目のクマ治療– Treatments for Dark Circles –

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目のクマの原因

目の下のクマの画像

目の下のクマの原因は大きく分けて以下の3つに分類されます。

  1. 表皮や真皮の色素沈着
  2. 皮膚の菲薄化による眼輪筋や静脈の透過
  3. シワやたるみ(eye bag)による影

一般的には青クマ、茶クマ、黒クマ、赤クマと色で分類されることもあります。

同じ色素沈着が原因のクマであっても、メラニン色素量や存在する深さ、皮膚の厚さなどによって色が違って見えるため、色による分類はあまり正確ではありませんが、原因を推測するのに役立ちます。

30代以降のクマは、加齢的な要因も合わさって複合的な原因で起こります。

色素沈着によるクマ

目の下のクマ
色素沈着+静脈の透過による青いクマ

目の下のクマを持っている方の多くに、真皮と表皮の色素沈着があることが報告されています。この色素沈着は先天性のものがほとんどですが、目を擦ったりする物理的な刺激や、紫外線、肝斑などの影響で後天的にできることもあります。

表皮にある色素沈着は若いうちからでも目立ちやすく、真皮にある色素沈着は加齢で目立ってきます。20代までは真皮層のコラーゲン繊維が豊富で、皮膚に厚みがありますが、加齢により真皮のコラーゲンが減少すると、もともと真皮に存在した色素沈着が透けて見えやすくなるからです。早いと10代後半から目立ってくる方もいます。

色素沈着によるクマの治療

色素沈着によるクマの治療は、色素沈着そのものを除去していくとともに、表皮や真皮の厚さを増す治療を行います。

トラネキサム酸(内服)

目の下から頬にかけて肝斑(くすみ)がある場合があります。その場合、トラネキサム酸という美白内服薬によって治療を行います。内服を開始してから1ヶ月ほどすると、徐々にくすみが薄くなり、3ヶ月ほどで効果がしっかりと現れます。

トレチノイン ハイドロキノン

トレチノインは、肌のターンオーバーを促進して表皮の色素沈着を排出します。ハイドロキノンは、メラニン産生を抑制する美白剤のため、トレチノインとハイドロキノンの併用で、表皮の色素沈着が改善していきます。

また、トレチノインは表皮のケラチノサイト増殖、真皮のコラーゲン産生促進作用があり、皮膚の密度を上げて真皮の色素沈着や血管を透けにくくする作用や小ジワを改善する作用もあります。

Qスイッチヤグレーザー

目の下にシミやそばかすなどが存在している場合は、まず上層である表皮の色素性病変をレーザーで除去します。レーザー後は2週間UVカットのテープ保護が必要です。1ヶ月後にレーザーの炎症後色素沈着のため、一時的に濃くなることがありますが、半年以内に改善します。

太田母斑やADMなど、表皮と真皮にメラニンが存在する場合には、トレチノインハイドロキノンやレーザーで表皮内のメラニンを減少させた後、1064nmという深くまで届く波長に変更して、肌の奥のメラニンをレーザーで分解します。点状の内出血や赤みなどが1週間程度続き、照射後1ヶ月程度で以前の色調より一段濃くなって、その後4~6ヶ月で徐々に薄くなっていきます。通常、複数回の照射が必要であり、4ヶ月以上の間隔を空けて4~5回程度照射を行います。

ダブル照射

トーニングレーザーとロングパルスヤグレーザーを同日に照射し、メラニンの排出を促すとともに、薄くなった真皮層に熱エネルギーを加え、コラーゲンの産生を促して真皮を厚くするレーザーです。

約2週間間隔で10回ほど行います。ダウンタイムが無いように出力を調整していますので、術後に多少赤くなることはありますが、カサブタになることはなく、すぐにメイクも可能です。

単独での効果は弱く、トレチノインハイドロキノンを2ヵ月しっかりと行ってから開始することをおすすめします。

アイメイクやまつ毛育毛剤に注意

目のクマの中に、アイメイクやスキンケア製品による接触性皮膚炎や、まつ毛育毛剤(クラッシュビスタやルミガン等)による色素沈着があります。その場合、原因となる化粧品や薬剤の使用を控えることが必要です。

眼輪筋や静脈の透過によるクマ

眼輪筋の透過による赤いクマ

目の下は皮膚が非常に薄く、皮下脂肪もほとんどなく、真皮のすぐ下には眼輪筋という目を開いたり閉じたりする筋肉が存在しています。

加齢により真皮のコラーゲン・エラスチンといった細胞外マトリックスがなくなると、目の周囲の皮膚はさらに薄くなり、眼輪筋の筋肉の色(赤色)が透けて目立つようになります。

目の周囲の血管(静脈)も透けて見えるようになり、青クマが出現します。

眼輪筋や静脈の透過によるクマの治療

主に真皮層を厚くする治療を中心に行います。

トレチノイン

トレチノインは、真皮のコラーゲン産生促進作用があり、真皮層を厚くする目的で処方します。色素沈着がない場合はハイドロキノンは必要なく、トレチノイン単体の場合には長期に使用しても問題ありません。

目の下は皮膚が薄く、赤みやかぶれといったレチノイド反応が起こりやすいため、低濃度の0.05%から開始します。それでも反応が強い場合には、週に1~2回から徐々に肌を慣れさせていきましょう。

スネコス

スネコスは、ヒアルロン酸と6種類のアミノ酸を配合した注射剤です。自己のコラーゲンとエラスチンの生成を刺激して、細胞外マトリックスを増加させることで、真皮の密度を上げて、眼輪筋や血管を透けにくくさせます。

注射直後は腫れますが、架橋されていないヒアルロン酸のためすぐに吸収され、1日で腫れは治まります。内出血が起こった際を除けば、比較的ダウンタイムが短い注射です。真皮層に細かく打ち込むため、麻酔をしていても痛みはそれなりにあります。

効果は注射後1週間程度経過してから徐々に現れるため、1~2週間間隔でブースト注射をしていき、合計4~8回ほど治療を行います。

ダブル照射

トーニングレーザーとロングパルスヤグレーザーを同日に照射し、薄くなった真皮層に熱エネルギーを加え、コラーゲンの産生を促して真皮を厚くするレーザーです。

約2週間間隔で10回ほど行います。ダウンタイムはほとんどないレーザーです。単独での効果は弱く、トレチノインとの併用をおすすめしますが、治療間隔等は医師とご相談ください。

その他の治療

当院では行っておりませんが、自分の血液から血小板を高濃度に凝縮し、活性化させたPRP(多血小板血漿)注射も真皮層を厚くする治療として有効です。

シワやたるみによるクマ

目の周囲のシワとたるみが原因のクマ
目の周囲のたるみとシワが原因のクマ

老化によって眼球を支える「ロックウッド靭帯」がたるんで眼球が下がり、目の上は窪んで、目の下の脂肪は押し出されて膨らみます(眼窩脂肪 / eye bag)。

真皮の衰えにより目頭から眼窩脂肪に沿ってシワができます(下眼瞼の溝 / tear trough)。

頬骨の萎縮とその上の脂肪組織が減少してできる溝をゴルゴライン(medcheek grooove)と呼びます。

これらのシワや溝は影となり、特徴的なクマを作ります。

また、加齢によって細かいシワができると、皮膚が折りたたまれて単位面積あたりのメラニン色素量が増え、色が暗くなってクマのように見えます。

シワやたるみによるクマの治療

下眼瞼の眼窩脂肪(eye bag)が大きい場合には、脱脂術等の外科的治療以外の改善は難しいのが実情です。

眼窩脂肪(eye bag)が小さい例
eye bagが軽度な例
眼窩脂肪(eye bag)が大きい例
eye bagが重度な例

ここでは、eye bagが軽度、もしくは、ほとんどない場合の非侵襲的な治療を解説します。

ヒアルロン酸

eye bagがごく軽度でtear troughが目立つ場合には、tear troughをヒアルロン酸で改善することで、eye bagとの段差が解消し、クマが目立たなくなります。また、ゴルゴラインなどの中顔面のボリューム不足には第一選択で使われ、有効性が高い治療です。

ただし、浅い層に量を多く打つと「チンダル現象」といって、青く透けてクマが悪化したように見えることがあり注意が必要です。また、eye bagの小じわに打つと、eye bagが大きく目立ってしまいます。

スネコス

スネコスは、tear troughを持ち上げるほど効果はありませんが、細かい小じわに有効です。また、eye bag付近に注入しても、すぐに吸収されるため、eye bagを大きくすることはありません。

注射後1週間程度で自己のコラーゲンの産生が促進されるため、1~2週間間隔でブースト注射をしていき、合計4~8回ほど治療を行います。

ハイフ / ハイフシャワー

ハイフは、高密度超音波の熱エネルギーで真皮のコラーゲン産生を促す治療です。ハイフもハイフシャワーも目の下には2mmのプローブを使用して照射するため、目の周囲を主に治療したい場合、ハイフよりも安価なハイフシャワーがおすすめです。

ダウンタイムがないマイルドな治療のため、月に1回程度を他の治療の補助として活用します。

その他の治療

当院では行っていませんが、シワを持ち上げる力はヒアルロン酸に比較して弱いものの、チンダル現象が起こらない「ベビーコラーゲン」や「PRP」注射も効果的です。

目周りのマッサージに注意

目のマッサージを行うと、血行が良くなる反面、摩擦刺激で目のクマの色素沈着は悪化します。目の下の皮膚は薄いため、強いマッサージによって皮膚が伸ばされてシワやたるみの原因にもなります。スキンケアやメイクの際に目をこするのも同様に厳禁です。

マッサージを行う際には、軽い指圧程度に留めましょう。詳しくは、「肌質改善」のページも併せてご覧ください。

参考文献・参考サイト一覧
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