ジュベルック・レニスナとは
ジュベルックとレニスナは、どちらもポリ乳酸(PDLLA)が主成分の注射剤です。
ポリ乳酸とは、デンプンを発酵させて得られた乳酸から作られ、人体内で徐々に吸収、分解する過程で線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンやエラスチンの生成を促します。
種類 | ジュベルック | レニスナ |
---|---|---|
成分 | ポリ乳酸+非架橋ヒアルロン酸 | ポリ乳酸+非架橋ヒアルロン酸 |
ポリ乳酸 | 低濃度、粒子が小さい | 高濃度、粒子が大きい |
注入深さ | 真皮~皮下浅層 | 皮下浅層 |
適応 | 肌のハリ・質感 小ジワ 目のクマ ニキビ跡 | 顔の痩せ 手の痩せや血管浮き 深いシワ 肌全体の脂肪減少 ニキビ跡 |
保険適用外の治療であり、未承認医薬品のため、「医薬品副作用被害救済制度」の対象外です。
ポリ乳酸とは
ポリ乳酸は、トウモロコシやジャガイモ、サトウキビなどから抽出したデンプンを発酵させて作られます。肌質やハリ、シワ、ニキビ跡の改善に用いられるほか、手術用の縫合糸やスレッドリフトの糸などにも用いられています。
注入後1~2年程度で水と二酸化炭素に分解されます。生体適合性に優れており、ポリ乳酸の人体への使用を米国FDA(米国食品医薬品局)が承認しています。
ポリ乳酸はPLLAやPDLLAなど複数のタイプがあり、ジュベルックやレニスナはPDLLAと呼ばれるタイプで、粒子が丸く柔らかいため、しこりなどの副作用が非常に少ないのが特徴です。一方、スカルプトラ(ニューフィル)等のPLLAと呼ばれるタイプは、鋭くぎっしり詰まった構造で、長く持続効果が得られるものの、分解されるまでに時間を要するため、しこりなどの副作用が生じるリスクがあります。
ジュベルック・レニスナの効果
浅い層にはジュベルック
ジュベルックは、レニスナと比べてポリ乳酸が低濃度で粒子が小さいため、浅い層(真皮~皮下浅層)の注入に適しています。
注入後、コラーゲンとエラスチンの増生が促されます。2週間後から効果が現れ、12~16ヶ月ほど効果が持続します。お肌のハリ、質感改善、小じわ(額、目の下、首、口周りなど)、ニキビ跡などの改善に効果が期待できます。
深い層にはレニスナ
レニスナ(ジュベルックボリューム)は、ジュベルックと比べてポリ乳酸が高濃度で粒子が大きいため、深い層(皮下浅層)の注入に適しています。
ジュベルックと同様に、注入して2週間後から効果が現れます。レニスナの方が効果が長く、1年半~2年ほど効果が持続します。顔の痩せ(こめかみ、耳の前、頬など)、手の痩せや血管浮き、深いシワ(額、ほうれい線、ゴルゴライン、マリオネットライン、顎)、肌全体の脂肪減少、ニキビ跡の改善などに効果が期待できます。
中等度以上の深いシワを持ち上げる効果は、「ヒアルロン酸注射(ベロテロ)」には劣りますが、ナチュラルに改善させたい方へおすすめです。
ニキビ跡
ニキビ跡の凹みは、真皮組織の減少(ハリの喪失)でより目立つようになります。ジュベルック・レニスナを炭酸ガスレーザーやダーマペンと併用することで、コラーゲンとエラスチンの増生が促され、真皮のハリが増すことで、ニキビ跡の凹みを目立たなくさせる効果が期待できます。
治療回数と用量
- 回数
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ジュベルック、レニスナとも1セット(1ヶ月毎の注射を3回)行います。
その後は症状に合わせて、ジュベルックは6ヶ月~1年に1セット、レニスナは1年に1セットの注射をおすすめします。
- 用量
-
ジュベルック
レニスナ
ジュベルックとレニスナの注入量は、骨格や皮膚の状態を診察で見て判断します。ご希望の部位や注入量は医師とご相談ください。
必要に応じて、浅い層と深い層にジュベルックとレニスナを同日に施術することを推奨しています。
- 他の治療との併用
-
CO2レーザーやダーマペンと併用する場合は前後2週間空けます。治療スケジュールは医師にご相談ください。
例)エコツー→ジェベルック・レニスナ(各1ヶ月間隔)
ジュベルック・レニスナのメリット・デメリット
ジュベルックやレニスナは、生体内で分解されるポリ乳酸が主成分のため、メリットとして、その安全性とナチュラルな仕上がりが特徴です。浅い層のジュベルックと深い層のレニスナを組み合わせることで、目の下などの表層ジワから、ほうれい線などの深いシワまで改善できます。また、目の下に注入してもチンダル現象※が起こることもありません。
逆にデメリットとして、自己のコラーゲンとエラスチンの産生を促す治療であり、複数回治療が必要なことと、緩徐な効果で即効性が少ないことです。
チンダル現象
ヒアルロン酸を目の下等の浅い皮膚に入れると、青く透けて見え、クマが目立つようになる現象です。浅層のヒアルロン酸は吸収されずに一部残ってしまうことがあり、水分を溜め込むと、チンダル現象やむくみの原因となります。
治療を受けることができない方
- 妊娠中、授乳中の方
- ケロイド体質の方
- 注射部位の皮膚に異常がある方
- 麻酔薬(リドカイン)、ポリ乳酸、非架橋ヒアルロン酸にアレルギーがある方
- 心臓伝導障害、不整脈のある方(麻酔薬による悪化のリスク)
ジュベルック・レニスナの副作用
一般的な副作用
- 1. 針跡・赤み・内出血
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通常、針跡は1~3日、赤みは1日~2週間、内出血は2~3週間程度で改善します。
- 2. 痛み・痒み
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術後数日は、注射部位に痛みやかゆみを感じることがあります。
- 3. しびれや違和感
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含まれている麻酔によりしびれや違和感を感じることがありますが、すぐに改善します。
- 4. 腫れと凹凸
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注入後に腫れや凸凹が生じます。通常、2週間程度で徐々になじみますが、翌日以降に、盛り上がっている部分を指圧すると早くなじみます。3週間以上経過しても改善がない場合には、医師にご相談ください。
非常に稀だが重篤な副作用
- 1. アレルギー・アナフィラキシーショック
-
配合されている麻酔成分、術前に塗布するクリーム麻酔やテープ麻酔の成分、ポリ乳酸、非架橋ヒアルロン酸などに対し、アレルギーを起こす方がいます。帰宅後に重度のアレルギー症状(全身の発疹、皮膚・唇・舌の腫れ、呼吸困難、動悸、血圧低下、意識障害、痙攣)が起こった場合、すぐに救急車を呼んでください。
- 2. 異物性肉芽腫・硬結・結節
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過剰な線維芽細胞の反応、免疫反応、アレルギーにより注入部位に硬結や結節が生じることがあります。非常に稀に「異物性肉芽腫」というしこりが出現し、瘢痕(傷跡)として残ってしまう可能性が報告されています。
- 3. 感染
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免疫が弱い方、免疫不全の方は、刺入部から感染を起こす可能性があります。
- 4. 血管閉塞
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血管内への誤注入で、動脈塞栓、皮膚壊死、皮膚変色、失明、視力障害、脳梗塞等の重大な合併症が起こり得る可能性があります。
- 5. 神経障害
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知覚・運動神経障害が起こることがあります。通常3ヶ月程で改善しますが、極稀に残存する可能性があります。
注射後の注意点
- 当日のメイク、入浴、サウナ、飲酒、運動はお控えください。軽い洗顔やシャワーは当日から可能です。
- ジュベルック・レニスナからハイフやRF(サーマジェン等)を行う場合、1ヶ月以上空けてください。
ジュベルック・レニスナの料金– Treatment Costs –
ジュベルックやレニスナは、バイアルと呼ばれる瓶に製剤が入っています。作成濃度は各医療機関で異なるため、当院ではプロトコールに準じた標準濃度で作成し、バイアル量を併記しています。
項目 | 料金(税込) |
---|---|
診察料 | 初診料 3,850円 再診料 1,650円 |
ジュベルック (医師手打ち) | 3ml(1/4バイアル)44,000円 6ml(1/2バイアル)79,200円 9ml(3/4バイアル)112,200円 12ml(1バイアル) 140,800円 以降3mlあたり 35,200円 |
レニスナ (医師手打ち) | 2.5ml(1/5バイアル)44,000円 5ml(2/5バイアル)79,200円 7.5ml(3/5バイアル)99,000円 10ml(4/5バイアル)132,000円 12.5ml (1バイアル) 165,000円 以降2.5mlあたり 33,000円 |
麻酔料 | テープ麻酔 1枚 330円 クリーム麻酔顔 3,300円 クリーム麻酔一部 1,650円 |
- 注射には毎回診察が必要です。
- マイクロ針やカニュラ代は金額に含まれております。
- ジュベルックとレニスナを同日に施術することも可能です。
ジュベルック・レニスナのよくある質問
- ジュベルックとレニスナは目の下に打てますか?
-
基本的には、ジュベルックは目の下も適応で、レニスナは目の下には打てません。また、ジュベルックを目の下に打つ場合でも、鋭針を使用するとボコボコやしこりが目立つ原因となるため、原則はカニュラを使用してボコボコを抑えて治療を行います。
- 痛みはどれくらいですか?麻酔は必要ですか?
-
ジュベルックは、表層に細かく注射するため痛みが強く、通常クリーム麻酔を推奨しています。レニスナは、カニュラで注入するため、カニュラの穴を開ける際に複数回チクッとした痛みがありますが、通常麻酔は必要ありません。
- ほうれい線を消すことはできますか?
-
ほうれい線の深いシワには、ジュベルックは効果がないため、レニスナがおすすめです。ただし、1ヶ月毎に3回ほど注入が必要であり、ヒアルロン酸注射ほどの効果は出ない可能性もあります。ナチュラルに改善させたい方におすすめです。
深いシワと浅いシワが組み合わさっている場合には、ジュベルックとレニスナの併用がおすすめです。
- ジュベルックとレニスナの施術を同日に受けられますか?
-
同日に施術可能です。深いシワと浅いシワ、深いニキビ跡と浅いニキビ跡が組み合わさっている場合などは、ジュベルックとレニスナの併用を推奨しています。ニキビ跡の場合には、剥離処置(サブシジョン)が別に必要になる場合がございます。
- サブシジョンと併用できますか?
-
ヒアルロン酸ではなくジュベルックやレニスナと組み合わせて行うこともあります。適応箇所については、診察が必要ですので、医師にご相談ください。
- ヒアルロン酸注入やボトックス注射と併用できますか?
-
部位が異なる場合には、同日に施術可能です。
- フラクショナル炭酸ガスレーザーやダーマペンと併用できますか?
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同日部位の場合には、同日に施術はできませんが、それぞれ2週間間隔を空ければ可能です。
ジュベルック・レニスナの注射後についての質問
- ダウンタイムはありますか?
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ジュベルックは、皮膚の多数の場所に注射を行うため、針跡が数日目立ちます。また、内出血した部位は2週間ほど目立つことがございます。
レニスナは、カニュラの刺入点に内出血が起こった場合には、消えるまで1~2週間かかります。
- メイクはすぐにできますか?
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当日のメイクは避けてください。翌日からは、お化粧をしても問題ありません。
- 注射後にお酒は飲めますか?
-
当日の飲酒は控えてください。翌日からは問題ありません。
- 注射後に運動しても良いですか?
-
当日の運動をお控えください。翌日からは問題ありません。
参考文献・サイト一覧
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