シワの種類と治療– Treatments for Wrinkles –
シワは種類によって治療方法が異なります。詳しくは、診察の際に医師にご相談ください。
表情筋によるシワの治療
笑った時の目尻のシワ、眉を上げた時のおでこのシワ、しかめっ面でできる眉間のシワは、表情で毎日何十回も刻まれます。加齢によって真皮の弾力が失われることも重なり、だんだんとシワは深くなって目立ってきます。
そんな表情筋によるシワには「ボツリヌトキシン注射」が効果的です。シワの原因となる筋肉をリラックスさせてシワを改善します。すでに刻まれてしまったシワでも、まだ浅ければボツリヌストキシン注射だけで十分に改善します。
当院では、医師が筋肉の動きとシワのでき方を診察し、適切な部位にボツリヌストキシンを注射して、自然な表情を残すようにしています。注射部位と用量を毎回カルテに記録し、効果が不十分な場合には2週間後に無料で追加注入を行います。
ボツリヌストキシン治療は、シワが深くなる前に予防的に治療するのがおすすめです。
深いシワの治療
ほうれい線、ゴルゴライン、額などの深いシワは、真皮のコラーゲンの喪失に加え、脂肪の減少、骨の萎縮、じん帯のたるみによって引き起こされます。
深くなってしまったシワには「ヒアルロン酸注射」が効果的です。注入したヒアルロン酸が内側からシワを持ち上げてふっくらとさせます。また、美容大国の韓国で大人気の「レニスナ」もオススメです。ポリ乳酸が自己のコラーゲンとエラスチンの産生を促し、より自然な若返りが期待できます。
額に深く刻まれたシワには、「ボツリヌトキシン注射」とヒアルロン酸注射の組み合わせが最も効果的です。
当院では、皮膚だけでなく、関連する支持靭帯、骨萎縮、脂肪組織の減少、たるみに着目し、ヒアルロン酸注入によって顔全体のバランスを整え、自然な若返りを目指します。
細かいシワの治療
細かいシワや肌のハリの減少には、真皮のコラーゲンやエラスチン(細胞外マトリックス)の増加を促す「ジュベルック」や「スネコス」、「ユーレブスプロ32Rx」、「エクソソーム(脂肪幹細胞培養上清液)注射」が良い適応です。
浅いシワにヒアルロン酸を注入すると、不自然に盛り上がったり凸凹になることがありますが、ジュベルックやスネコス、エクソソームは自己のコラーゲン産生を促す製剤で吸収が早いため、不自然になりません。
ユーレブスプロ32Rxは、弱い熱架橋を持つヒアルロン酸で、拡散性が高いため、ポイント注入でお肌のハリを保ちます。
首のシワにおすすめなのは、「ジュベルック・レニスナ」です。深い部分にレニスナが作用し、浅い部分にジュベルックが作用するため、首のハリと小じわの改善が期待できます。
少し深めのシワにはベロテロソフトという柔らかめの「ヒアルロン酸注射」を行います。従来のヒアルロン酸より凹凸が起こりにくいのが特徴です。
表情筋が悪さをしている場合は「ボツリヌトキシン注射」を併用します。また、真皮の再生と若返りを促す「トレチノイン」「レチノール」や「プラセンタ注射」の併用も予防的にお勧めです。
より効果を出すために
ボツリヌストキシン注射とヒアルロン酸注射は同日に可能ですが、理想はボツリヌストキシン注射の2週間後、ヒアルロン酸注射を行うことです。シワの原因筋がゆるんだ状態でヒアルロン酸を打つ方が、よりシワが改善しやすく自然な仕上がりとなります。
顔のたるみ治療– Treatments for Sag –
シワとたるみは表裏一体です。真皮や皮下組織のたるみによってシワが形成されます。
お肌のたるみは複合的な要因で起こり、主に以下の原因があります。
- 顔面骨の萎縮
- 靭帯(じんたい)の下垂
- 筋肉の衰えと筋膜のたるみ
- 皮下組織(脂肪)の減少
- 真皮組織(コラーゲン・エラスチン)の減少
顔面骨の萎縮
顔の骨が縮んでしまう「骨萎縮」は、たるみの大きな原因の一つです。
- 前頭骨・・・おでこの骨が萎縮すると、額の皮膚がたるみ、シワが目立ってきます。その結果、眉が下がり、目が小さくなります。
- 側頭骨・・・こめかみの骨が萎縮すると、こめかみが凹んで顔がコケたように見えます。
- 眼窩・・・目のまわりの骨が萎縮すると、眼窩が大きくなり、上まぶたが凹み、目の下がたるんできます。
- 前頬骨・・・頬の骨が萎縮すると、頬の位置が下がり、顔が平坦になります。頬がたるんでほうれい線やゴルゴラインが深くなります。
- 梨状口(鼻の穴)・・・鼻の骨の萎縮によって、鼻の穴が広がり、鼻が横に開いてきます。
- 上顎骨・下顎骨・・・顎の骨が萎縮すると、口元や顎の皮膚がたるみます。ほうれい線やマリオネットライン、顎の梅干しシワ、唇の上のシワが目立ってきます。
加齢による骨の萎縮で失ったボリュームは、「ヒアルロン酸注射」で補填して治療をします。
お顔全体のバランスを見ながら、自然に若返るように肌全体のボリュームを回復させます。
また、近年、ポリ乳酸製剤である「レニスナ」によるボリュームアップ治療も人気です。1回での即時的効果はヒアルロン酸よりも低いものの、長期にナチュラルなボリュームアップ効果が期待できます。
靭帯の下垂
顔の皮膚は、骨から真皮までを貫く真性靭帯(しんせいじんたい)によって支持されています。靭帯は年齢とともに伸びて垂れ下がっていきます。
老化によって靭帯がゆるくなって下垂すると、顔のたるみが出現します。
靭帯がたるむのを予防する目的で、「ヒアルロン酸リフト」がおすすめです。
靭帯の下に硬いヒアルロン酸を注入し、靭帯を持ち上げて支持します。頬の位置が上がり、顔全体に自然なリフトアップ効果が得られます。
ヒアルロン酸リフトは、20代後半~40代の若い患者さんにおすすめです。靭帯が伸びてたるんでしまう前に、ヒアルロン酸で支持することによって、重力による靭帯の伸びを抑えることができます。
逆に、すでに靭帯が大きく緩んでしまっている場合、靭帯の下にヒアルロン酸を入れても持ち上がらないため、ほとんど効果が得られないケースもあります。
筋肉の衰えと筋膜のたるみ
筋肉が衰えると皮膚がたるみ、逆に筋肉を鍛えると筋肉にハリが出て、その影響で皮膚にもハリが出ることを、経験的にご存じの方も多いかと思います。
顔の筋肉も同様に、衰えて筋肉のボリュームが減少すると、筋膜や皮下組織、皮膚全体がたるんでしまいます。
日常的な全身運動や表情筋トレーニングは、たるみ予防として非常に効果的です。スポーツなどで顔の筋肉も多く使われるため、日常的な運動習慣が顔のたるみの予防に役立ちます。
筋膜のたるみ改善に最も効果的な治療法は「フェイスリフト手術」です。これは、顔の皮膚を剥離し、SMAS筋膜を引き上げ、余分な皮膚を切除して縫合する方法ですが、ダウンタイムが長く、傷跡が残る場合もあります。
当院では、非侵襲的なたるみ治療として「ハイフ」および「サーマジェン」を導入しております。
ハイフは高密度超音波で真皮から筋膜に、サーマジェンはRF(ラジオ波)で主に皮下組織に熱を加えて収縮を促し、たるみの改善を図る治療です。手術と比較すると効果はマイルドですが、ほとんどダウンタイムがないことが特長です。
皮下組織と真皮の減少
加齢によって様々な部位の皮下組織(脂肪)が減少していきます。ボリュームが減った分だけ皮膚がたるむため、「ヒアルロン酸注射」や「レニスナ」でボリュームを補填します。
真皮のたるみは、コラーゲン・エラスチン等の細胞外マトリックスの減少によって引き起こされます。その結果、小ジワやたるみ毛穴が目立ってきます。治療方針は前述した「細かいシワの治療」と同じく、肌のハリを改善する治療がメインになります。
また、真皮の再生と若返りを促す「トレチノイン」「レチノール」や「プラセンタ注射」の併用も予防的な日常ケアとして推奨しています。
年代別のたるみ治療
手術をしたり糸を入れたくないという方のために、非侵襲的なたるみ治療を年代別にまとめました。同じ年代でもたるみの程度は個人差が大きく、一概には言えませんが、目安として以下の治療をおすすめします。
20代のたるみ
20代の方はたるみが少ないため、「ヒアルロン酸リフト」を1~2年毎に行うと、老化や重力によって支持靭帯が伸びて緩むのを抑制でき、将来のたるみを予防できます。真皮の衰えを防ぐ「ジュベルック・レニスナ」や「スネコス」、「ユー レブスプロ32Rx」もおすすめです。
20代後半までは、通常、ハイフは必要ありません。
30代のたるみ
30代の方でたるみが軽度な場合、「ハイフ」や「サーマジェン」を3~6ヶ月に1回、「ヒアルロン酸リフト」を1年毎に行います。真皮のメンテナンスには「ジュベルック・レニスナ」や「スネコス」、「ユー レブスプロ32Rx」がおすすめです。
皮下組織のボリュームが減って、ほうれい線やゴルゴラインが目立ってきた場合は、シワや凹みの部分を「ヒアルロン酸注射」で補います。
皮膚のたるみがひどくなる前に治療を行うことで、たるみやシワの進行を予防でき、若々しい外観を保つことができます。
40代以降のたるみ
40代以降の方のたるみには、最初に「ハイフ」と「サーマジェン」を3ヶ月毎に合計3回行い、その後はサーマジェンを3ヶ月毎、ハイフを6ヶ月毎に継続します。脂肪が少なく、皮膚のたるみがきになる方はサーマジェンより「サーマニードル」がおすすめです。
骨の萎縮や脂肪減少が起こっている部分は「ヒアルロン酸注射」や「レニスナ」で補います。
40代以降の方は、支持靭帯がすでにゆるんでしまっている方も多く、「ヒアルロン酸リフト」は目に見えた効果を発揮しませんが、靭帯がそれ以上伸びるのを予防できるため、必要な箇所のみ行います。
たるみとシワを改善させるために、最初は4~12本ほどのヒアルロン酸を使用します※。最初に顔全体のバランスを整えて土台をしっかり作っておくと、その後のたるみ予防にもつながり、メンテナンス時の本数は少なくて済みます。
※ヒアルロン酸の本数は、ご希望に合わせて治療いたしますので1本から施術可能です。
参考文献・参考サイト一覧
- Mendelson B, Wong CH. Changes in the facial skeleton with aging: implications and clinical applications in facial rejuvenation. Aesthetic Plast Surg. 2012 Aug;36(4):753-60. doi: 10.1007/s00266-012-9904-3. Epub 2012 May 12. PMID: 22580543; PMCID: PMC3404279.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3404279/figure/Fig6/
- Mendelson B, Wong CH. Changes in the Facial Skeleton With Aging: Implications and Clinical Applications in Facial Rejuvenation. Aesthetic Plast Surg. 2020 Aug;44(4):1151-1158. doi: 10.1007/s00266-020-01823-x. Epub 2012 May 12. PMID: 32844267.
- Shaw RB Jr, Katzel EB, Koltz PF, Kahn DM, Puzas EJ, Langstein HN. Facial bone density: effects of aging and impact on facial rejuvenation. Aesthet Surg J. 2012 Nov;32(8):937-42. doi: 10.1177/1090820X12462865. Epub 2012 Sep 24. PMID: 23012659.
- GALDERMA 医療従事者向けサイト レスチレンシリーズ https://www.lookgood-feelgood.jp/professional/index2.html 最終アクセス:2023/1/11