低用量ピルのニキビや肌あれに対する効果やいつから効果が出るのかを記載していきます。
ピルとは
ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが合わさったお薬です。主に避妊のためや、生理不順や子宮内膜症などの婦人科疾患の治療、ニキビの治療に用いられています。
卵胞ホルモン(エストロゲン≒エチニルエストラジオール)の量が、50μg以上のピルを中用量ピル、50μg未満のピルを低用量ピル、25μg未満のものを超低用量ピルと呼びます。
以下に、主な低用量ピルと超低用量ピルに含有されている卵胞ホルモン量を示します1, 2, 3, 4, 5, 6, 7。
薬剤名 | 卵胞ホルモン量 |
---|---|
ルナベルLD | 35μg |
ルナベルULD マーシロン | 20μg |
トリキュラー アンジュ ラベルフィーユ | 30~40μg |
マーベロン ファボワール | 30μg |
ヤーズ | 20μg |
ヤスミン | 30μg |
ダイアン スーシー | 35μg |
ニキビに効果的なピル
ニキビの3大原因として、アンドロゲン(男性ホルモン)の過活動があります。
ピルにはエストロゲン(女性ホルモン)が配合されているため、それ自体でアンドロゲン(男性ホルモン)を抑える作用があるため、ニキビに効果的であり、世界中で女性のニキビ治療薬として用いられています。
アンドロゲン活性が抑えられたタイプのピルのほうが、よりニキビに効果的ですが、アンドロゲン活性は、ピルに配合されている黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の種類によって変化します。
ノルエチステロン(ノルエチドロン)を1.0とすると、各プロゲストーゲンのアンドロゲン活性(男性ホルモン活性)は、レボノルゲストレル8.3、デソゲストレル3.4となります8。
黄体ホルモンの種類 | アンドロゲン活性 | 薬剤名 |
---|---|---|
ノルエチステロン ノルエチドロン 第一世代 | 1.0 | ルナベル フリウェル オーソM シンフェーズ |
レボノルゲストレル 第二世代 | 8.3 | ラベルフィーユ トリキュラー アンジュ ジェミーナ |
デソゲストレル 第三世代 | 3.4 | マーベロン マーシロン ファボワール |
ドロスピレノン 第四世代 | 0 | ヤスミン ヤーズ |
シプロテロン 未分類 | 0 | ダイアン スーシー |
黄体ホルモンのアンドロゲン活性は上の表の通りですが、各ピルに含まれている黄体ホルモン量や黄体ホルモン活性、女性ホルモン量でもニキビへの効果は変化します。
2147人のニキビ患者を対象した研究では、ドロスピレノン配合のピルが最も効果が高く、次いでノルゲスチメートとデソゲストレル配合のピル、最後にレボノルゲストレルとノルエチドロン配合のピルの効果が高かったという報告されています9。
当院で過去14年間に約4000人にホルモン治療を行いましたが、 当院で扱っているピル中では、スーシーが最もニキビに効果が高く、次いでヤスミン、マーベロン、ラベルフィーユの順になるため、前述の海外の報告とほぼ同一の結果です。
いつから効くの?
ピルはいつからニキビに効果が出るのか心配な方も多いと思います。
シプロテロンとエチニルエストラジオール(ダイアン・スーシー)によるニキビ治療では、約6ヶ月で82.8%の患者が50%以上の改善率であったと報告されています10。
当院の治療では、3ヶ月で約80%の方が改善し、6ヶ月で90%以上の方に改善が認められます。効果が早く出るのは、ニキビに適切なピルを選択していることと、抗男性ホルモン剤(スピロノラクトン)を併用しているためです。それでも、ピルのニキビへの効果には即効性はないため、少なくとも3ヶ月間は様子をみてください。
ピルの副作用として重大なものに、「血栓(けっせん)」の問題があります。血栓とは、血が血管の中で固まってしまい、血流を妨げてしまう症状です。ピルと血栓の関係性については、後ほどブログ記事をリライトする予定です。
低用量ピルは、ニキビの治療だけでなく、避妊、月経困難症、過多月経、子宮内膜症などにも使用されます。リスクを除外して、正しく服用すれば、安全性は高く、女性にとって有用性が高い薬剤です。
参考文献・サイト一覧
- Nobel pharma “ルナベル配合錠LD・ULD” https://nobelpark.jp/news/2016/10/lunabell_pr_v13_201610_nihon.pdf 2019.03.09 アクセス
- BAYER “トリキュラー錠21/28” https://pharma-navi.bayer.jp/omr/online/product_material/170105_TRQ_D4_tenbun.pdf 2019.03.09 アクセス
- MSD “マーベロン21/28” https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_marvelon.pdf 2019.03.09 アクセス
- BAYER “ヤーズ配合錠” https://pharma-navi.bayer.jp/omr/online/product_material/160930_YAZ_D4_tenbun.pdf 2019.03.09 アクセス
- FDA “YASMIN 28 TABLETS” https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/021098s017lbl.pdf 2019.03.09 アクセス
- FDA “Yasmin (drospirenone and ethinyl) tablet label” https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2012/021098s019lbl.pdf 2019.03.09 アクセス
- BAYEL “Diane-35” https://www.bayer.ca/omr/online/diane-35-pm-pt3.pdf 2019.03.09 アクセス
- Stubblefield PG, (1986) “Biological activity of oral contraceptives.” Int J Fertil. 1986;31 SU [UPDATE]:4-12. PMID: 2899558
- Lortscher D, (2016) “Hormonal Contraceptives and Acne: A Retrospective Analysis of 2147 Patients.” J Drugs Dermatol. 2016 Jun 1;15(6):670-4. PMID: 27272072
- Gollnick H, (1999) “The effectiveness of oral cyproterone acetate in combination with ethinylestradiol in acne tarda of the facial type” Ann Endocrinol (Paris). 1999 Sep;60(3):157-66. PMID: 105204