ミニピルの種類と血栓症のリスク

ミニピルとは

ミニピルとは、黄体ホルモン(プロゲストーゲン)のみで女性ホルモン(エストロゲン)を含有していないピルのことです。プロゲストーゲンしか配合されていないため、Progestogen-Only Pill、略してPOP(ポップ)とも呼ばれています。

ミニピルのメリットとして、エストロゲンが含有されていないため、血栓症のリスクがほとんどないとされ、医師の指導のもとに、肥満の方、35歳以上の方、喫煙者の方、授乳中の方にも処方することが可能です。

一方デメリットとして、肌に対する効果(肌荒れ、ニキビを抑える作用)が弱いことや、飲み始めに不正出血が続くことがあること、連日しっかりと同じ時間に内服をする必要があること、などが挙げられます。

ミニピルは日本では全く普及しておらず、国内では認可もされていませんので、処方している病院、クリニックはほとんどありません。しかし、上記のような特徴を持つために、有用性が高い薬剤です。

ミニピルの種類

黄体ホルモンだけが配合されたPOPには、様々な種類があります。低用量ピルに含まれる黄体ホルモン量も参考までに下記に記載しています [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7]。

商品名黄体ホルモンの種類1錠の含有量
ノリディ
Noriday
ノルエチステロン
第一世代
350μg
(ルナベルは1000μg)
マイクロノア
Micronor
ノルエチステロン
第一世代
350μg
マイクロバル
Microval
レボノルゲストレル
第二世代
30μg
(トリキュラーは50~125μg)
ノルゲストン
Norgeston
レボノルゲストレル
第二世代
30μg
セラゼッタ
Cerazette
デソゲストレル
第三世代
75μg
(マーベロンは150μg)
ノアルテンノルエチステロン
第一世代
5000μg(5mg)
ディナゲストジエノゲスト
第四世代
1000μg(1mg)

ノアルテンとディナゲストは黄体ホルモンの単独製剤ですが、ホルモン量が多く、避妊目的のためのお薬ではないので、正確にはミニピルではありません。

ノアルテンは、生理周期の調整や無月経治療に使用されています [6]。1錠あたりのノルエチステロンは5,000μgですので、ノリディやマイクロノアの約15倍の量を含有しており、避妊薬目的として毎日飲むには多すぎます。

ディナゲストは1日2回飲むことで、卵巣からのエストロゲンの産生を抑制し、子宮内膜の周期的な増殖を抑えることにより、子宮内膜症治療に使用されています。排卵も抑制するので、飲み忘れがなければ避妊作用もあるはずですが、子宮内膜症に特化した試験しか行われておらず、避妊薬として適用は通っていません [7]。

ミニピルの血栓症のリスク

血栓とは

血栓(けっせん)とは、血管の中で血液が固まってしまうことです。血栓症は、血栓によって起こってくる症状の総称です。

例えば、足の静脈に血栓が詰まると、深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)となり、足が腫れたり、色が変わったりします。肺に血栓が詰まると、肺血栓症(はいけっせんしょう)となり、呼吸困難等重篤な症状を引き起こす可能性があります。

ミニピルと血栓

アフリカ、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカでのWHOによる多施設共同比較試験において、経口剤、注射剤ともにミニピル(POP)による血栓症(脳梗塞、静脈血栓症、心筋梗塞)リスクの有意な上昇は認められませんでした [8]。

ドイツで行われた16歳~44歳の女性を対象としたケースコントロールスタディでも、ミニピル(POP)による血栓症リスクの有意な上昇を認めませんでした [9]。

74086名の50歳以下の女性を調べたコホート研究では、黄体ホルモン単独製剤への暴露を2つのカテゴリーに分けて個別分析しており、第一世代ノルエチステロン換算で1日のプロゲストーゲン量0-5㎎の群と、避妊目的以外で使用されているプロゲストーゲン量5-30㎎の群では、静脈血栓症の相対リスクがそれぞれ1.3と5.3で大きく異なっていることが報告されています [10]。

ミニピルの血栓症リスク
プロゲストーゲン製剤の血栓リスク [10]

つまり、通常の避妊目的の用量でミニピルを服用している場合は、血栓症のリスクの上昇はないものの、月経異常など他の疾患の治療目的で1日5㎎以上の用量を飲んでいる場合、血栓症のリスクは有意に上昇することを示しています [10]。

黄体ホルモン量が多いと、血栓症のリスクが上がるのは、多すぎる黄体ホルモン量が女性ホルモンへ変換させるためと考えられています。

現在、海外で避妊目的で処方されるミニピルは、黄体ホルモン量が少なく、無月経や子宮内膜症の治療目的で使用されているノアルテン、ディナゲストの黄体ホルモン量は多くなっていますので、避妊目的だけであれば、ノアルテン・ディナゲストは飲まないほうがよいと考えられます。

現時点ではミニピルが血栓症のリスクを有意に上昇させることはないため、低用量ピルと比較しても、さらに安全性が高いといえます。

ミニピルの処方

ミニピルは、喫煙者、35歳以上の方でも内服可能であり、血栓のリスクがご心配な方は、低用量ピルからの切り替えとしておすすめします。

ただし、ピル・ミニピルの服用にかかわらず、 血栓症は誰にでも起こりえる可能性があり、タバコや肥満が重大なリスク要因となりますので、禁煙や生活習慣の見直しなど、できるだけ健康のためにリスクを排除することが大切です。

当院ではミニピルとしてセラゼッタを処方しています。ミニピルの処方や値段・価格などについて詳しくは、当院HPの「ミニピル」をご参照ください。

一度受診していただければ、その後は遠隔診療によるオンライン処方も可能です。

執筆 医師:岩橋 陽介

参考文献・サイト

  1. Pfizer Limited. “Noriday® 350 microgram tablets Norethisterone Package leaflet” https://www.medicines.org.uk/emc/files/pil.1146.pdf 2019.03.15 アクセス
  2. Janssen Inc. “MICRONOR® Norethindrone Tablets, USP 0.35 mg Oral Contraceptive” https://www.janssen.com/canada/sites/www_janssen_com_canada/files/prod_files/live/micronor_cpm.pdf 2019.03.15 アクセス
  3. “MICROVAL® Tablets” http://home.intekom.com/pharm/akromed/microval.html 2019.03.15 アクセス
  4. Bayer plc. “Norgeston® levonorgestrel” https://www.medicines.org.uk/emc/files/pil.1133.pdf 2019.03.15アクセス
  5. Merck Sharp & Dohme Limited, “Patient leaflet of Cerazette® 75 microgram film-coated tablets desogestrel” https://www.medicines.org.uk/emc/files/pil.1698.pdf 2019.03.15 アクセス
  6. 富士製薬工業株式会社 “ノアルテン錠(5mg)” http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2479002F1026_4_02/ 2019.03.15 アクセス
  7. 持田製薬株式会社 “ディナゲスト錠1mg” http://www.mochida.co.jp/dis/txt/pdf/dng_n9d.pdf 2019.03.15 アクセス
  8. World Health Organization Collaborative Study of Cardiovascular Disease and Steroid Hormone Contraception. (1988) “Cardiovascular disease and use of oral and injectable progestogen-only contraceptives and combined injectable contraceptives.” Contraception. 1998 May;57(5):315-24. PMID: 9673838
  9. Heinemann LA, (1999) “Oral progestogen-only contraceptives and cardiovascular risk: results from the Transnational Study on Oral Contraceptives and the Health of Young Women.” Eur J Contracept Reprod Health Care. 1999 Jun;4(2):67-73. PMID: 10427481
  10. Vasilakis C, (1999) “Risk of idiopathic venous thromboembolism in users of progestagens alone.” Lancet. 1999 Nov 6;354(9190):1610-1. DOI: 10.1016/S0140-6736(99)04394-9 PMID: 10560680

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