多汗症 / ボツリヌストキシン

目次

ボツリヌストキシン注射による多汗症治療

人間は体温を調整するために汗をかく必要があり、発汗は正常です。しかし、脇や手足などの一部の体の領域で過剰に汗がでる「局所性多汗症」は、生活の質に重大な影響を与える可能性があります。

発汗を恥ずかしいと感じ、多汗症が精神的な影響を与えたり、社会的な孤立を生む可能性もあります。

ボツリヌストキシンは、発汗を抑える最良の治療の一つです。神経から分泌されるアセチルコリンを抑制し、汗を出す汗腺の働きを抑えます3 4

ワキ、手のひら、足の裏など、汗をかきやすい部位に注射すると、その部位の発汗を長期間防ぐことができます。

こんな方にオススメ

  • ワキ汗が多く、衣類の汗染みが気になる方
  • ワキの匂いが気になる方
  • 手のひらや足裏が湿っていて気になる方
  • 他の部位からの代償性発汗を避けたい方

治療の流れ

多汗症のボツリヌストキシン注射の流れです。使用する製剤や注射針については「ボツリヌストキシン治療」のページをご覧ください。

STEP
ご自宅での事前準備

ワキの注射を当日希望される場合、前日~2日前にご自分でワキの毛を剃っていただきます。ワキ毛がある状態でも注射は可能ですが、剃るか短く切っていただいた方がスムーズです。

STEP
診察

施術や副作用等について医師から説明を行います。

STEP
麻酔

クリーム麻酔を行い痛みを軽減させます。ワキは20分~30分、手のひらや足の裏は40分~60分ほど麻酔をしっかりと行います。

STEP
注射

施術前に汗が出る範囲を確認します。ワキは片側20カ所、手のひらや足の裏は片側40カ所に注射を行います。

効果の持続と治療間隔

効果には個人差がありますので、以下は目安と考えてください。

施術部位効果の持続・治療間隔
ワキ3日後から効果が現れ、2週間で最大となります。
効果は50単位の注射で3~6ヶ月、100単位の注射で6~9ヶ月持続します。
1年に1回、春に100単位注射することで、年間を通して暖かい時期はワキ汗が気にならなくなります。重度の方は年に2回注射します。
手のひら3日後から効果が現れ、2週間で最大となります。
効果は100単位で3ヶ月、150単位で3~6ヶ月程度持続します。
足の裏3日後から効果が現れ、2週間で最大となります。
効果は150単位で3ヶ月、200単位で3~6ヶ月程度持続します。

副作用

副作用については、「ボツリヌストキシン注射の副作用」をご参照ください。

多汗症治療の料金

当院では、ボツリヌストキシン製剤として「コアトックス」を使用しています。

項目料金(税込)
診察料初診料 3,850円
再診料 1,650円
ワキ50単位 29,700円
100単位 44,000円
手のひら100単位 59,400円
150単位 73,700円
足の裏150単位 73,700円
200単位 88,000円
麻酔クリーム麻酔 3,300円
  • 注射には毎回診察が必要であり、診察料が別途かかりますのでご了承ください。

多汗症のボツリヌストキシン注射についての質問

ボツリヌストキシン注射の全般的なご質問、注射後のご質問については「ボツリヌストキシン注射のよくある質問」をご参照ください。

注射時の痛みはどれくらいですか?

当院では痛みを軽減するため、クリーム麻酔後に34Gの極細針*を使用して注射を行います。

*注射針はG(ゲージ)の数が多くなるほど細い針になります。

麻酔との併用で、ワキはほとんど痛みを感じずに行う事が可能です。

手のひらや足の裏は、痛みに非常に敏感な部位ですので、麻酔を行っても強い痛みを我慢する必要がございます。

注射する量は何単位がおすすめですか?

ワキは100単位、手のひらは150単位、足の裏は200単位の注射をおすすめしています。

症状が軽い場合には、ワキは50単位、手のひらは100単位、足の裏は150単位でも良いでしょう。

脇汗へのボツリヌストキシン注射の効果はどれくらい持続しますか?

効果の持続期間には個人差がございますが、通常、ボツリヌストキシン100単位の注射で、6~9ヶ月間効果が持続します。

年に1回、春から初夏に治療を受ければ、秋までシャツに汗じみができず、サラサラで快適に過ごせます。

ボトックスとコアトックスのどちらが良いですか?

多汗症治療では注射量が多くなるため、耐性(抗体)ができにくいコアトックスを推奨しています。

ボツリヌス毒素製剤の違いについては、「ボトックスの種類と比較」をご覧ください。

改善率はどれくらいですか?

95%以上の方が効果を感じます。

アラガン社のボトックスによる国内臨床試験では、両ワキの発汗量が投与前に比べて50%以上減少した方の割合は、投与後4週の時点でボトックス群96.2%、プラセボ群45.9%と報告されています5

代償性発汗は起こりますか?

代償性発汗とは、特定の部位で汗を抑えた際に、他の場所で汗が増える現象です。多汗症治療の中でも交感神経遮断術で起こりやすい副作用として知られています。

ボツリヌストキシンによる多汗症治療では、通常、代償性発汗は起こりません6。ボツリヌストキシンは注射部位にのみに作用し、他の部位の汗腺に影響を与えることがないため、安心してご利用ください。

参考文献・サイト一覧
  1. Allergan, “BOTOX onabotulinumtoxinA injection” アクセス 2020.10.23
  2. アラガン・ジャパン, “医療用医薬品:ボトックスビスタ” 添付文書情報2020年8月改訂
  3. A de Paiva et al., “Functional repair of motor endplates after botulinum neurotoxin type A poisoning: biphasic switch of synaptic activity between nerve sprouts and their parent terminals” Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Mar 16;96(6):3200-5. doi: 10.1073/pnas.96.6.3200.
  4. M. Shibasaki et al,. “Botulinum toxin abolishes sweating via impaired sweat gland responsiveness to exogenous acetylcholine” Br J Dermatol. 2009 Oct; 161(4): 757–761. doi: 10.1111/j.1365-2133.2009.09248.x
  5. 大嶋 雄一郎 他, “原発性腋窩多汗症患者に対する A 型ボツリヌス毒素製剤の治療評価” 西日本皮膚科. 2013;75:357-364
  6. Krogstad AL, Skymne A, Pegenius G, Elam M, Wallin BG. No compensatory sweating after botulinum toxin treatment of palmar hyperhidrosis. Br J Dermatol. 2005 Feb;152(2):329-33. doi: 10.1111/j.1365-2133.2004.06255.x. PMID: 15727647.

ボツリヌストキシン治療の関連ページ-Related Pages-

目次
error: