ヒアルロン酸注射は、架橋されたヒアルロン酸を皮膚内に注入することで、シワやたるみを改善させる美容治療法です。
ヒアルロン酸によるシワ治療– Hyaluronic Acid Fillers for Wrinkles –
ヒアルロン酸を皮膚内に注入することで、肌の内部からシワを持ち上げ、その改善を図ります。既に形成されたシワを薄く目立たなくし、同時に将来のシワの予防にも寄与します。
当院では、以下のようなシワにヒアルロン酸注射を行っています。
- 鼻唇溝(ほうれい線)のシワ
- 額のシワ
- 眉間のシワ
- 目の周囲のシワ
- こめかみの凹みや痩せ
- ゴルゴライン(目の下~ほほの溝)
- 唇のシワ
- 口角のシワ(マリオネットライン)
- あごのシワ
- 隆鼻(鼻への注入)や涙袋の形成は、当院では実施しておりません。
- シワの部位や深さによってボツリヌストキシン注射とヒアルロン酸注射の併用をお勧めすることがあります。
ヒアルロン酸製剤と効果の持続について
当院で使用している架橋型ヒアルロン酸製剤は、以下の通りです。なお、美容治療に使用されるため国内では未承認医薬品であり、「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となります。
BELOTERO®(ベロテロ)
製造元:ドイツMerz社
BELOTERO®(ベロテロ)は、架橋特許技術により「多重高密度マトリクス」構造を持ち、なめらかで美しい仕上がりが可能な製剤です。
第四世代のヒアルロン酸で、2015年から世界各国での使用実績があり、高い安全性を誇ります。
BELOTERO®は、ヒアルロン酸濃度に応じて5つの異なる製品があり、当院ではベロテロソフト、ベロテロバランス、ベロテロボリュームの3種類を取り扱っています。治療においては、シワの性状や部位に合わせてこれらを組み合わせて使用します。
種類 | 濃度 | 特徴 | 効果の持続 |
---|---|---|---|
ソフト | 20mg/mL | 最も柔らかく滑らかで、細かい表層の小じわに優れた効果を発揮。チンダル現象を起こしにくいため、目元のシワにも使用できる。 | 3~6ヶ月 |
バランス | 22.5mg/mL | 中間的な柔らかさで、小じわから中程度の深さのシワに適している。 | 6~12ヶ月 |
ボリューム | 26mg/mL | 密度が高く硬いため、深いシワやこめかみ、頬、顎のボリュームアップ、靭帯のリフトアップに効果的。 | 12~18ヶ月 |
ボライト®XC
製造元:アッヴィ社(アラガンジャパン社)
ボライトXCは、小じわや肌のハリの改善を目的とする架橋型ヒアルロン酸です。ナチュラルな仕上がりが特徴なだけでなく、肌への保水効果を長期間にわたって付与し、それにより肌質の向上が期待できます。
効果の持続は、小じわの改善の場合3~4ヵ月、保水効果の場合6~9ヶ月程度が目安となります。
種類 | 濃度 | 効果の持続 |
---|---|---|
ボライトXC | 12mg/mL | 3~9ヶ月 |
ヒアルロン酸によるシワ治療の症例
頬を中心に顔全体のバランス調整 30代女性
ヒアルロン酸注射によって、側頬部(頬の横)の痩せの改善と、顔全体のバランスを整えた症例です。正面の写真からは変化が少しわかりにくいかもしれません。
加齢によって頬骨が萎縮すると、側頬部に痩せが目立ってきます。側頬部のボリュームが無くなると、皮膚全体が下に垂れ下がり、ほうれい線や顎ラインのたるみにつながります。
側頬部にヒアルロン酸を注入することで、痩せを改善させ、きれいな逆卵型のフェイスラインを作ることができます。
※治療後の写真では、刺入部にハイドロコロイドパッチが貼られています。
ヒアルロン酸の注射部位は以下の通りです。
- 側頬部・・・頬の横にボリュームを付加することで、痩せが改善し、ハリのある顔貌になります。フェイスラインのたるみをマイルドに改善させます。
- 頬骨や鼻横の靭帯下・・・マイルドなリフトアップとたるみ予防を目的に、zygomatic ligamentや鼻翼部の靭帯下にヒアルロン酸を注入して支持します(写真青丸部位)。
- 目の下・・・目の下の溝(tear trough)へヒアルロン酸を少量注入することで、クマを目立たなくさせ、やわらかい印象が得られます。
- 顎・・・顎を少し前に出すことで、フェイスラインをシャープにするとともに、Eラインを整えます。顎の細かいちりめんジワ(梅干しジワ)にも有効です。
治療前後の写真を比較すると、側頬部や前頬部(目の下)のボリュームが改善し、顎が少し前に出ることで、フェイスラインもシャープになっています。ヒアルロン酸の使用本数は4本(4mL)です。ナチュラルな変化を望まれていたため、ご本人は大変満足されていました。
繰り返しヒアルロン酸の注入を行うことで、自己のコラーゲン産生が刺激されることや、ヒアルロン酸が被膜で覆われて吸収されにくくなるため、長期的な効果が期待できます。
お顔全体のボリュームロスが大きい方は、4~12本(4~12mL)使用してしっかりとシワを持ち上げて土台を作っておくと、その後は少ない本数でメンテナンスが可能です。
ほうれい線とマリオネットライン 50代女性
ほうれい線と口角のシワ(マリオネットライン)の治療を希望された患者さんです。
気にされていた部位はほうれい線とマリオネットラインですが、シワだけに注入すると不自然になるため、お顔全体のバランスを見て注入部位を決めていきます。
こちら患者さんでは頬の脂肪の減少が見られ、頬の上部と頬骨靭帯の下へヒアルロン酸を注入して、全体的にリフトアップをしています。また、顎の左右のラインへヒアルロン酸を注入することで、顎がシャープになり、口角のシワも目立たなくなりました。
右口角はニキビ跡とシワが重なっており、カニューレで癒着を剥離してから注入を行いました。ニキビ跡がある皮膚は硬くなっており、健常な皮膚よりも改善が乏しくなります。
ヒアルロン酸は、合計4本(4mL)注入しています。
ほうれい線 30代男性
深く刻まれたほうれい線を「少しだけ」浅くしたいというご希望のため、ヒアルロン酸を1本(1mL)だけ使って治療しました。
ほうれい線と頬骨靭帯の下にヒアルロン酸を注入し、全体的に頬をリフトアップしてナチュラルに改善させています。
ヒアルロン酸リフト– Face Lifting with Hyaluronic Acid –
年齢を重ねるごとに、皮膚を支える靭帯が伸びて垂れ下がっていきます。ヒアルロン酸リフトは、靭帯の下にヒアルロン酸を注入し、靭帯を支えることでお顔をリフトアップする治療です。マイルドに頬の位置が上がり、顔全体に自然なリフティング効果が得られます。
ヒアルロン酸リフトは、若い方に特におすすめです。靭帯が伸びてゆるんでしまう前にヒアルロン酸リフトを行うことで、老化による靭帯の伸びを抑え、若々しい外観を維持できます。
逆に、すでに靭帯が大きく緩んでしまっている場合、ヒアルロン酸リフトは目に見えた効果を発揮しません。しかし、今後の靭帯の下垂を防ぐため、ある程度のたるみを予防できます。
効果の持続と注入量
- 効果の持続
-
ヒアルロン酸リフトでは、硬く吸収されにくい「ベロテロボリューム」を使用します。効果の持続は12~18ヶ月です。
- 治療間隔
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20代の方は1~2年毎、30代以降の方は1年毎の治療がおすすめです。
- 注入量
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ヒアルロン酸リフトでは、通常2本(2mL)のヒアルロン酸を使用します。
ヒアルロン酸リフトの症例
30代男性
当院で勤務する林医師の写真です。
1枚目は、顔の左側だけヒアルロン酸リフトをした直後の写真です。眉の上やこめかみ、ほうれい線、あごの支持靭帯にポイントで注入しています。
2枚目は、両側のヒアルロン酸リフト注射した直後の写真です。左右とも全体的に頬の位置が上がっています。皮膚表面のヒアルロン酸が少し目立ちますが、2週間以内に徐々になじんできます。
治療を受けることができない方
- 過去にヒアルロン酸注入でアレルギーを起こしたことがある方
- 麻酔(リドカイン・キシロカイン)にアレルギーのある方(※)
- 過去にヒアルロン酸以外の注入剤を充填している方(異物性肉芽腫を生じるリスクがあります)
- 妊娠中・授乳中の方
- 注入部位の皮膚に異常がある方
- ケロイド体質の方
※ヒアルロン酸のベロテロとボライトXCには、少量の麻酔が配合されています。
ヒアルロン酸注射の副作用
一般的な副作用
- 針跡と内出血…通常、針跡は2~3日、内出血は2~3週間程度で改善します。
- 痛み…注射部位に鈍痛や、触ると痛みを感じます。通常、2~3日で改善します。
- 腫れ…腫れや熱感がある場合、保冷剤をハンカチなどで包み患部を冷やしてください。凍傷予防のため、同じ部位を連続で5分以上冷やさないように注意してください。額や目の周囲の施術で、ヒアルロン酸が下がってきて目が腫れぼったくなることがありますが、徐々に改善します。
- チンダル現象…目の下にヒアルロン酸を入れた場合、青く透けてクマのように見えることがあります。当院では目の下にはチンダル現象が起こりにくいベロテロソフトを用いています。
- 時々腫れる…ヒアルロン酸の保水能力のため、寝起き(朝)や体調不良時に一時的に顔がむくみやすくなることがあります。徐々に改善していきますが、気になる場合にはヒアルロン酸分解酵素で溶解します。
- 凸凹…凹凸にならないよう、深さや量を調整して注入します。額、目の周囲、浅い小皺の治療では、注入後に凹凸が目立ちます。注射翌日からマッサージしていただくことで、1~2週間程度でなじんで改善します。長期に渡って気になる場合にはヒアルロン酸分解酵素で溶解します。
- しこりが触れる…皮下にヒアルロン酸の塊がしこりとして触れます。シワを持ち上げているため、盛り上がりがなければそのままにしておいてください。表面に盛り上がりがある場合、マッサージで徐々になじみます。
非常に稀だが重篤な副作用
- アレルギー・アナフィラキシーショック…製剤に含まれる架橋剤、添加物、麻酔成分にアレルギーを起こす方がいます。重度のアレルギー(全身の発疹、皮膚・唇・舌の腫れ、呼吸困難、動悸、血圧低下、意識障害、痙攣)も報告されています。帰宅後に上記の症状が起こった場合、すぐに救急車を呼んでください。
- 異物性肉芽腫…過剰な免疫反応・アレルギーにより注入部位の硬結や結節、非常に稀に「異物性肉芽腫」というしこりが出現し、瘢痕(傷跡)として残ってしまうことが報告されています。過去に非吸収性のフィラー剤を注入している場合に起こることもありますが、それはヒアルロン酸が原因ではありません。
- 感染…非常に稀ですが、免疫が弱い方、免疫不全の方は、刺入部から感染を起こす可能性があります。
- 塞栓…血管内への誤注入で、動脈塞栓、皮膚壊死、皮膚の変色、失明、脳梗塞等の重大な合併症が報告されています。
- 神経障害…針によって知覚神経や運動神経障害が稀に起こることがあります。通常は3ヶ月程度で改善しますが、極稀に残存してしまう可能性があります。
ヒアルロン酸分解酵素の緊急使用と修正
- ヒアルロン酸分解酵素はアレルギーのリスクが高いため、当院ではアレルギー性が最も少ない「ヒレネックス」という人由来の製剤を使用しています。
- 動脈閉塞・皮膚壊死等により、緊急でヒアルロン酸を溶かす必要性があると医師が判断した場合には、ヒアルロン酸分解酵素の注入を行います。
- 膨らみすぎや凹凸が目立つ場合などの修正が必要な場合にもヒアルロン酸分解酵素を注入します。
- 注入周囲のヒアルロン酸が溶けるため細かい修正はできません。複数回の注入が必要になる場合や、被膜化・繊維化していると溶けにくい場合もあります。
- 過去のヒアルロン酸を溶かして、再度ヒアルロン酸の注入が必要な場合、溶解後2週間以上経過した後にヒアルロン酸の注入を行います。
- 副作用として、発疹、発赤、かゆみ、腫脹などの他、極稀にアナフィラキシー(全身性の発疹、皮膚・唇・舌の腫れ、呼吸困難、動悸、血圧低下、意識障害、痙攣など)が起こる可能性があります。
治療後の注意点
- 注射後当日は、注射部位を擦ったり、揉んだり、押したりしないようにしてください。翌日から、医師の指示があった場合のみマッサージを行ってください。
- 当日のメイク、入浴、サウナ、飲酒、運動はお控えください。軽い洗顔やシャワーは当日から可能です。
- 痛みが強く残っている場合、皮膚の色味がおかしい場合、冷やした際に痛みが強くなる場合など、何か異常を感じた場合には早急にご連絡ください。
- 治療後2週間~1ヶ月以内に肌の状態を診察しますので、ご予約をお取りください。
ヒアルロン酸注射の料金
項目 | 料金(税込) |
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診察料 | 初診料 3,850円 再診料 1,650円 |
ベロテロ(1ml) | 1本 79,200円 2本目以降 69,300円 |
ボライトXC(1ml) | 1本 68,200円 2本目以降 59,400円 |
ヒレネックス1本(150単位) (ヒアルロン酸分解注射) | 54,780円 |
麻酔 | テープ麻酔 1枚 330円 クリーム麻酔顔 3,300円 クリーム麻酔一部 1,650円 |
- 施術前には毎回診察が必要です。
- シワの深さと治療部位によって、複数のヒアルロン酸の種類と本数が必要になります。
- 治療部位によってカニューレ(先が丸くなった針)を使用する場合があります。別途料金はかかりません。
- ヒアルロン酸は感染予防のため1本使い切りです。余ったものは廃棄いたします。
- 2本目以降の料金は、同一種類のヒアルロン酸を同日に施術した場合の割引価格です。
- ヒアルロン酸分解注射は、緊急時や当院施術後1ヶ月以内の修正は無料、それ以降の修正は有料となります。