レーザーによるシミ取り治療の実例

目次

レーザーによるシミ取り

シミのレーザー治療は一般的になっていますので、美容皮膚科でシミを消した経験のある方は沢山おられると思います。当院の患者さんにご協力いただき、どのようにシミを治療しているか、治療後の経過、より効果的にシミを取るコツなど、実例を通して紹介していきます。

シミができる機序については、下記をご覧ください。

シミ治療の実際

まず動画をご覧ください。40秒ほどです。

Qスイッチヤグレーザーによるシミ治療

動画の患者さんのシミは、紫外線や加齢が原因で起こる「老人性色素斑」というシミです。意外にあっさり取れるんだと思われた方もいらっしゃると思いますが、レーザーで本当にあっさり取れます。

レーザーの種類

シミを取るためのレーザーは、Qスイッチレーザーを使います。

Qスイッチレーサーとは、パルス幅がナノ秒のレーザーのことです。もっとパルス幅が短いピコレーザーや、パルス幅が長いロングパルスレーザーでも老人性色素斑は取ることができます。

しかし、ロングパルスレーザーでシミを取ると、レーザーの刺激による炎症後色素沈着(戻りジミ)が起こりやすく、取れ方も悪いため、通常はQスイッチレーザー、もしくは、ピコレーザーを使うことが一般的です。

Qスイッチレーザーの中では、シミの原因であるメラニンにより選択的に作用するヤグレーザー、アレキサンドライトレーザー、ルビーレーザーの3つが使われます。

レーザーの手順

レーザー治療は、以下の手順により行います。

レーザーの手順
  1. テスト照射を行い出力を決定
  2. シミの辺縁からレーザーを照射
  3. 保護テープを貼る

たった3つの手順で治療が終了しますが、単純なようで大切なポイントがいくつかあります。

テスト照射を行い出力を決定

まずシミに1発レーザーを照射します。そうすると、当てた部分が白く変色します。これはIWP – immediate whitening phenomenonと呼ばれる現象です。

IWPが起こると、メラノサイトの中にあるメラニンを合成・貯蔵するメラノソームという小器官の選択的破壊が起こります。IWPが生じないほど弱く当てても、逆に強すぎても、炎症後色素沈着(PIH)が誘発されやすくなります [1]。

IWPがきちんと起こるかは、シミの取れやすさに関係してきますので、出力が適正かどうかを判断する指標になります。

※PIH(炎症後色素沈着)とは、肌への何らかの炎症のあとメラノサイトが刺激されて、メラニンができてシミになってしまう症状のことです。レーザー照射後の炎症によって、PIHは約4割の方に起こってきます。通称「戻りジミ」とも呼ばれます。

シミの辺縁からレーザーを照射

シミの辺縁は取り残しが多いため、一回り大きめに同心円状にレーザーを照射していきます。

外側から内側に徐々に狭めていき、隙間が空かないように細かく当てます。ただし、同じ部位にレーザーを重ね打ちすると、炎症後色素沈着(PIH)が起こりやすくなるため、なるべく重ならないようにするのもコツです。

動画の患者さんは皮膚のハリがあるため、そのまま照射していますが、ご高齢者のシミを取る場合は、片手でシワをしっかりと伸ばしながら照射することが大切です。シミがシワに重なって隠れていると、レーザー光がシミに届かなくなるためです。

レーザー光は直進するので、ハンドピース(レーザーの先端部分)を常に真っ直ぐに保つことも重要です。顔の左側のシミは、左手で照射できるようにするとハンドピースを真っ直ぐに保て、なおかつ、患者さんに無理な姿勢を強いることが少なくなります。

保護テープを貼る

怪我をしたときは、昔は赤チンと絆創膏(バンソウコウ)が定番でした。

現在は、消毒はせず、赤チンもマキロンもしません。

水道水で洗い流してキズパワーパッドを貼り、傷口を乾かさないように治す「湿潤療法」が主流です。やけどをした後も、普通の絆創膏よりも湿潤療法を選択した方が、火傷跡が残りにくくなります。

レーザー後に絆創膏や軟膏処置、日焼け止めタイプのコンシーラーだけの施設もありますが、当院のデータでは、ドレッシング材と呼ばれる、湿った環境を保てるテープを使うほうが、圧倒的にPIHが起こりにくく、経過が良くなります。

当院では、ドレッシング材として「エアウォールUV」と「ハイドロコロイドパッチ」を採用しており、PIHは全体の2割未満と少なくなっています。

エアウォールUVの特徴は、透明で目立たない、紫外線をしっかりカットしてくれる、薄くて貼っていても違和感がない、上からメイクも可能など良いこと尽くめです。

ハイドロコロイドパッチは、キズパワーパッドの医療用のものと考えていただいて差し障りありません。エアウォールUVと比較して厚みも色もありますが、防水で剥がれにくく、後々出来てくるカサブタもテープの色で隠せるため、患者さんの希望によってはこちらを採用しています。

エアウォールUV

上の写真は、患者さんのレーザー照射直後のものです。青矢印のシミの上にエアウォールUVが貼られているのが分かりますでしょうか?実際に見ても、ほとんどの人は気づかないほど薄いテープです。

デメリットとしては、透明であるが故、テープの下に出来たかさぶたが透けて見えてしまうことです。大きなシミを消す場合は、かさぶたが目立つため、透明なエアウォールUVよりも、半透明のハイドロコロイドパッチを使うほうが良いでしょう。

最も大切なことは、保護テープをできるだけ長く貼りっぱなしにしておくことです。10日以上、できれば2週間貼っていただいたほうが、綺麗に治ります。テープを頻繁に剥がしたり、かさぶたを取ってしまったりすると、シミが戻りやすくなりますのでご注意ください。

レーザー前後の経過

今回の治療では、お化粧でも隠れにくい大きなシミ2箇所の治療を希望されました。

レーザー前

シミレーザー前の写真
シミレーザー前の写真

治療前の写真です。赤い矢印の2箇所のシミを治療します。

レーザー直後

シミレーザー直後の写真
シミレーザー直後の写真

レーザー治療直後の写真です。シミの部分が白くなるIWPという現象は、レーザー照射後約10分で消失します。

照射後1分ほどすると、照射した辺縁から周囲が、蕁麻疹のように赤くむくんできます(浮腫性紅斑=ふしゅせいこうはん)。写真でも見られるこの赤みと腫れは、翌日にはかなり軽減します。

エアウォールUVを貼っていますが、テープが貼ってあるかどうかわからないほど目立ちません。

2週間後の写真

シミレーザー2週間後の写真
シミレーザー2週間後の写真

レーザーを照射してから、2週間後の写真です。指導を守って、2週間しっかりと保護テープを貼っていてくれたおかげで、きれいにシミが取れています。

赤みがかった白い肌が生まれてきますが、この赤みや白さは、徐々に周囲の肌色に馴染んできます。

老人性色素斑の場合、一回で取れることが多いのですが、濃いシミや大きなシミは一度で完全に取り切れないこともあり、その場合は半年後に再度レーザー照射が必要となります。

逆に色が薄すぎるシミもレーザーに反応しにくいため、濃くなるまで待ってから治療をすることもあります。

戻りジミが起こったとしても、半年で99%が消失しますので、あまり心配しないようにしましょう。ただし、半年経って消えないシミには、再照射が必要です。戻りジミを早く消したいという方へは、トレチノイン・ハイドロキノン療法やレーザートーニングを行います。

老人性色素斑では、1~2回レーザー治療をすれば、ほとんど気にならないレベルにシミを除去することが可能ですので、今まで何年も美白ケアを頑張っていた患者さんは、あっさりとシミが取れて驚く方もいらっしゃいます。

ただし、シミは紫外線や加齢による皮膚老化で起こりますから、時間経過でシミの元のメラニン(メラノソーム)が徐々に表皮に溜まってくれば、再発します。5年以上再発がない方もいれば、皮膚老化が顕著な方では1~2年で再発することもあり、その場合には再度照射が必要です。

シミレーザーの料金

シミの治療費は5mmあたり税込4,400円です。10mmのシミの場合8,800円、15mmのシミの場合13,200円です(診察料、テープ代は別途)。個数による割引等もございます。

「1mmあたり500円」と安い価格を広告に出しているクリニックもありますが、10mmのシミなら500円✕10mm=5,000円で取れると思って行くと、1平方ミリメートルあたり500円で、直径10mmの場合は10mm×10mm=100平方ミリメートルで5万円という話も聞きますので、診察時に料金を確認されることをおすすめします。

化粧品や医薬部外品では、老人性色素斑は消えませんので、何年もシミに効果のない美白化粧品を使ったり、シミが消えるという怪しい化粧品を使い続けていた患者さんには、とても喜ばれる治療です。

価格などについて詳しくは、ホームページをご覧ください。

当院では、最近、男性でもシミを取る方が増えてきました。夏にレーザーをしても、エアウォールUVが紫外線をカットしてくれるので問題ありません。

手軽に皮膚科でシミが取れる時代になったと言えます。長年シミにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

参考文献・サイト一覧

1.渡辺 晋一 (1998), “レーザー治療の原理と応用” 日本レーザー医学会誌 特集/皮膚 ・形成外科とレーザー (JJSLSM) 第19巻 第4号(1998) 249-258

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