイムなどを考慮して行っておらず、代わりにCO2フラクショナルレーザーによる治療やダーマペンによる治療を行います。

アイスピック型の辺縁の真皮下には、硬い瘢痕組織が形成されており、真皮全層まで凹みがあるため、レーザーの照射エネルギーを高くし、より深くまで照射する必要があります。また、ダーマペンの針の長さも、通常より長く設定して、瘢痕組織を壊し、組織の再構築を促します。

ローリング型の治療

ローリング型ニキビ跡

ローリング型のニキビ跡では、まず表皮を引っ張っている癒着を剥がさなければなりません。フラクショナルレーザーやダーマペンの場合、垂直方向へレーザービームや針が動くため、繊維を切断しにくいのですが、サブシジョンという方法で切断することが可能です。

サブシジョンは医療用の針(16G~27G針や、Becton Dickinson社製 BD NoKor等)を皮下に挿入し、線維化組織を切断して癒着を剥離する手法です。下図のように、横方向に針を挿入して、皮下で前後に動かしたり(トンネリングテクニック)、扇状に針を動かしたりして(ワイプテクニック)線維化組織を切断します。その後、しっかりと癒着が剥がれたことを確認して、硬めの架橋されたヒアルロン酸を注入して盛り上げます。サブシジョン

サブシジョンは一度の処置で30%程度の凹みの改善が期待できます。気になる場合は1ヶ月以上の期間をおいて、何度か繰り返し行う必要があります。注入したヒアルロン酸はおよそ1年~2年で吸収されてしまいますが、繰り返し行うことにより、自己のコラーゲンの産生が促され、凹みが目立たなくなっていきます。

当院では扱っていませんが、Bellafill(Suneva Medical社製)という注入剤も海外では使用されています。Bellafillは、コラーゲンとポリメチルメタクリレート/PMMAからできており、注入するとPMMAがコラーゲンの産生を刺激して、周囲にコラーゲンが生成されます。非吸収性なので効果が半永久的な反面、やり直しがききません。

成長因子のbFGFは肉芽組織の形成を強力に促進するため、瘢痕組織を丁寧に壊した後であれば皮膚をしっかりと盛り上がらせることができ、効果も持続します。しかし、逆に盛り上がり過ぎてしまったり、癒着がしっかり剥がれていないと、凹みのある瘢痕組織部分は盛り上がらず、周囲だけが盛り上がってしまったりといったリスクがあります。一度自己の組織が増殖してしまうと、やり直しがききませんので、十分にリスクを考慮の上、選択する必要があります。

サブシジョンは、部分的であれば侵襲性はそこまで高くありませんが、範囲が広いとワイプテクニックで広範に癒着を剥離しなければいけないため、かなりの出血をきたすことがあります。ダウンタイムは3日~2週間です。

ローリング型のニキビ跡は、ボックス型と比較して表皮下の瘢痕組織はほとんどないか、少ないとされています。しかし、実際には両者は混在していることが多く、サブシジョン後に注入剤で盛り上がらない場合は、硬くなった瘢痕組織が邪魔しているため、瘢痕組織をCO2フラクショナルレーザーやダーマペンなどで破壊しなければなりません。サブシジョン・注入剤の充填・CO2フラクショナルレーザー・ダーマペンなど複合的な治療が必要です。

ボックス型のニキビ跡治療

ボックス型ニキビ跡

ボックス型は、凹みのニキビ跡の中では一番多く見られます。表皮の下は、瘢痕組織でがっちりと固まっており、CO2フラクショナルレーザーやダーマペンで瘢痕組織を破壊して、新しい皮膚を再生させることを繰り返します。

当院では、綺麗な皮膚を再生させるために、レーザーやダーマペン後に必ずハイドロコロイドパッチで湿潤療法を行っています。また、成長因子(bFGF・EGF・IGF・プラセンタの合剤)や、臍帯血培養上清液を塗布し、組織の再生を促します。

水疱瘡の跡のように、単独のボックス型の凹みは、レーザーで辺縁だけを少し削って、なだらかにすることで、目立ちにくくすることも可能です。

ローリング型とボックス型は、実際には区別が付きにくいことも多く、一つのニキビ跡の中に混在していることもあります。また、後に述べる脂肪萎縮型のニキビ跡とも共存しているため、筋膜との癒着を確認したり、皮膚伸展テストで確認して、サブシジョンが有効かどうかも判断しなければなりません。

脂肪萎縮型のニキビ跡治療

脂肪萎縮型ニキビ跡

脂肪組織との癒着を剥がして、そこにヒアルロン酸を注入するサブシジョンが効果的です。また、萎縮性ニキビ跡は、前述した様々なタイプの凹みと共存しているため、複合的な治療が必要なケースが多くあります。

脂肪萎縮型と同じような病態として、加齢による脂肪組織の減少や真皮のたるみ、表情筋の衰えによって、ニキビ跡が目立ってくることがあります。

真皮のたるみを改善するには、CO2レーザー後の臍帯血培養上清液も補助的な治療として有効です。皮下組織~真皮の萎縮に対しては、成長因子のbFGFの注入が最も効果が高いのですが、しこり等の副作用のリスクもあり、お勧めできる治療ではありません。筋肉のたるみを改善するには、顔の表情筋をトレーニングすることも大切です。

真皮の治療が終わった後、もう少し改善させたいという希望があれば、当院では行っていませんが、美容整形手術を受けられるのも一つの方法です。リフトアップ手術を受けることにより、皮膚のたるみが改善されますので、ニキビ跡が目立ちにくくなります。

加齢による皮膚のたるみでニキビ跡が目立ってくるのは老化現象ですから、ある程度は仕方がありません。あまり過度に治療に期待せず、できる範囲で行うのが良いと考えます。

凹み・クレーター治療の料金

凹みの治療は、新規ニキビができない方に限ります。また、初診当日に施術はできませんので、ご了承ください。

ダーマペン+サブシジョン、エコツー+サブシジョンなどの複合的な治療が必要となることがあります。ダーマペンは看護師が施術、エコツーは医師が施術いたします。

  1. エコツーとダーマペンの顔半分の料金は、「鼻+ほほ」、「フェイスライン+ほほ」、「こめかみ+ほほ」、「こめかみ+フェイスライン」、「あご+ほほ」など、面積が顔半分以下の場合に適応になります。それ以上は、1面分の料金となります。
  2. エコツーやダーマペンの施術後に「臍帯血幹細胞培養上清液」や「成長因子」を塗布することで、肌の再生をより促す治療です。詳しくは、「さい帯血培養液 | HSCM100」をご参照ください。
  3. サブシジョンの価格には、ヒアルロン酸の注入料金や局所麻酔代が含まれています。
項目料金(税別)
初診料
2,900円
再診料(施術のみ不要)980円
エコツーエボリューション
CO2レーザー*1
顔全体1回 39,800円
顔半分1回 29,800円
顔1/4以下 19,800円
ダーマペン*1顔全体1回 29,800円
顔半分1回 19,800円
さい帯血培養液HSCM100*229,800円
成長因子+プラセンタ*210,000円
サブシジョン*3
(ヒアルロン酸含む)
1箇所 39,800円
クリーム麻酔(必要時)顔1面 3,000円
体は面積による
ハイドロコロイドテープ
(湿潤療法用)
実費

ニキビ跡の盛り上がり

ニキビ後に肌にしこりが残ったり、赤みを伴って盛りあがることがあります。ほとんどが肥厚性瘢痕という凸みですが、稀にケロイドや稗粒腫(ひりゅうしゅ)、粉瘤(ふんりゅう)のこともあります。

稗粒腫は炭酸ガスレーザーで、粉瘤は手術により簡単に取れるため、ここでは肥厚性瘢痕とケロイドについて記載していきます。

肥厚性瘢痕とケロイド

肥厚性瘢痕

肥厚性瘢痕とケロイドは別の病態として区別されていますが、両者とも膠原線維(コラーゲン線維)の過剰な蓄積であり、組織学的に区別することは困難です。

創傷治癒過程の異常や遅延によって、瘢痕組織が過剰に作られて盛り上がった状態になります。

肥厚性瘢痕は、数ヶ月から数年以内に徐々に平坦になっていき、赤みも消失して通常の瘢痕になります。対してケロイドは、治癒傾向がなく健常部へしみ出すように出来てきます。治療に対して抵抗性が強く、再発傾向が強いのも特徴です。肥厚性瘢痕とケロイドが、一つの瘢痕の中に共存することもあり、区別が難しいケースが多いのが現状です。

肥厚性瘢痕とケロイドの治療

肥厚性瘢痕とケロイドの治療は、主に保険治療となるため、当院では行っていません(混合診療の禁止)。

具体的な治療は、ケナコルトというステロイドの注射、ステロイドテープ(ドレニゾンテープ)、圧迫療法、トラニラスト(リザベン)、液体窒素による凍結療法などです。また、放射線治療(電子線照射)も初期のケロイドには効果があります。放射線治療は、文京区にある日本医大形成外科のケロイド外来で行われています。

ケナコルトの注射は複数回の治療が必要ですが、確実に肥厚性瘢痕・ケロイドを小さくできるため、治療の第一選択となっています。ただし、ケロイドは難治性であり、一度小さくなっても再発しやすいことが問題となります。

ステロイドテープやシリコンジェルシートによる圧迫療法は、副作用が少なく、時間はかかりますが徐々に盛り上がりを小さくします。

トラニラスト(リザベン)は、飲み薬で唯一ケロイドの増殖を抑制する作用が認められています。劇的な効果はありませんが、副作用が比較的少ないお薬なので、ケロイド体質の方は年単位で飲むのが良いでしょう。ケロイドの痒みもある程度予防してくれます。

液体窒素による凍結療法は、クライオセラピー(Cryotherapy)と呼ばれ、ケロイドや肥厚性瘢痕に対して有用性が報告されています。-196℃の液体窒素を使用することで、肥厚性瘢痕やケロイド内部の毛細血管の血流を阻害し、組織を壊死させる治療です。小さい瘢痕や初期の瘢痕に効果を発揮すると報告されています。また、ケナコルトの注射と併用すると効果が上がるという報告もあります。ただ、実際にはクライオセラピー単独で改善させるには限界があり、あくまでケナコルト注射の補助的な治療に位置付けられています。

まずは保険治療を

液体窒素の冷気を患部に吹きかけるだけで、クライオセラピーと称しているクリニックがあるようです。冷気を吹きかける装置はクライオスポットと呼ばれるエステ用機器で、医療用機器ですらありません。冷気を吹きかける程度では、ケロイドや肥厚性瘢痕には何の効果もありません。

そうした効果のない治療と、ケナコルトの注射を組み合わせて、100万円といった高額な料金を請求された患者さんがおられます。保険でケナコルト注射をした場合、1回の治療費は数千円です。くれぐれも悪質なクリニックに騙されないように注意してください。

肥厚性瘢痕とケロイドの治療は、当院では行っておりませんので、保険適用のお近くの皮膚科でご相談されることをおすすめします。

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