こんにちは。肌のクリニック医師の山﨑です。
「ヒアルロン酸注入って、不自然になりそうで怖い…」
「パンパンに膨れた顔になったらどうしよう」
診察でこんな不安をよく伺います。実は私も美容医療に携わる前は同じように思っていました。でも、正しい知識と適切な施術で、ヒアルロン酸注入は本当に自然な若返りが叶うんです。
今回は実際の症例写真を使って、ヒアルロン酸注入でお顔がどう変わるのか、パーツごとに詳しく解説していきますね。
なぜ顔は老けて見えるの?「ピーナッツ型」輪郭の正体

加齢で起こる顔の変化
まず知っておいていただきたいのが、顔が老けて見える最大の原因は「シワ」ではなく「ボリュームロス」だということ。
早い方だと30代頃から、こんな変化が始まります:
- こめかみや頬の骨が徐々に萎縮
- 脂肪が減少して凹みが目立つ
- 失われたボリュームの分、皮膚がたるむ
その結果、顔全体が「ピーナッツ型(ひょうたん型)」のような輪郭になってしまうんです。こめかみと頬の上部が凹んで、下半分が下がってくる…絵を載せてみましたが、想像できますか?
ヒアルロン酸が効果的な理由
ここで活躍するのがヒアルロン酸注入です。凹んだ部分にボリュームを戻すことで、
- 顔全体が自然にリフトアップ
- 輪郭が卵型に整う
- 実は小顔効果も!
「ボリュームを足すと顔が大きくなりそう」と心配される方が多いのですが、むしろ逆なんです。ピーナッツ型からバランスの良い逆卵型になることで、フェイスラインが引き締まって見えるんです。
【症例紹介】60代女性の劇的ビフォーアフター
それでは、実際の症例を見ていきましょう。今回ご紹介するのは、実は私の母(60代)への施術例です。
娘としても医師としても、いつも以上に慎重に施術させていただきました。身内だからこそ、「絶対に不自然にしたくない」「5年前の母に会いたい」という想いで臨んだ治療です。
治療前の状態



母の悩み:
- シワが増えてきた
- 頬がこけて、まぶたが痩せて落ち込んできた
治療前の評価
詳しく分析すると、こんな加齢性の変化が見られました。

正面からの術前評価
- 額 → 細かい横ジワが目立つ
- 眉間 → 縦ジワと横ジワ
- こめかみ → 骨と脂肪の減少で凹み
- 上まぶた → ハリが減って落ち込み
- ゴルゴライン → ボリュームロスによる凹み
- 頬(耳の前) → 骨と脂肪の減少で凹み
- ほうれい線 → たるみによる深い溝
- マリオネットライン → 口角から顎への深い溝
- 顎 → 梅干しジワ
- フェイスライン → たるみによる輪郭の乱れ

左斜位からの術前評価
斜めから見ると、こめかみと頬のボリュームロスがより明確です。これらは骨・脂肪・靱帯の加齢変化によって生じる、ごく自然な老化現象なんです。
その結果、頬のたるみでフェイスラインが下方に崩れ、輪郭が緩みます。
更にコケが進むと、「ピーナッツ型」輪郭に近くなっていきます。
治療プラン|顔全体のバランスが大切
治療のポイント
ヒアルロン酸注入で最も大切なのは、「気になる部分だけ」ではなく「顔全体のバランス」を見ることです。例えば、ほうれい線だけに注入しても効果は限定的。むしろ不自然になってしまうことも。母には、こんな治療プランを立てました:

【上顔面】額・眉間・目まわり
- 使用製剤:ベロテロソフト / ベロテロバランス
- 併用製剤:コアトックス / スネコス / ジュベルック
- ポイント:細かいシワを滑らかに、落ち込んだ部分にふっくらとハリを。
【ボリュームロス】ゴルゴライン・こめかみ・側頬部
- 使用製剤:ベロテロバランス / ベロテロボリューム
- ポイント:ボリュームを回復することで、顔全体をリフトアップ。中顔面を持ち上げることで、ほうれい線も改善。
【下顔面】ほうれい線・マリオネットライン・顎・フェイスライン
- 使用製剤:ベロテロボリューム
- ポイント:深いシワを浅く、下顎の輪郭を整え、顎を少し前に出して梅干しジワを解消。
パーツ別|ヒアルロン酸注入の効果を徹底解説




- ① こめかみ・頬のボリューム回復
-
「顔が大きく見えたりしませんか?」
これ、本当によく聞かれる質問です!でも安心してください。
こめかみと頬(耳の前)のボリュームロスに対してヒアルロン酸注入を行うと、ピーナッツ型の輪郭から逆卵型の輪郭に綺麗に整います。
輪郭による見え方の違い(左:注射前 右:注射後) 正面写真でもわかるように、こめかみや頬のボリュームロスが回復し、少し輪郭が整うだけでも、実際には輪郭が引き締まってシャープに見え、小顔効果が得られるんです。
- ② 上まぶた・目まわりの若返り|複合治療がポイント
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上まぶたの凹みにボリュームを足すと、目元がぱっと明るい印象に。疲れた印象が解消されて、若々しい目元が戻ってきます。
スネコスを目周りに注射した直後 ただし、目元は皮膚が薄くデリケートな部位。今回は通常のヒアルロン酸に加えて、「スネコスパフォルマ」という特殊な製剤を併用しました。
スネコスの特徴:
- 上まぶたに安全に使用できる数少ない製剤
- 真皮のコラーゲン・エラスチンを増生
- まぶたのハリ回復とちりめんジワに効果的
- 1〜2週間ごとに4〜8回の施術
施術直後は写真のようにかなり腫れますが、1〜2日で気にならなくなります。
さらに、目の下・目尻には「ジュベルック(ポリ乳酸)」をカニュラで注入。チンダル現象が起こらず、コラーゲン増生効果が高いので、目の下のクマにも効果的です。
※目尻のシワが気になる場合は、ボトックス注射(コアトックス)の併用もおすすめです。今回は使用していませんが、よく行う施術です。
- ③ 眉間のシワ|表情筋へのアプローチが重要
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ビフォー写真の眉間、真ん中に縦に走るシワがわかりますか?実はこのシワ、母が長年気にしていたものなんです。それに加えて、鼻根部(目と目の間)には横ジワもあります。
これは、眉間を寄せる筋肉(皺眉筋)と鼻を上げる筋肉(上唇鼻翼挙筋)による表情ジワが原因です。
まず、「コアトックス(ボツリヌストキシン)」を眉間とバニーラインに注入して、表情筋をリラックスさせてシワが刻まれないようにします。
ここで注意が必要なのが、細いシワを通常のヒアルロン酸で埋めようとすると、眉間全体が盛り上がったり、鼻根部が太くなってアバターのような顔になってしまうこと。
そのため、柔らかいヒアルロン酸(ベロテロソフト)を、ボリュームが出ないように表層にだけ微量注入します。
さらに、スネコスパフォルマとジュベルックも併用して、真皮のコラーゲンとエラスチンの産生を促進。その結果、アフター写真ではシワがほとんど見えなくなりました。
- ④ ゴルゴライン(ミッドチークライン)
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ここがとても重要なポイント!
ゴルゴラインのボリュームを回復させると、ほうれい線に覆いかぶさっていた皮膚が持ち上がります。つまり、ほうれい線に大量にヒアルロン酸を入れなくても改善効果が得られるんです。
- ⑤ ほうれい線
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ほうれい線を気にされてご来院される方も多いのですが、ほうれい線だけにヒアルロン酸を注入すると改善が乏しく、また、不自然になってしまうため、顔全体のバランスを見て、中顔面や靭帯下も合わせて注入を行い、頬全体をリフトアップさせて自然な若返りを実現します。
- ⑥ 下顎部・マリオネットライン
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下顎部の凹みを整え、顎を少し前に出すことで下記の効果が得られます。
- 表情で出る細かいシワ(梅干しジワ)が改善
- マリオネットラインの溝が薄く
- 顎のラインが整ってフェイスラインがシャープに
- ⑦ 額(おでこ)のシワ
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額の横ジワは、表情の癖で刻まれたもの。通常はボトックス(コアトックス)で表情筋を和らげてから、2週間後にヒアルロン酸を骨膜上に均一に注入する方法を行います。
ただし、今回の母のような60代以上の方の場合、注意が必要です。
前頭筋(おでこの筋肉)を緩めすぎると、眉毛が下がってしまい、目が重たく見えてしまうリスクがあるんです。
そのため今回は、ボトックスは使わず、ヒアルロン酸だけで横ジワを自然に改善させました。骨膜上に均一に注入することで、自然にシワを目立たなくすることができます。
年齢や表情筋の状態に応じて、最適な治療法を選ぶことが大切なんですね。
【Before → After】ここまで変わりました!
改めて、治療前と治療後を比較してみます。母も「こんなに変わるなんて」と驚いていました。






正面写真での変化
- ほうれい線やマリオネットラインが自然に浅く
- 額や瞼の印象が明るく
- 中顔面からこめかみ・頬にかけて自然にふっくら
- 顔全体の骨格が整って若々しい印象に
側面写真での変化
- 頬とこめかみのボリュームが自然に回復
- たるみが改善し、引き締まったフェイスラインに
- 顎ラインがシャープになりシワも目立たなくなりました
【おまけ】唇の静脈湖もレーザーで除去

今回はヒアルロン酸の解説がメインですが、実はもうひとつ。
母の下唇にあった青紫色のできもの(静脈湖)も、希望によりレーザーで除去しました。
静脈湖とは?
加齢や紫外線、外傷などで生じる拡張した静脈(血管性病変)です。良性ですが、目立つため美容的に気になる方が多いんです。
血管治療用レーザー(波長1064nm)で選択的に熱凝固し、跡も残らずほぼ完全に消失。唇全体が自然なトーンに整いました。
静脈湖治療について詳しくは「静脈湖(唇のイボ)」をご覧ください。
ヒアルロン酸注入の「真実」|よくある不安を解消
「皮膚が伸びてシワが増える?」「パンパンの顔になりそう」
こんな不安を聞いたことありませんか?
答えはNOです。長年継続されている方は間違いなく若々しく保たれています。
ただし、大切なのは「適量を自然に入れること」。入れすぎると不自然な仕上がりになってしまうのは事実です。
肌のクリニックでは、「5年前の自分に戻る」くらいの自然なレベルを目指し、顔全体のバランスを見ながら丁寧に施術します。
早めのケアで未来のたるみを予防
実は、シワが深くなる前に始めることをおすすめしています。
支持靭帯がゆるむ前から治療を始めることで、将来のたるみを予防でき、10年後も若々しい印象を保てます。大掛かりな治療が必要なくなるメリットも。
「まだ大丈夫」と思っている30代・40代の方こそ、予防美容を始めるベストタイミングです。
母への施術を通じて改めて感じたのは、ヒアルロン酸注入は正しい知識と技術があれば、本当に自然な若返りが叶うということ。
「5年前の自分」に会いたくなったら、ぜひ肌のクリニックにお越しください。女性医師として、みなさまの美しさをサポートできることを楽しみにしています。
ヒアルロン酸注入の詳細は、ヒアルロン酸注射のページをご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
- ヒアルロン酸注入は痛いですか?
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カニューレという長い針を皮下で動かして施術を行うため、最初にチクッとしますが、採血より痛みはありません。通常、麻酔無しで行いますが、多くの方が「思ったより痛くなかった」とおっしゃいます。
- ダウンタイムはどのくらいですか?
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内出血が出る場合は1〜2週間程度。内出血がなければ、1日程度です。翌日の朝は少し腫れますが、翌日からはメイクも可能です。
- 効果はどのくらい持続しますか?
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使用する部位や製剤によりますが、硬い製剤では12〜18ヶ月、中硬度の製剤では6~12ヶ月、柔らかい製剤では3~6ヶ月程度です。
- 何歳から始めるのがいいですか?
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予防美容の観点から、30代からのスタートがおすすめです。シワが深くなる前のケアが最も効果的です。
- 不自然にならないか心配です
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肌のクリニックでは「自然な若返り」を最優先に、医師の診察で患者様のご希望を伺い、顔全体のバランスを見ながら施術しますのでご安心ください。





