ニキビパッチはニキビに効果的?悪化させる?

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ニキビパッチ

ニキビパッチは、ニキビに貼って早く治したり、ニキビあとを防ぐと謳われている商品で、韓国では10年以上前から定番の美容アイテムになっています。診察でニキビパッチが付いているのを見る機会が多くなっており、人気が高まっているようです。

ニキビパッチ
ニキビパッチ

ニキビパッチは「ハイドロコロイド」という親水性ポリマーで作られています。水分を吸着し、皮膚にぴったりとくっつくので、傷を乾かさずに治す「湿潤療法」と傷口の保護に役立ちます。傷が早く治ることで有名な「キズパワーパッド」も同じハイドロコロイドでできています。

ハイドロコロイドテープ

様々な商品が発売されており、各商品、大きさや厚さ、粘着力、形態的な違いなどがありますが、大別すると以下の2つとなります。

大きく分けるとこの2種類
  • 純粋なハイドロコロイドだけのもの
  • ハイドロコロイドに成分が添加されたもの

添加される成分は、サリチル酸、ナイアシンアミド、ティーツリーオイル、ベンゾイル、アゼライン酸、グリチルリチン酸2K、ビタミンC誘導体など、主に抗炎症作用のあるものです。ニキビの炎症を早く鎮める目的で添加されています(日本と海外では、添加できる成分や濃度に違いがあります)。ヒアルロン酸の小さな針(マイクロニードル)が付いたパッチもあります。

ニキビパッチはニキビに効果的?

ニキビパッチは、医療用として認可されている商品ではありませんので、ニキビに対しての効果効能を宣伝することはできません。「ニキビパッチ」という名称は商品に用いることはできないため、スポットパッチやトラブルパッチ、クリアパッチなど、ニキビ治療を連想させる名前になっています。

ニキビパッチがニキビに効くかどうかの研究はほとんどなく、ピアレビューももちろんありません。

ニキビパッチのメリット

ハイドロコロイドなどのドレッシング材で閉塞することで、創傷治癒が促進されることは多くの研究で報告されており2 3 4、傷の性状にもよりますが、正しい使い方をすればハイドロコロイドは創傷をきれいに治してくれます。

ニキビも炎症による傷の一つであり、ハイドロコロイドを貼る事で治癒が促され、瘢痕が残りにくくなる可能性は十分に考えられます。

小規模な試験ですが、20人のニキビ患者を対象に、ハイドロコロイドドレッシング材と通常のテープとを比較した研究では、ハイドロコロイド群で有意にニキビが改善したと報告されています1

ニキビが出来ると掻把(そうは=かき壊すこと)したり、触ったり、癖で潰してしまう癖がある方もいますが、ニキビパッチがニキビを保護し、物理的な刺激から守るため、ニキビ跡が残りにくくなるというメリットがあります。

また、パッチを貼ることで、紫外線から患部が守られるというメリットもあります。

当院の患者さんでも、パッチを付けたほうが「ニキビの治りが早い」「跡になりにくい」と言う方は少なくありません。

ニキビパッチのデメリット

ニキビパッチが毛穴を塞ぐことによって、毛穴のつまりが起こりやすくなり、ニキビが悪化する懸念があります。

また、ニキビの原因菌であるアクネ菌は「通性嫌気性菌」という酸素のない場所を好む菌です。ニキビパッチで空気が遮断されると、アクネ菌がより繁殖しやすくなる可能性が懸念されます。

ニキビパッチに添加されている消炎剤や抗炎症成分は、基本的には塗って使用する成分であり、パッチによって局所に留めることを想定していません。パッチによって作用が増強される可能性がある反面、逆にアレルギーや皮膚炎を引き起こす可能性もあります。

ニキビパッチについての私見

以下は、長年ニキビの診療をしてきた私の個人的な見解と当院の知見です。

ニキビパッチによる悪化は少ない

ニキビパッチを使用している患者さんの肌の状態を診ると、有益性があるケースは少なからずあり、ニキビが悪化したケースは少なく、ニキビパッチが毛穴をつまらせてニキビを増悪させるというのは、臨床的にはあまり起こらないように思います。

当院では年間2万個以上のシミ、ホクロ、イボを除去し、そのすべてにニキビパッチと同様の素材のハイドロコロイドテープや、エアウォールUVというフィルムを貼りますが、それらが原因でニキビができやすくなる患者さんはほとんどいません。

これは、ニキビの初期段階である毛包漏斗部の異常角化による毛穴の閉塞と、メイクやドレッシング材(テープ)などの物理的な閉塞とでは、その後のニキビへの進展に違いがあるせいかもしれません。もちろんメイクやドレッシング材でニキビが悪化する可能性はあるものの、ニキビの生成には他の複数の要因が関与しており、メイクやドレッシング材は、ニキビの悪化要因として小さいと考えています。

患者さんから「ニキビパッチはダメと言われて、やめたけれども変わらない。」と相談されることがあります。これは、ニキビパッチをやめてもニキビに変化がないわけですから、プラスの効果もマイナスの効果ももたらさなかったことになります。

「ニキビパッチを自己判断で使っているからニキビが治らない」と患者さんを怒る医師もいるようですが、単純にその医師の治療が間違っていて、患者さんのニキビを治せていないだけではないでしょうか。実際に、そのようなケースで当院に来られる患者さんは、ニキビパッチを使用していても問題なく改善します。

ニキビパッチの正しい使い方

デメリットの項目でも触れましたが、薬剤入りのものは皮膚炎の原因となることがありますので、もしニキビパッチを最初に使用するのであれば、ハイドロコロイド単独の商品が安全です。

使い方は単純で、1日1回、清潔な肌に貼るだけです。基礎化粧品を使うと剥がれやすくなるため、洗顔後、基礎化粧品の前に使用します。患部の蒸れを防ぐ目的や観察の意味でも、1~2日に1回は貼りかえるようにしましょう。(様々な種類のニキビパッチを取り寄せてみましたが、薄くて粘着力が弱いため、商品の特性上、何日も貼りっぱなしにするのは難しいと思われます。)

粘着力が強い商品はほとんどないので、そのまま剥がしても問題ないと思われますが、剥がす際に水やぬるま湯で濡らしながら剥がすと、肌にダメージを残しません。

パッチが白、もしくは、黄色く膨らみ、膿(うみ)が吸収されたように見えることがありますが、ほとんどの場合は膿ではなく、皮膚の汗やニキビの浸出液などによって膨らんだ状態です。

もしニキビが潰れて膿や出血をパッチが吸収できなくなったり、汗や浸出液で全体的に白くなったりした場合には、水やぬるま湯で濡らしながらゆっくりと剥がし、患部を洗い流した後に新しいものを貼ります。

ハイドロコロイドはかぶれが比較的起こりにくいテープですが、それでもテープかぶれが起こる場合がありますので、肌が弱い方にはおすすめしません。

もちろん、「パッチで一晩でにきびが綺麗に」という宣伝通りの効果は期待できませんから、あくまで補助的なものと割り切り、正しい治療を受けることが大切です。

まとめ

以上の理由から、ニキビパッチを積極的に推奨することはしていませんが、やめるように厳格に指導することもありません。正しいニキビ治療を行えば、ニキビは速やかに改善し、ニキビパッチも不要になるため、ニキビパッチを患者さんが使用していても、問題視していません。

もちろん、皮膚の状態を診て使用を控えるよう指導することはありますが、当院では、ニキビパッチ、メイク、マスク、帽子など含めて、日常生活で制限を課すことはほとんど行っていません。

参考文献・サイト一覧
  1. Chao-Ming Chao, Wei-Yu Lai, Bai-Yao Wu, Hung-Chia Chang, Wei-Shuan Huang, Yu-Fei Chen, “A pilot study on efficacy treatment of acne vulgaris using a new method: results of a randomized double-blind trial with Acne Dressing” J Cosmet Sci. Mar-Apr 2006;57(2):95-105. PMID: 16688374
  2. G A Kannon, A B Garrett, “Moist wound healing with occlusive dressings. A clinical review” Dermatol Surg. 1995 Jul;21(7):583-90. doi: 10.1111/j.1524-4725.1995.tb00511.x. PMID: 7606367
  3. Joel W Beam, “Occlusive dressings and the healing of standardized abrasions” J Athl Train. Oct-Dec 2008;43(6):600-7. doi: 10.4085/1062-6050-43.6.600. PMID: 19030138
  4. A Heffernan, A J Martin, “A comparison of a modified form of Granuflex (Granuflex Extra Thin) and a conventional dressing in the management of lacerations, abrasions and minor operation wounds in an accident and emergency department.” Accid Emerg Med. 1994 Dec; 11(4): 227–230. doi: 10.1136/emj.11.4.227 PMID: 7894807

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