グルタチオンの美白効果

グルタチオンと美容

グルタチオンは、その強力な抗酸化作用と抗メラニン作用によって、老化予防や皮膚の美白などの美容目的で使用されています。

韓国やフィリピン、アメリカでも美容目的でのグルタチオン点滴が人気ですが、その有効性と安全性はどうなのでしょうか。

グルタチオンとは

グルタチオンは3つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)が結合したペプチドです。体内でも肝臓で合成されており、魚や野菜、果物にも含まれています。

酸化型と還元型がありますが、細胞内のグルタチオンはほぼ還元型であるため、通常、「グルタチオン」はSH基(チオール基)を持つ還元型(Glutathione-SH, GSH)を指します。

グルタチオンの働き

抗酸化作用

グルタチオン(GSH)は、チオール基(SH基)を持っており、そのチオール基を用いて、生体内で活性酸素種を中和して消去します [1]。

外因性抗酸化物質であるビタミンC、およびビタミンEを還元型(活性型)に維持して、抗酸化作用を発揮する手助けをします [2, 3]。

つまり、グルタチオンは体内で作られる抗酸化物質として働くだけでなく、外から取り入れられた抗酸化物質と協力して、「体をさびさせないようにする重要な役割」を担っています。

解毒作用

グルタチオンは、様々な薬物や毒物(解凍系というエネルギー生産系から生じるメチルグリオキサールなど)と結合して、胆汁中や尿中に排出します [4, 5]。

抗メラニン作用

メラニン色素細胞は「チロシナーゼ」という酵素の働きで、チロシンからドーパ、ドーパキノンを経て、メラニンを作ります。

グルタチオンは、このチロシナーゼという酵素の働きを阻害することによって、メラニンの形成を防ぎます [6, 7, 8]。

フェオメラニンの合成

メラニンにはユーメラニンとフェオメラニンの2種類があります。ユーメラニンは黒褐色、フェオメラニンは黄色~赤色のメラニンです。

肌や髪の色は、ユーメラニンとフェオメラニンの割合の多さで決まっています。 白人はフェオメラニン優位で、黒人はユーメラニン優位です。

グルタチオンは、メラノサイト内で黒褐色のユーメラニンから黄色~赤色のフェオメラニンへシフトすることで、フェオメラニンの合成に積極的に関与しています [9, 10]。

美白効果

グルタチオンはメラニンの形成を抑制し、明るいフェオメラニンの合成を促進するため、皮膚白色化に効果的と考えるかもしれませんが、in vitroでチロシナーゼ阻害やメラニン抑制を示さなかったという報告もあり [11]、世界中の皮膚科やサプリメント、化粧品などの美容業界で使用されている割には、エビデンスははっきりしません。

グルタチオンの塗布

グルタチオンを肌に塗った場合、美白効果はあるのでしょうか。

30歳~50歳の女性を対象とし、酸化型グルタチオン(GSSG)が2%配合されたローションを顔の半分に、もう片側にプラセボローションを10週に渡って塗布した試験では、GSSGを塗布した側のメラニン指数が有意に低く、皮膚の白色化に効果的であったと報告されています [12]。

グルタチオンの内服

経口グルタチオン(グルタチオンの飲み薬)の美白効果については、3つ論文を発見することができました。

タイの医学生60人を対象に、500mg/日のグルタチオン、または、プラセボを4週間内服した試験では、グルタチオン群で有意にメラニン指数が減少しました [13]。

フィリピン人女性30人を対象に、500mg/日のグルタチオントローチ錠(口の中で溶ける溶解錠)を8週間投与した試験では、メラニン指数の有意な減少を示しました [14]。トローチ錠は、胃腸を迂回して、粘膜から有効成分が吸収されるため、経口剤よりも効果的であると著者らは主張しています。

60人の女性を対象に、還元型グルタチオン(GSH)250mg/日、酸化型グルタチオン(GSSG)250mg/日、プラセボを投与して12週間観察した試験では、GSH群、GSSG群でプラセボよりもメラミン指数は低くなり、 40歳以上の被験者では、紫外線を照射した皮膚部位のメラニン指数は、プラセボ群と比較してGSH群で有意に減少したと報告されています [15]。

グルタチオンの点滴

グルタチオン点滴はここ何年かで世界中で広まっており、週1回~2回で600~1,200mgの用量が推奨されています [16]。アメリカでは、ビタミンCと組み合わせてグルタチオン1,500~4,000mgの点滴投与がなされている施設もあります [17]。

グルタチオンの生物学的利用能(bioavailability, 薬剤がどれだけ全身に到達して作用するか)を考えると、点滴が最も効率が良いはずですが、美白効果を得るための量や頻度、どれくらいの効果の持続が得られるかなどについて、明確なエビデンスはありません。

グルタチオンの安全性

副作用

日本ではグルタチオンは医薬品として認可されていますが、アメリカFDAでは「一般に安全が認められるレベル」として、サプリメントとして認可されています。

グルタチオンの点滴は、日本では「タチオン注射用」として医療機関で受けることが可能ですが、その添付文書から抜粋します。

副作用
総症例数6,522例(非経口投与4,772例、経口投与1,750例)のうち、副作用が報告されたものは、24例(0.4%)で、食欲不振、悪心・嘔吐、発疹等が主なものであった。なお、静脈内注射時にアナフィラキシー様症状があらわれたとの報告がある。

日本ジェネリック株式会社「タチオン注射用」より [18]

アナフィラキシーショックは、重篤なアレルギー症状ですが、すべての薬剤に起こり得る可能性があります。経口投与と非経口投与を合わせて副作用の発現率が全体で0.4%というのは、医薬品としては非常に安全性が高いと言えます。

フィリピンFDAは美白のためにグルタチオン点滴を行うことについて、安全性が確立されていないため警告を出しています(2019年3月現在はアクセス不可)。

フィリピンでは、美容サロンやスパなどでグルタチオン点滴を受けるケースがあり、グルタチオン以外の不純物の混入、非正規品の使用、未熟で不衛生な施術による空気塞栓や感染なども問題になっている事情があります。そのため、全ての国に当てはまるものではありません。

相互作用

グルタチオンはもともと生体内にある物質であり、他の薬との飲み合わせ、相互作用は報告されていません [18, 19]。

当院の方針

グルタチオンは安価で古くから使われている薬剤であり、美容の分野で多大な金額を払ってまで大規模な試験が行われることはほとんどないため、美容医療にエビデンスを求めること自体が難しいことなのかもしれません。

経口投与(飲み薬)よりも、点滴や口腔溶解錠のほうが生体利用率が高いことが指摘されていますが [20, 21]、経口投与のグルタチオンが、血漿中のグルタチオン濃度の有意な増加をもたらすという報告もあり [22, 23, 24]、飲み薬でも十分な可能性もあります。

前述したように、実際に小規模な試験で内服のグルタチオンに皮膚白色化の効果が報告されており、飲み薬から始めても良いのではないかと考えています。

グルタチオンの内服薬の良いところは、安価であり安全性も高いことです。また、トラネキサム酸が飲めない方も飲めるという利点があります。

美容点滴では、希望者にオプションでグルタチオンを追加できるように設定しています。

また、グルタチオンの前駆体であるNアセチルシステイン、生成に必要なシステインやグリシンといったアミノ酸、相乗的に働くビタミンCのような他の抗酸化物質、グルタチオンの再生を助けるα-リポ酸 [25]などを摂取することも、美白に効果的であると考えています。

執筆 医師:岩橋 陽介

参考文献・サイト

  1. Dringen R. (2000) “Metabolism and functions of glutathione in brain.” Prog Neurobiol. 2000 Dec;62(6):649-71. PMID: 10880854
  2. R. E. HUGHES. (1964) “Reduction of Dehydroascorbic Acid by Animal Tissues” Naturevolume 203, pages1068–1069 (1964)
  3. R. W. SCHOLZ, (1989) “Mechanism of Interaction of Vitamin E and Glutathione in the Protection against Membrane Lipid Peroxidation” Ann NY Acad Sci. 570: 514–7.
  4. Rose IA, (2002) “Methylglyoxal synthetase, enol-pyruvaldehyde, glutathione and the glyoxalase system.” J Am Chem Soc. 2002 Nov 6;124(44):13047-52. PMID: 12405831
  5. Sousa Silva M, (2013) “The glyoxalase pathway: the first hundred years… and beyond.” Biochem J. 2013 Jul 1;453(1):1-15. doi: 10.1042/BJ20121743. PMID: 23763312
  6. Halprin KM, (1966) “Glutathione and human pigmentation.” Arch Dermatol. 1966 Sep;94(3):355-7. PMID: 4951818
  7. Yamamura T, (2002) “Antimelanogenic activity of hydrocoumarins in cultured normal human melanocytes by stimulating intracellular glutathione synthesis.” Arch Dermatol Res. 2002 Nov;294(8):349-54. Epub 2002 Sep 28. doi: 10.1007/s00403-002-0345-8 PMID: 12420103
  8. 松本光雄ら, (2008) “グルタチオンのメラミン合成阻害機構” YAKUGAKU ZASSHI 128(8) 1203-1207 (2008)
  9. Del Marmol V, (1996) “Cysteine deprivation promotes eumelanogenesis in human melanoma cells.” J Invest Dermatol. 1996 Nov;107(5):698-702. PMID: 8875952
  10. Jiménez-Cervantes C, (1994) “A new enzymatic function in the melanogenic pathway. The 5,6-dihydroxyindole-2-carboxylic acid oxidase activity of tyrosinase-related protein-1 (TRP1).” J Biol Chem. 1994 Jul 8;269(27):17993-8000. PMID: 8027058
  11. Bo Young Chung, (2016) “The Glutathione Derivative, GSH Monoethyl Ester, May Effectively Whiten Skin but GSH Does Not” Int J Mol Sci. 2016 May; 17(5): 629. doi: 10.3390/ijms17050629 PMID: 27128906
  12. Watanabe F, (2014) “Skin-whitening and skin-condition-improving effects of topical oxidized glutathione: a double-blind and placebo-controlled clinical trial in healthy women.” Clin Cosmet Investig Dermatol. 2014 Oct 17;7:267-74. doi: 10.2147/CCID.S68424. PMID: 25378941
  13. Arjinpathana N, (2012) “Glutathione as an oral whitening agent: a randomized, double-blind, placebo-controlled study.” J Dermatolog Treat. 2012 Apr;23(2):97-102. doi: 10.3109/09546631003801619. Epub 2010 Jun 5. PMID: 20524875
  14. Handog EB, (2016) “An open-label, single-arm trial of the safety and efficacy of a novel preparation of glutathione as a skin-lightening agent in Filipino women.” Int J Dermatol. 2016 Feb;55(2):153-7. doi: 10.1111/ijd.12999. Epub 2015 Jul 3. PMID: 26148180
  15. Weschawalit S, (2017) “Glutathione and its antiaging and antimelanogenic effects.” Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017 Apr 27;10:147-153. doi: 10.2147/CCID.S128339. PMID: 28490897
  16. Villarama CD, (2005) “Glutathione as a depigmenting agent: an overview.” Int J Cosmet Sci. 2005 Jun;27(3):147-53. doi: 10.1111/j.1467-2494. PMID: 18492181
  17. The New York Times “A New Skin Lightening Procedure Is Short on Evidence” https://www.nytimes.com/2017/08/28/health/skin-lightening-glutathione-bleaching.html 2019.03.14 アクセス
  18. 日本ジェネリック株式会社 “タチオン注射用” http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052667.pdf 2019.03.14アクセス
  19. 日本ジェネリック株式会社 “タチオン錠50mg/タチオン錠100mg/タチオン散20%” http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3922001B2041_3_03/ 2019.03.14アクセス
  20. Jason Allen, (2011) “Effects of Oral Glutathione Supplementation on Systemic Oxidative Stress Biomarkers in Human Volunteers” J Altern Complement Med. 2011 Sep; 17(9): 827–833. doi: 10.1089/acm.2010.0716 PMID: 21875351
  21. A. Witschi, (1992) “The systemic availability of oral glutathione” European Journal of Clinical Pharmacology December 1992, Volume 43, Issue 6, pp 667–669
  22. Kern JK, (2011) “A clinical trial of glutathione supplementation in autism spectrum disorders.” Med Sci Monit. 2011 Dec;17(12):CR677-82. PMID: 22129897
  23. Aw TY, (1991) “Oral glutathione increases tissue glutathione in vivo.” Chem Biol Interact. 1991;80(1):89-97. PMID: 1913980
  24. Richie JP Jr, “Randomized controlled trial of oral glutathione supplementation on body stores of glutathione.” Eur J Nutr. 2015 Mar;54(2):251-63. doi: 10.1007/s00394-014-0706-z. Epub 2014 May 5. PMID: 24791752
  25. Jiayu Zhang, (2017) “Regeneration of glutathione by α-lipoic acid via Nrf2/ARE signaling pathway alleviates cadmium-induced HepG2 cell toxicity” Environ Toxicol Pharmacol. 51: 30–37. doi:10.1016/j.etap.2017.02.022. PMID 28262510.

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