酒さ(しゅさ)とは?
酒さは、顔の中央部(頬、鼻、額、顎)に現れる慢性的な炎症性皮膚疾患です。30歳以降の成人に多く見られ、赤み、丘疹(ぶつぶつ)、膿疱、毛細血管拡張などの症状が特徴的です。
従来は「赤ら顔」として軽視されがちでしたが、適切な治療により症状の改善が期待できる疾患です。肌のクリニックでは、欧米のガイドラインに基づいた最新の酒さ治療を提供しています。
酒さの主な原因
酒さの発症には複数の要因が関与しています。
体質的要因
- 遺伝的素因
- 血管の過敏性
- 自己免疫システムの異常
環境要因
- 紫外線
- 気温の変化
- ストレス
- 特定の食品(辛い物、アルコール、熱い飲み物)
- 化粧品やスキンケア製品
微生物要因
- ニキビダニ(デモデックス)の増殖
- 細菌感染
酒さの4つのタイプ
酒さは形態学的特徴に基づいて4つの主要なサブタイプに分類されます。
1. 紅斑毛細血管拡張型酒さ(ETR型)
- 持続的な顔面中央部の赤み
- 毛細血管の拡張
- ほてり感やヒリヒリ感
- 一過性の紅潮(フラッシング)
2. 丘疹膿疱型酒さ(PPR型)
- 赤いぶつぶつ(丘疹)
- 膿を持った発疹(膿疱)
- ニキビと似た症状(合併も多い)
- 顔面の紅斑を伴う
3. 肥厚型(鼻瘤型)酒さ
- 鼻の肥大化(酒さ鼻・鼻瘤)
- 皮脂腺の肥大と皮膚の厚み増加
- 結節状の外観を呈する
- 主に男性に見られる
4. 眼型酒さ(Ocular Rosacea)
- 目の充血や乾燥感
- まぶたの炎症(眼瞼炎)
- ドライアイ症状
- 異物感や灼熱感
酒さ分類における重要な点
- 実際の臨床では、多くの患者さんは複数のサブタイプの特徴を同時にもちます。
- 症状が進行すると、サブタイプ間の移行や合併が起こる場合があります。
- 各症状は軽度から重度まで様々な程度で現れます。
肌のクリニックの酒さ治療
当院では、主に皮膚科の保険診療で改善しなかった酒さの治療を行っており、欧米基準の最新治療をすべて自費診療で提供しています。酒さは体質的な要因が大きく、長期に付き合っていかなければなりません。完治ではなく長期寛解(症状を長く落ち着かせる状態)を目指しましょう。
当院が重視する酒さ治療のポイント
- 皮膚科で改善しない酒さの治療
保険皮膚科でなかなか改善しない酒さを中心に、欧米のガイドラインや最新の知見に基づいて最適な治療を実施 - 定期検査と安全管理
医師による定期診察で肌の状態と副作用を確認し、定期検査による安全管理を徹底 - 体の中からの治療
塗り薬やレーザーといった外側からのケアだけでなく、飲み薬で体の内側から改善 - 他の肌トラブルも総合的に治療
酒さと合併しやすい敏感肌、肝斑(くすみ)、ニキビ等も含めて肌全体を診て複合的に改善
治療の流れ
酒さ治療薬
当院で扱う薬剤は、国内では未承認薬や適応外処方の薬剤が多く、医薬品被害救済制度の対象外となります。
イベルメクチンクリーム|酒さの第一選択外用薬
イベルメクチンクリームは、酒さ治療の中でも特に丘疹膿疱型酒さに効果が高いとされる外用薬です。イベルメクチン1%を配合し、欧米では第一選択薬として広く使用されています。
特徴
- デュアルアクション(デモデックス駆除効果+抗炎症作用)
- ロゼックスゲルやアゼライン酸より高い有効性
- 特に丘疹膿疱型の酒さに有効
価格
1本 30g 2,970円(税込)
使い方
1日1回、夜に洗顔後、スキンケアの前に患部に塗布。
イベルメクチン内服(ストロメクトール)|全タイプの難治性酒さに
イベルメクチンの内服薬は、全てのタイプの酒さに対して一定の有効性が報告されている治療法です。特に皮膚常在ダニ(デモデックス)の関与が疑われる場合に効果的で、たった1回の内服でも数ヶ月にわたる持続効果が期待されます。
使用するストロメクトール錠は国内承認薬ですが、酒さへの使用は適応外処方となります。
特徴
- 全タイプの酒さに効果を発揮
- 単回投与(1回の内服)で3~6ヶ月以上の効果
- デュアルアクション(デモデックス駆除効果+抗炎症作用)
価格
ストロメクトール 3mg 1錠 1,320円(税込)
使い方
医師の指示のもと、体重に応じて1回4~6錠を空腹時に服用。
▶詳しくは:イベルメクチンの飲み薬は酒さに効く?
イソトレチノイン内服|難治性酒さやニキビ様発疹に
イソトレチノイン(アキュテイン)は、ニキビ治療薬として用いられている飲み薬ですが、近年酒さに対しても高い有効性が報告されています。特に重症度が高い酒さやなかなか治らない難治性の酒さに対して効果が期待できます。
特徴
- 低用量で酒さに効果を発揮
- レーザーや抗生物質より高い有効性
- 皮脂腺の縮小や免疫の働きを調整
価格
- イソトレチノイン 10mg 30日分 7,920円(税込)
- イソトレチノイン 20mg 30日分 9,900円(税込)
使い方
体重や重症度に応じて6-8ヶ月継続し、その後低用量で寛解を維持。
ホルモン療法(ピル・スピロノラクトン)|女性の酒さ・ニキビに有効
ホルモン療法は、女性に多い周期的な酒さ悪化や、ニキビとの合併症例に有効とされる治療法です。ピルやスピロノラクトンは、抗アンドロゲン作用によって男性ホルモンが皮脂腺を刺激することで起こる炎症を抑えます。
特徴
- 周期的に悪化する女性の酒さに効果的
- 丘疹膿疱型酒さやニキビの合併例で有効
価格
- ピル 1シート 28日分 2,420~2,970円(税込)
- スピロノラクトン 25mg 1錠 44円(税込)
使い方
医師の指示通り。
▶詳しくは:ホルモン治療
ロゼックスゲル/メトロニダゾールゲル|酒さの基本治療に使われる外用薬
ロゼックスゲルおよびメトロニダゾールゲルは、ニキビダニ(デモデックス)の関与がある酒さに対して、抗菌・抗炎症作用を通じて赤みや炎症を緩和する定番の治療薬です。ロゼックスゲルは国内承認薬、メトロニダゾールゲルはジェネリック品で適応外処方薬です。
特徴
- 朝晩2回の使用で継続的な改善効果
- ニキビダニ(デモデックス)駆除
価格
- ロゼックスゲル 15g 2,420円(税込)
- メトロニダゾールゲル 50g 4,730円(税込)
使い方
1日2回、朝晩の洗顔後、スキンケア前に患部に塗布。
▶詳しくは:ロゼックスゲル / メトロニダゾールゲル
ブリモニジンゲル0.33%|酒さによる赤みを速やかに改善
ブリモニジンゲル(0.33%)は、酒さに伴う顔の赤み(紅斑)を即効で抑える外用薬です。α2受容体作動薬として血管収縮作用があり、外気温の変化や緊張・飲酒などによる一過性の紅潮も改善します。欧米では「ミルバソゲル」として広く使用されています。
特徴
- 朝1回塗るだけで8-10時間赤みをカバー
- 飲酒後や気温差による突然の赤みにも有効
- 特に血管拡張による赤ら顔に効果的
価格
ブリモニジンゲル 15g 4,950円(税込)
使い方
1日1回、朝に洗顔後、スキンケアの前に患部に薄く塗布。
ブリモニジン点眼液0.1%|眼型酒さの充血を抑える目薬
ブリモニジン点眼液(0.1%)は、眼型酒さによる目の充血や違和感に対して速やかに効果を発揮する点眼薬です。先発品は「アイファガン」として知られ、市販薬では「マイティアアルミファイ」などに応用されています。
特徴
- 1滴で数時間、目の充血をスッキリ改善
価格
ブリモニジン点眼液 0.1%(5mL)1,980円(税込)
使い方
1日2回まで、片目に1滴ずつ点眼。点眼後は目頭を軽く押さえて1分間閉眼。
インデラル(プロプラノロール)|赤み・ほてり(フラッシング)の緩和
インデラル(一般名:プロプラノロール)は、交感神経の過剰な反応を抑えることで、酒さに伴う顔の赤みやほてり(フラッシング)を軽減する内服薬です。β遮断薬に分類され、特に緊張やほてりで急に赤くなるタイプに効果的です。また、いわゆる「あがり症」を改善させるために処方されることもあります。
こんな方におすすめ
- 緊張や温度変化などで顔が急に赤くなる
- フラッシング(急激なほてり)を繰り返す
- 赤面症や、外出や人前での赤みが気になる
特徴
- 服用30分後に効果が出現、4~6時間ほど持続
- 交感神経を穏やかに抑え、赤み・ドキドキ感を軽減
価格
インデラル10mg 30錠 3,300円(税込)
服用方法
赤みが気になる30~60分前に1錠(10mg)を内服
ロングパルスヤグレーザー|血管拡張による赤ら顔にレーザー治療
ロングパルスYAGレーザーは、酒さによる毛細血管拡張型の赤ら顔に対して、根本的な改善を目指す医療用レーザー治療です。波長1064nmの光が皮膚の深部に届き、拡張した血管を選択的に熱変性・収縮させることで、赤みの軽減と肌のトーン改善が期待できます。
特に、イソトレチノイン内服と併用することで相乗効果が得られます。
2つのタイプから選択
- マイルド:痛みが少なく高い有効性。ダウンタイムほぼなし。
- 強力:痛みは強めでダウンタイム1日程度だが、より高い効果。脱毛効果も期待できる。
価格
- マイルドロングパルス 半顔(両頬)8,580円(税込)
- 強力ロングパルス 半顔(両頬)16,280円(税込)
治療スケジュール
- マイルド:2週間に1回×10回
- 強力:1ヶ月に1回×5回
- 赤み改善後も、効果を維持するために頻度を落とした定期照射を推奨
▶詳しくは:赤みに対するレーザー治療
その他の治療薬
酒さ治療のよくある質問
各種治療薬についてのよくある質問は下記をご参照ください。
▶イベルメクチンクリームについてのよくある質問
▶イソトレチノイン治療についてのよくある質問
▶ホルモン療法についてのよくある質問
▶ロゼックスゲルについてのよくある質問
▶ブリモニジンゲルについてのよくある質問
▶ブリモニジン点眼液についてのよくある質問
▶赤みのレーザーについてのよくある質問
- 保険は効きますか?
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いいえ。当院の酒さ治療は、すべて自費診療です。一部保険適用薬も扱っておりますが、混合診療が認められていないため、保険適用薬についてはお近くの保険皮膚科でご相談ください。また、未承認薬や適応外処方の薬剤は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となることをあらかじめご承知おきください。
- 複数の塗り薬を使うときの順番は?アゼライン酸との併用はできますか?
-
以下の順番での使用が推奨されます。
- ブリモニジンゲル
- ロゼックスゲル
- アゼライン酸
- イベルメクチンクリーム
- 各種スキンケア(保湿など)
アゼライン酸との併用も可能です。アゼライン酸は、本来はスキンケアの前に塗布しますが、日本ではアゼライン酸が化粧品成分として扱われているため、刺激を避ける目的で「保湿後」に塗るよう案内されることもあります。
- 治療期間はどのくらいですか?
-
酒さのタイプや重症度により異なりますが、多くの場合、2~3ヶ月で改善が見られます。完治ではなく長期寛解(症状を長く落ち着かせる状態)を目指します。
参考文献・サイト一覧
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