毛穴が目立つ原因
肌の悩み相談で多いのが「毛穴が目立つ」というものです。
毛穴はその下にある毛包の出口ですが、毛包には、脂腺性毛包、終毛性毛包、軟毛性毛包の3つの種類があります。このうち毛穴として目立つのは、発達した皮脂腺が付属する脂腺性毛包です。
毛穴の大きさは遺伝的に決められており、思春期に皮脂腺が大きくなるとともに、毛穴も目立つようになります。遺伝的に毛穴が大きい場合、治療による改善はあまり期待できません。
しかし、遺伝的な要因以外の毛穴であれば、治療によってある程度の改善が見込めます。
遺伝的要因以外の毛穴が目立つ原因
- 角栓や角質の肥厚
角栓によって毛穴が目立つことがあります。角栓は古くなった角質や皮脂が毛穴に詰まったものです。角栓は空気に触れて酸化すると黒ずむため、毛穴に黒いボツボツしたものが見えるようになります(ブラックヘッド)。また、皮膚のターンオーバーが遅く角質が厚くなることで、毛穴周囲の角質が盛り上がって毛穴が大きく見えることもあります。 - 皮脂過剰と乾燥
毛穴は皮膚の下にある毛包という組織の出口部分です。毛包には皮脂腺が付属しており(脂腺性毛包)、皮脂腺が大きいとその出口の毛穴も大きくなる傾向になります。
逆に乾燥によって毛穴が目立つことがありますが、①で述べた原因と同様に、乾燥で皮膚のターンオーバーが異常になるためです。 - ニキビなどの炎症性皮膚疾患
ニキビの炎症によって、毛穴周囲の皮膚が瘢痕化して大きな毛穴になってしまうことがあります(瘢痕毛穴)。昔ニキビがひどかった方で、毛穴が大きくなっている場合は、ニキビが原因で毛穴が広がってしまった可能性があります。酒さや脂漏性皮膚炎など、皮膚の慢性的な炎症を持っている方も同様です。 - 加齢
老化によって真皮のコラーゲンや皮下組織(脂肪組織)が減少すると、皮膚の弾力がなくなり、肌がたるんできます。肌がたるむと、ハリがなくなるために毛穴が目立ってきます(たるみ毛穴、帯状毛穴)。
実際には、毛穴が目立つ原因は単一ではなく、複合的に絡み合っています。
ニキビやニキビ跡ができやすいのは遺伝的要因が主であり、男性ホルモンの分泌が過剰で皮脂腺が発達しているのも遺伝的要因ですから、すべての原因が体質とも言えますが、ここでは後天的に改善できるものを挙げています。
毛穴の治療
まず、毛穴を大きくする原因となる基礎疾患がある場合には、その治療を優先させます。特にニキビや酒さといった肌に慢性的に炎症を繰り返す疾患では、毛穴が瘢痕化して大きくなります。一度瘢痕化してしまった毛穴を治すのは困難ですから、一刻も早く症状を落ち着かせてコントロールすることが大切です。
ホルモン治療
ピルや抗男性ホルモン薬(スピロノラクトン)は、皮脂腺の活動を抑えて皮脂量を減らし、角栓を詰まりにくくします。
①②が原因の毛穴に効果が期待でき、皮脂過剰やブラックヘッドを改善します。適切な種類の薬を選択することでニキビの治療になるため、③が原因の瘢痕毛穴の予防にもなります。
ホルモン治療について詳しくは、下記をご覧ください。
イソトレチノイン治療
イソトレチノインはニキビのお薬ですが、強力に皮脂腺を抑える作用、スキンターンオーバーを亢進する作用、毛包の角化と増殖を正常化する作用がありるため、角栓や角質肥厚による毛穴、皮脂過剰による毛穴を改善し、ニキビや酒さによる慢性的な炎症も沈めてくれます。
イソトレチノインを含めたビタミンA系の薬剤は、皮膚の老化プロセスを遅らせることが報告されており、①②④が原因の毛穴に効果が期待でき、③が原因の瘢痕毛穴の予防になります。
イソトレチノイン治療について詳しくは、下記をご覧ください。
トレチノイン
トレチノインもイソトレチノインと同じビタミンA系の薬剤です。
内服薬のイソトレチノインほど作用が強力ではありませんが、気になる毛穴の部分だけに局所的に使用できるため、全身的な副作用は稀です。
皮脂腺抑制作用、スキンターンオーバー亢進作用、角質軟化作用、エイジングケア作用によって、①②④が原因の毛穴に効果が期待できます。
トラネックスレチピール
トラネックスレチピールはトラネキサム酸とレチノール4%が配合されたピーリング剤です。
レチノールもトレチノインと同じビタミンA系の成分です。高濃度のレチノールを使うことで、一気に角質を剥がして新しい肌を再生させるため、7-10日ほど皮むけ等が起こります。
①②④が原因の毛穴に効果が期待できます。
サリチル酸マクロゴールピーリング
サリチル酸の基材をマクロゴールにすることによって、副作用を最小限に抑えたピーリング剤です。
ダウンタイムがほとんどないのに古い角質をきれいに除去し、低用量イソトレチノインとの併用で毛穴の縮小が報告されています。
マイクロボツリヌストキシン注射
マイクロボツリヌストキシン注射は、ボツリヌストキシンを細かく肌表面に注射する方法です。「マイクロボトックス」とも呼ばれています(当院ではコアトックスを採用しています)。
シワ改善目的の場合、表情筋をターゲットに注射しますが、マイクロボツリヌストキシン注射では、毛穴や皮脂が気になる肌の皮内に注射を行います。
低濃度の製剤を細かく注入することで、お顔の表情筋への作用を避けながら、皮脂抑制、毛穴縮小、キメの改善効果が期待できます。
ダブル照射レーザー
加齢によってたるんだ毛穴には、ロングパルスヤグレーザーとトーニングレーザーを組み合わせた「ダブル照射」を行います。
ロングパルスヤグレーザーは、真皮層に熱エネルギーを加え、コラーゲンの産生を促して、加齢によるたるみ毛穴を改善させます。トーニングレーザーは、毛穴の黒ずみや色素沈着、くすみを除去し、透明感のある綺麗な素肌へ変えていきます。
1回の治療で、ロングパルスヤグレーザー→トーニングレーザーの順で照射し、これを約2週間間隔で10回行います。
レーザーと聞くと高い効果を期待する方もいますが、レーザーで改善できる毛穴は④が原因の毛穴(主に予防)程度で、レーザー単独での改善率は高くありません。また、ニキビ跡の瘢痕毛穴にもダブル照射は無効です。
毛穴は複合的な要因で大きくなるため、角質の肥厚、皮脂腺の過活動、皮膚のターンオーバーの異常等がある場合には、イソトレチノイン治療と並行してダブル照射を行います。
ダブル照射レーザーは、痛みが少なく麻酔も不要です。ダウンタイムもほとんどなく、当日にメイクも可能です。副作用として、赤みや毛包炎、肝斑が濃くなるなどありますが、非常にまれです。
ダブル照射の治療費用等については下記をご覧ください。
CO2フラクショナルレーザーとダーマペン(+ボツリヌストキシン)
ニキビ跡によって瘢痕化した毛穴を治すのは、非常に厄介です。
CO2フラクショナルレーザーやダーマペンで、毛穴と瘢痕組織を破壊して再生させる「創傷治癒過程」を利用して毛穴を治療します。
CO2フラクショナルレーザーでは2ヶ月1回、ダーマペンでは1ヶ月に1回を約1~2年繰り返し治療を行います。1回の治療ではほとんど効果を見込めず、複数回でも改善率は高くありませんが、少しずつ改善は見られます。
また、皮脂開きが気になる方は、エコツーやダーマペン後にボツリヌストキシンを塗布するのもおすすめです。
治療方法や副作用についてはニキビ跡の凹みと同様ですので、下記のページをご参照ください。
治療症例
鼻横から頬の毛穴
鼻や鼻横の頬の毛穴が気になるケースが多く、こちらの患者さんも同部位の毛穴が気になっていました。ニキビでホルモン治療(ピル+スピロ)をベースで行っており、さらにトレチノインを2ヶ月使用してもらいました。トレチノインの影響で肌に赤みが多少出ていますが、全体的に肌質が改善しています。
同じ患者さんの拡大写真です。治療後は、毛穴が全体的に縮小して目立たなくなっています。ダーマスコピーで見ても肌のキメが整い、テクスチャー改善が見られました。
トレチノインは、肌がビタミンA反応に慣れてくれば長期に使用しても問題がない薬剤です。敏感肌の方や赤みが出やすい方は、トレチノインで治療した後に、メンテナンス的に作用の弱い「レチノール」をおすすめします。
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