ニキビ跡治療(盛り上がり)

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ニキビ跡の盛り上がり

ニキビは治っているのに盛り上がりが治らない場合、肥厚性瘢痕やケロイドというニキビ跡が形成されている可能性があります。

肥厚性瘢痕・ケロイド– ひこうせいはんこん・けろいど –

肥厚性瘢痕は、盛り上がった状態でニキビ跡になったものです。赤みや炎症が強く、拡大傾向にあるものをケロイドと呼び区別しますが、両者は連続した病態であることが示唆されています。

好発部位は、顎下(フェイスライン)、胸、肩、下腹部など、皮膚が伸展されやすい部位に多く生じます。

フェイスラインの肥厚性瘢痕
フェイスラインの肥厚性瘢痕
胸のケロイド

肥厚性瘢痕もケロイドも、膠原線維(コラーゲン線維)の蓄積で、ニキビが治る過程の異常や遅延によって、瘢痕組織が過剰に作られて盛り上がります。組織学的に両者を区別することは困難です。

肥厚性瘢痕は自然に軽快するものもありますが、何年も「しこり」として残ってしまう場合が多くあります。ケロイドは、健常部へしみ出すように拡大し、治療に対して抵抗性が強く、再発傾向が強いのが特徴です。肥厚性瘢痕とケロイドが、一つの瘢痕の中に共存することもあります。

肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と料金

症状によっていくつかの方法を組み合わせて行います。治療期間は1~4年程度が目安です。

治療で大切なポイント

肥厚性瘢痕・ケロイドを治すには皮膚にテンション(伸展力)をかけないようにすることが最も重要。
そのため、後に記載する「アトファイン」というシリコンジェルシートで、傷跡を刺激やテンションから守ることが必要です。

1.アトファイン(シリコンジェルシート)
  1. 特徴
    • 皮膚にテンションがかかることを防ぐ要の治療。肥厚性瘢痕やケロイドの増殖を防ぎます。
  2. 使用方法
    • 5~7日に1回、患部より大きめに貼ります。剝がれない限り、貼り続けてください。
  3. 副作用
    • テープかぶれが報告されています。重篤な副作用はありません。
  4. 料金
    • 1箱 1,980円(Lサイズ 6枚 / Sサイズ 12枚 / SSサイズ 24枚)
2.ケナコルト注射(ステロイド注射)
  1. 特徴
    • 強いステロイドの注射。硬いケロイドや肥厚性瘢痕を柔らかくし、盛り上がりを平坦にします。
  2. 治療方法
    • ケナコルトと麻酔薬を混合したものを、1ヶ月間隔で6~12回注射します。
  3. 治療を受けられない方
    • 麻酔アレルギー、消化性潰瘍、精神疾患、結核、単純疱疹性角膜炎、白内障、緑内障、高血圧、糖尿病、血栓症の既往、肝機能障害、肝炎、腎機能障害、直近での大きな手術、骨粗鬆症、甲状腺機能低下症、強皮症
  4. 副作用
    • 最初は強い痛みを伴いますが、回数を重ねると痛みは少なくなってきます。複数回の注射で、病変部が凹み過ぎるリスクがあります。生理不順、ニキビ、毛包炎、発疹、皮膚萎縮、血管拡張、酒さ様皮膚炎、多毛、白斑、皮膚感染症などが生じることがあります。重大な副作用として、感染症、副腎機能不全、糖尿病、消化性潰瘍、膵炎、精神変調、うつ、痙攣、骨粗鬆症、骨頭無菌性壊死、ミオパシー、白内障、緑内障、血栓症、アナフィラキシーショック、喘息発作、視力障碍、腱断裂が報告されています。
      当院では総注入量を最大5mgとしており、通常1箇所1mg以下の注入量ですので、重篤な副作用が起こることは非常に稀です。
  5. 料金
    • 1~2箇所 3,190円 / 以後1箇所毎に880円
3.ボツリヌストキシン注射(コアトックス)
  1. 特徴
    • ボツリヌス毒素の注射。周囲の筋緊張と皮膚の張力を和らげることで、患部の炎症の悪化を抑えます。
    • 効果はケナコルト注射と同等で、注射の回数は半分で済み、副作用も少ないという特徴があります。
    • ケナコルト注射とボツリヌストキシン注射を1ヶ月間隔で交互に打つことでより効果が高まります。
  2. 治療方法
    • 2ヶ月毎に3~6回注射します。1cmあたり4単位が目安です。
  3. 治療を受けられない方
    • 全身性の神経筋接合部の障害や重篤な筋力低下がある方、妊娠中・授乳中・妊活中の方、ボツリヌス毒素療法やポリソルベート(添加物)にアレルギーの既往がある方
  4. 副作用
    • 注射部位の腫れ、痛み、熱感、内出血、頭痛。顔の場合、注射部位の表情筋が動かなくなる等の副作用がありますが1~2ヶ月で元に戻ります。重篤なアレルギー(アナフィラキシーショック)も報告されていますが、非常に稀です。
    • 女性は、注射後、2回の月経が来るまでは避妊してください。男性は、注射後、3ヶ月間は避妊してください。
  5. 料金
    • 4単位 4,400円 / 以後4単位毎に4,400円 ※1センチあたり4単位を目安に注射
4.ケロイドレーザー
  1. 特徴
    • 赤みを伴った肥厚性瘢痕・ケロイドに対し、レーザーで微小な血管を破壊・縮小し、色味を改善します。
  2. 治療方法
    • 1ヶ月間隔で、1~2年を目安に複数回照射を行います。
  3. 治療を受けられない方
    • 照射部位に日焼けをする方、光過敏症・日光アレルギーの方、妊娠中の方、てんかん発作のある方、照射部位に金の糸を入れている方、照射部位に入れ墨・アートメイク・落ちないファンデーション(BB Glow、CC Glow等)をご使用の方、光の感受性を高める薬剤を使用中の方
  4. 副作用
    • 照射後の赤み、膨疹、炎症後色素沈着、照射部位の脱毛、肝斑、火傷、白斑(色素脱出)。
  5. 料金
    • 2㎠以内 5,500円 / 2~5㎠ 9,900円 / 5~10㎠ 19,800円
5.エクラープラスター(ステロイドテープ)
  1. 特徴
    • 肥厚性瘢痕やケロイドの盛り上がりを徐々に平坦にします。
  2. 使用方法
    • 病変部に合わせて適当な大きさに切り、なるべく健常な部分に付かないようにして、1日1回24時間貼り続けます。傷跡よりも少しだけ小さめに切るのがコツです。24時間貼るのが難しい場合は、12時間程度貼ってください。アトファインと併用する場合、エクラープラスターを小さく貼った後、上からアトファインを大きく貼ります。
    • 頻繁な貼り換えはかぶれの原因となりますので、かぶれやすい方は2日間以上貼り続けても構いません。
  3. 副作用
    • 皮膚炎、かぶれ、発疹、皮膚萎縮、ニキビ、毛包炎、血管拡張、酒さ様皮膚炎、多毛、白斑、皮膚感染症などが生じることがあります。目の周囲への長期使用で、緑内障や白内障が報告されています。
  4. 料金
    • 1枚 220円
6.トラニラスト(リザベン)
  1. 特徴
    • 線維芽細胞の働きの抑制と抗アレルギー作用で、盛り上がりとかゆみを防ぎます。
  2. 服用方法
    • 1日3回、毎食後に1錠ずつ飲みます。
  3. 副作用
    • 発疹、かゆみなどが起こることがあります。腹痛、吐き気、嘔吐などの消化器症状、頭痛、めまい、不眠、倦怠感などの精神系症状の他、生理不順、動悸、浮腫、発熱、口内炎、貧血、脱毛、肝機能障害、腎機能障害、頻尿や排尿時痛などの膀胱炎様症状、血球成分の減少なども報告されています。重篤な副作用は非常に稀です。
  4. 料金
    • 1錠 22円 / 1ヶ月分 90錠 1,980円 ※保険皮膚科のほうが安価です。
7.その他の治療
  • 当院では行っておりませんが、その他に、液体窒素による凍結療法(クライオセラピー)、放射線治療(電子線照射)、手術(Z形成術)などの治療があります。
  1. アトファインを除き、妊娠中・授乳中・妊活中は治療をうけることができません。
  2. 日本では自費と保険の混合診療が認められていませんので、当院の治療は全て自費診療となります。保険診療をご希望の方はお近くの皮膚科でご相談ください。
  3. 診察料が別途かかります。同じレーザーや注射を2回目以降受けられる方で、診察を希望されない場合は再診料はかかりません。
  4. 外用剤を2回目以降購入希望の方で、診察を希望されない場合は再診料はかかりません。
参考文献・サイト一覧
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