美白有効成分「トラネキサム酸」

今回は化粧品の美白成分として注目されている「トラネキサム酸」についての記事です。

トラネキサム酸とは

トラネキサム酸は、人工合成されたアミノ酸で、1965年から喉の炎症を沈める飲み薬として使用されてきました。

トラネキサム酸は「プラスミン」を阻害する作用により炎症を沈めますが、プラスミンは、メラニン色素細胞を活性化させる働きもあり、プラスミンを抑えることによって、シミや肝斑ができにくくなります。

その効果を利用して、現在は、くすみや肝斑の治療薬としても広く使われるようになり、その後の研究報告でも肝斑への効果、有効性は確たるものとなっています [1]。

「トランサミン」という薬を聞いたことがある人も多いと思いますが、トランサミンは、トラネキサム酸の医薬品名です。それを美容分野に製品化したのが、「トランシーノ」(第一三共ヘルスケア)です。

m-トラネキサム酸とは

内服薬(飲み薬)として、長い歴史があるトラネキサム酸ですが、その後、資生堂の美白化粧品に、「m-トラネキサム酸」が配合され、化粧品の美白成分としての認知度が高まりました [2]。

患者さんから「m-トラネキサム酸とトラネキサム酸の違いは何ですか?」と聞かれることがありますが、実は、全くの同一成分です。

m-トラネキサム酸は、資生堂が独自に用いている呼称(呼び方)で、mはメラニンのmを表現しているとのことでした。

念のため、資生堂へも問い合わせしましたが、「弊社ではマーケティング上、m-トラネキサム酸と表現していますが、おっしゃる通り、呼称が異なるだけでトラネキサム酸と同一の成分です。(原文ママ)」とのことでした。

トラネキサム酸の肝斑への効果

さて、化粧品成分としてのトラネキサム酸ですが、内服で効果があることは確実ですが、外用した場合には、どれくらいの美白効果があるのでしょうか。

αアルブチンやコウジ酸など、他の美白成分との比較データがあればよいのですが、私が調べた限りはなく、美白力の強さを定量的に評価することはできませんでした。ただ、いくつかの論文では、外用剤による肝斑への効果が報告されています。

軽度の肝斑患者23名に、トラネキサム酸2%配合製剤を12週間(約3ヶ月)使用したところ、23名中22名でmMASIスコア(肝斑面積と重症度スコア)が顕著に改善したとの報告があります[3]。

4ヶ月の期間、光治療(IPL)を顔全体に当て、顔の片側だけトラネキサム酸を併用、もう半分は併用せずに経過を見た試験があります。トラネキサム酸は、IPL治療中と治療終了後も継続して使用し、IPL治療終了後、12週間経過した後に、mMASIスコアとMI(メラニンインデックス:メグザメーターでメラニン色素の濃さを計測)で評価したところ、トラネキサム酸を併用した片側の顔は、使用していないもう片方の顔と比較して、mMASIスコアとMIが顕著に改善したとの報告があります [4]。

韓国で42人の女性を対象に、21名にトラネキサム酸2%+ナイアシンアミド2%配合のクリームを1日2回、8週間使用し、残りの21名にプラセボのクリームを使用するという比較試験が行われました。トラネキサム酸+ナイアシンアミド群は、プラセボ群と比較して、メグザメーターでのメラニン色素濃度が著明に減少したと報告されています [5]。

しかし、反対にトラネキサム酸の外用剤が、効果を発揮しなかったという報告もあります。

23人のアジア人の女性に、トラネキサム酸5%外用剤を顔の片側だけ使用し、もう片方にプラセボを使用した試験では、トラネキサム酸を使った片側のmMASA(肝斑面積と重症度スコア)とMI(メラニンインデックス)は、プラセボを使った片側と比較して有意差はなく、副作用として、トラネキサム酸による皮膚の赤みが認められたとの報告があります [6]。

トラネキサム酸を効果的に使う

外用剤としてのトラネキサム酸を効果的に使用する方法を考察してみます。

濃度

前述した文献などから、臨床的に効果があるという研究のほとんどが、2%以上のトラネキサム酸を配合した外用剤を用いています。

市販のトラネキサム酸配合化粧品で、濃度が開示されているものはありません。なので、我々消費者には、どの化粧品にどれくらいトラネキサム酸が入っているかわかりづらくなっています。

あくまで私見ですが、特許情報や論文などから、資生堂のHAKUやトランシーノに配合されているトラネキサム酸は0.5%~前後と予想しています。また、医療機関専売品のナビジョン(資生堂)のイオン導入用トラネキサム酸は、特許情報から推測して、2%程度の濃度であると予想しています。

化粧品は、医薬品ではありませんので、濃度を高くすれば、副作用の刺激や赤みが強くなる可能性があるため、高濃度で配合するのは難しくなっています。

トラネキサム酸は、厚生省から美白有効成分として認められていますので、効果は多少なりともありますが、化粧品では、大きな効果は期待できないと考えて良いでしょう。

剤形

トラネキサム酸は水溶性(水に溶けやすい)成分ですので、基剤(有効成分を混ぜる大もとの成分)は、水溶性より油脂性の方が皮膚からの吸収性が高まります [7]。

そのため、化粧水に配合するよりも、クリーム剤にすることで最も肌に浸透しやすくなり、効果が高まります。

イオン導入

クリーム剤はイオン導入はできませんが、化粧水はイオン導入可能です。

トラネキサム酸は両性電解質で,pHによって解離状態が変化するという性質があります。酸性にすると+に解離し、アルカリ性にすると-に解離します。

PH等の条件を変えて、トラネキサム酸の真皮濃度を測定した試験では、「基剤のpHを弱酸性にする」ことと、「プラス極からの導入が好ましい」ことが報告されています [8]。具体的にはPH3.5~6.5(最も効率が高いのはPH5)で、濃度は1%~3%が最も良く、PH調整剤はクエン酸を用いることが良いとされています。

下の図はモルモットの皮膚で、PH4.89の酸性下で、トラネキサム酸2%水溶液をプラスで、PH10のアルカリ性下で、トラネキサム酸2%水溶液をマイナスで5分間イオン導入し、角層表皮内のトラネキサム酸濃度を測定したものです [9]。

トラネキサム酸のイオン導入
トラネキサム酸のイオン導入 [9]

Anodal IP=プラス極側からのイオン導入 Cathodal IP=マイナス極側からのイオン導入

酸性では、プラスでの導入、アルカリ性では、マイナスからの導入で、経皮吸収が促進されています。また、マイナス極からイオン導入した場合と比較して、プラス極から導入したケースは、電気反発力と電気浸透流による力が共に正に作用するため、トラネキサム酸の累積透過量が最も高められたという結果になっています。

トラネキサム酸でシミは消える?

最近トラネキサム酸を配合しているだけで、「シミがぽろっと落ちる!」「シミが消える!」などと嘘の広告をしている化粧品・医薬部外品を目にします。

トラネキサム酸は肝斑の改善やシミの予防には有効と報告されていますが、普通のシミ(老人性色素斑)を消すという医学的根拠はありません。

ましてや、いろいろな場所で広告されているように、シミがペリっと剥がれたなんていうことは医学的に考えてあり得ませんのでご注意ください。

トラネキサム酸化粧品の選び方

当院のおすすめとしては、トラネキサム酸濃度が2%以上のもので、なおかつ、クリーム基剤のものをおすすめします。化粧水であれば、イオン導入できるタイプのものが良いでしょう。

イオン導入のやり方

弱酸性で作られているトラネキサム酸化粧水は+で、中性~弱アルカリ性で作られているものは-で導入します。

ビタミンC誘導体とトラネキサム酸を一緒にイオン導入したい場合、例えば当院のEGホワイトローションのように同じ化粧水に両方入っており、中性で作られていれば、マイナスでイオン導入してください。

ビタミンC誘導体化粧水とトラネキサム酸化粧水が別々で、両方弱酸性の場合、先にトラネキサム酸化粧水をプラスでイオン導入した後、ビタミンC化粧水をマイナスでイオン導入してください。ビタミンC化粧水を先にイオン導入し、その後にトラネキサム酸を導入すると、皮内のビタミンCが抜けてしまうことが報告されています [8]。

記載:肌のクリニック 医師 岩橋陽介

参考文献・サイト

  1. Zhang L, (2018) “Tranexamic Acid for Adults with Melasma: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Biomed Res Int. 2018 Nov 6;2018:1683414. doi: 10.1155/2018/1683414. eCollection 2018. DOI: 10.1155/2018/1683414 PMID: 30533427
  2. 資生堂 “成分の進化” https://www.shiseido.co.jp/haku/laboratory/ingredient.html 2019.03.06 アクセス
  3. Kim SJ, (2016) “Efficacy and possible mechanisms of topical tranexamic acid in melasma.” Clin Exp Dermatol. 2016 Jul;41(5):480-5. doi: 10.1111/ced.12835. Epub 2016 May 2. DOI: 10.1111/ced.12835 PMID: 27135282
  4. Chung JY, (2016) “Topical tranexamic acid as an adjuvant treatment in melasma: Side-by-side comparison clinical study.” J Dermatolog Treat. 2016 Aug;27(4):373-7. doi: 10.3109/09546634.2015.1115812. Epub 2015 Dec 4. DOI: 10.3109/09546634.2015.1115812 PMID: 26526300
  5. Lee DH, (2014) “Reduction in facial hyperpigmentation after treatment with a combination of topical niacinamide and tranexamic acid: a randomized, double-blind, vehicle-controlled trial.” Skin Res Technol. 2014 May;20(2):208-12. doi: 10.1111/srt.12107. Epub 2013 Sep 5. DOI: 10.1111/srt.12107 PMID: 24033822
  6. Kanechorn Na Ayuthaya P, (2012) “Topical 5% tranexamic acid for the treatment of melasma in Asians: a double-blind randomized controlled clinical trial.” J Cosmet Laser Ther. 2012 Jun;14(3):150-4. doi: 10.3109/14764172.2012.685478. PMID: 22506692
  7. マルホ株式会社 “主薬の経皮吸収性に対する基剤や剤形の影響” https://www.maruho.co.jp/medical/academic/infostore/vol01/05.html 2019.03.06 アクセス
  8. 日本国特許庁. ”イオントフォレーシスによる美容方法.” 特開2007-131547号. 2007.5.31
  9. 日本国特許庁. ”イオントフォレーシスによるトラネキサム酸の経皮送達.” 特開2006-298850号. 2005.4.21

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