ニキビと美肌のための正しい洗顔

正しい洗顔方法は美肌の基本ですが、洗顔を過度に行うことが必ずしも美肌につながるわけではありません。

特に現代人は、広告の影響や清潔志向からくる誤った概念に影響を受け、過剰な洗顔をしていることがあります。

目次

洗いすぎの問題

ほとんどの人が顔を過剰に洗っています。毎日最低でも朝晩の2回、メイクを含めると3回以上も洗顔を行っています。ニキビに悩む人たちの中には、1日に5回や6回も何度も洗顔をし、肌を清潔に保とうと努力している方がいます。これは皮脂や汚れがニキビの原因とされ、アクネ菌を洗顔で取り除けると考えている「医学的に誤った概念」から生まれています。

角質バリアを壊す

ニキビに悩む人は清潔志向になりがちで、殺菌作用のある洗浄剤や脱脂力の強い洗顔料を使用し、枕カバーを頻繁に洗濯・消毒することがあります。しかし、これらの洗浄剤は肌に強い刺激を与え、角質のバリアを破壊します。角質は肌の保湿や水分保持に重要な役割を果たしており、頻繁な破壊は水分保持能力を低下させ、乾燥を引き起こし、皮脂分泌を促進して毛穴を詰まりやすくする悪循環を招きます。

肌の常在菌を乱す

皮膚には1000種類以上の細菌が存在しますが1、殺菌作用のある洗浄剤の使用はこれらの菌のバランスを崩し、耐性菌などの問題を引き起こす可能性があります。表皮ブドウ球菌などの常在菌が減ると、肌は弱酸性を保つことが難しくなり、アルカリ性に傾きます。アルカリ性の環境下では悪玉菌である黄色ブドウ球菌が増殖し、これはニキビやアトピーなどの炎症を悪化させる可能性があります。

くすみや肝斑の原因に

肌への刺激が強い成分を使用したり、擦ったり、マッサージしたりすることで、肌のくすみや肝斑が生じやすくなります。

洗顔料は本当にニキビを防ぐ?

化粧品の分野では、薬事法上、唯一「ニキビ予防」を宣伝できるものは、洗顔料だけです。洗浄により、ニキビやあせもを予防するという広告が認められています。

長年ニキビに悩む患者さんを診察していますが、ほとんどの方はしっかりと洗顔をしているのにニキビはでき続けますし、ホームレスの方の顔を見ても、日焼けはしているもののニキビがない方は沢山おられます。

洗顔料とニキビのエビデンス

洗顔料は、本当にニキビを予防してくれるのでしょうか?洗浄剤を使用しないと、ニキビが悪化してしまうのでしょうか?

洗顔料がニキビに有益かどうかを調査したシステマティックレビューがあります2。671人を対象とした、 洗顔頻度、無添加石鹸やクレンジングバー、抗菌洗浄剤、ピーリング石鹸(AHA、サリチル酸)などを調べた 14の前向き研究の分析では、洗顔を推奨できるような明確なデータは得られなかったと報告されています。

洗顔料がニキビに有用であるという明確なエビデンスは実はないのです。

正しい洗顔とは

当院が推奨する正しい洗顔方法を記載します。

洗顔の頻度

「1日2回洗顔しなさい。」という言葉をよく聞きますが、この指針は夜に1回は日中の汚れを落とし、朝には寝ている間に分泌された皮脂などを取り除いて肌をさっぱりと保つためのものです。しかし、肌質や状態によっては、1日2回の洗顔が多すぎる場合もあります。

皮脂が多い方

皮脂が多い方でも、洗顔料を使った洗顔は、1日に多くても2回までが適しています。

顔のあぶらが過剰で、日中に顔を洗わないと目がしみると感じる場合は、洗顔料を使わずに、水かぬるま湯で都度洗顔してください。

皮脂が少ない方

皮脂が少ない方や乾燥肌の方は、洗顔料やクレンジングを使用した洗顔は1日1回で十分です。つまり、夜だけに洗顔料やメイク落としを使用し、朝はぬるま湯での洗顔で良いでしょう。

特に乾燥が強い場合には、水かぬるま湯だけでの洗顔を選択する日を設け、洗顔料を使用する頻度を週に数回に抑えることも考慮してください。

洗顔料の種類

通常の石けんはアルカリ性が強く、強力な洗浄力と脱脂力を持っています。そのため、当院では肌のバリア機能を損なわず、低刺激な「タウリン系界面活性剤(ココイルメチルタウリンNa)」をおすすめしています。

アミノ酸系界面活性剤は、通常の石けんと比較して洗顔後に肌の天然保湿因子(NMF)を保持し、低刺激であると報告されていますが3、タウリン系はアミノ酸系よりもさらに肌に優しい洗浄成分です。1日複数回の洗顔でも、肌にほとんど負担をかけることなく使用できます。

タウリン系界面活性剤は肌にマイルドであるものの、皮脂汚れを落とすには十分な洗浄力を持っています。そのため、皮脂が多い方にも十分に洗浄成分としての役割を果たします。

クレンジングの種類

ニキビ肌の方には、オイルフリーのクレンジングが適しているとされています。そのため、ニキビができやすい方々は、ジェルクレンジングやウォーターベースのクレンジングを選ぶことが一般的です。

しかし、クレンジングは洗い流すものであり、オイルクレンジングを使用しても、適切な成分設計でしっかりと洗い流せるものであれば、ニキビに悪影響を与えることはありません。

また、メイク落ちが悪いクレンジングを使用していると、メイクを落とすために肌を擦る時間が多くなり、それだけ肌のバリアを壊し、肌荒れの原因になる可能性があります4。メイクと良く馴染むオイルクレンジングを使用し、さっと落としてしまうほうが肌への負担は格段に少なくなります。

洗顔方法

洗顔の際は、泡で優しく洗い、ゴシゴシこすらないように心がけましょう。肌に対する刺激はくすみや肝斑の原因となり得ます。すすぎも丁寧に行い、できれば10回以上行うことをおすすめします。

福山雅治さんやタモリさんは、ご年齢を考えると非常にお肌がきれいですね。彼らは入浴時にシャンプーや石けんを殆ど使わないと言いますが、「洗いすぎない」ことから正しいスキンケアを実践していると言えるでしょう。

参考文献・サイト一覧
  1. Elizabeth A. Grice, Heidi H. Kong, (2009). “Topographical and Temporal Diversity of the Human Skin Microbiome.” Science. 324 (5931): 1190-1192. doi:10.1126/science.1171700. PMC 2805064. PMID 19478181
  2. Stringer T, Nagler A, (2018). “Clinical evidence for washing and cleansers in acne vulgaris: a systematic review.” J Dermatolog Treat. 2018 Nov;29(7):688-693. doi: 10.1080/09546634.2018.1442552. Epub 2018 Feb 25. DOI: 10.1080/09546634.2018.1442552 PMID: 29460655
  3. 押村英子 (2012). “ヒトと地球にやさしく洗う-低刺激・天然系洗浄用界面活性剤の開発と応用-“ J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 46(3): 183-187.
  4. Washing away at acne.” Br Med J. 1976 Oct 9; 2(6040): 834–835. PMID: 136284

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