女性型脱毛症 (FPHL/FAGA) とは?

女性型脱毛症(Female Pattern Hair Loss:FPHL)は、女性に最も多く見られるびまん性脱毛症で、女性男性型脱毛症(Female Androgenic Alopecia:FAGA)とも呼ばれています。
「髪のボリュームが減った」「分け目が目立つようになった」「頭頂部の地肌が透けて見える」といった症状でお悩みの女性の多くが、このFPHLを発症しています。
女性型脱毛症の疫学データ:意外に多い若年層の発症
米国皮膚科学会(AAD)の調査によると、FPHLは10代から40代の若年層から発症し始め、30歳前後の女性では約12%、60代以上になると30%以上の女性が罹患しているとされています。日本においても30代女性の10人に1人が髪の悩みを抱えており、早期治療の重要性が認識されています。
女性型脱毛症の特徴的な症状
女性型脱毛症の主な症状は、頭頂部や分け目を中心とした髪の密度低下と毛髪の細小化です。男性型脱毛症(AGA)と同様に、後頭部の症状は比較的軽度にとどまるのが特徴です。
女性型脱毛症の主な原因:ホルモンバランスと毛周期の変化
健康な状態では、頭髪の85~90%は成長期にあり、2~6年かけてゆっくりと成長します。残りの10~15%は退縮期から休止期を経て、約3ヶ月で自然に抜け落ちます。
女性型脱毛症では、この毛周期が短縮され、成長期が短くなることで細く短い毛が増加します。主な原因として、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)に対する毛包の感受性が高まることが考えられています。さらに、ピル服用、妊娠や産後のホルモンバランスの変化も女性型脱毛症を引き起こす要因となります。
専門医による検査・診断方法
女性型脱毛症は通常、詳細な問診と視診により診断可能です。より精密な診断を行う場合は、以下の検査が実施されます:
ダーマスコピー検査
ダーマスコピーでは、脱毛が多いエリアの20%以上に毛幹の太さの違いが認められることや、軟毛の増加などで判断します。
引っ張りテスト(Hair pull test)
患部の毛束をゆっくりと引っ張り、うぶ毛や軟毛が抜けるかどうかを確認します。休止期脱毛症では成長が終わった太い毛が多く抜けるのに対し、FAGAでは短い毛や細い毛が半数近く抜ける傾向があります。
血液検査
ホルモン異常、甲状腺機能障害、フェリチン値低下、ビタミンD不足、多嚢胞性卵巣症候群(PCOs)など、薄毛の原因となる可能性のある疾患を確認するための検査を行うことがあります。
- 多毛(体毛が濃い
- 肥満傾向
- ニキビの増
- 不正性器出
- 月経不
- 乳汁分
- 不妊
- 高血糖
女性の薄毛治療:エビデンスに基づいた効果的な治療法
女性型脱毛症の治療症例
40代女性。当院でスピロノラクトン+ミノキシジルタブレットによる薄毛治療を行った方の症例写真です。ミノキシジルタブレットによる治療では、半年ほどで髪の毛がしっかり発毛してきます。同時に体毛も濃くなりますが、効果が出ている証拠でもありますので、あまり気にしないようにしていただいています。どうしても気になる方は、「医療脱毛」もご検討ください。
標準治療
女性型脱毛症の標準治療では、男性ホルモンを抑えて脱毛を抑制する「スピロノラクトン」と発毛を促進する「ミノキシジル外用剤」を併用した薬物療法を行います。症状の程度や原因によっては低用量ピルを併用することで、より効果的な治療が可能です。
ピルやスピロノラクトンの効果や副作用ついては、ホルモン治療によるニキビ治療のページをご参照ください。
強力治療(ミノキシジルタブレット)
中等度以上の方、薄毛の進行が気になる方、強い発毛効果を希望する方には、ミノキシジルタブレットを低用量で使用します。副作用管理のため定期的な検診を必須としています。
ミノキシジル外用剤やタブレットについての詳細は、男性型脱毛症(AGA)治療のページをご参照ください。
補助療法:プラセンタ注射
プラセタン注射は、美容目的の補助療法として髪や肌のアンチエイジング効果をもたらします。薄毛治療との併用で相乗効果が期待できます。
40代以降の女性限定治療:フィナステリド
妊娠の予定がない40代以降の女性には「フィナステリド」を処方する場合があります。男性型脱毛症治療で実績のある薬剤ですが、女性への使用は厳格な条件下で行います。詳しくは女性の薄毛にフィナステリドは効果的?のページをご覧ください。
女性型脱毛症治療の料金
各種薬剤の料金
薬剤 | 料金(税込) |
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スピロノラクトン25mg | 30日分(60錠)2,640円 |
低用量ピル | 28日分(1シート)2,420~2,970円 |
ミノキシジル外用剤2% | 1本 3,300円 |
ミノキシジル外用剤5% | 1本 4,400円 |
ミノキシジル内服薬2.5mg | 30日分(30錠)3,960円 |
ミノキシジル内服薬5mg | 30日分(30錠)4,620円 |
- ミノキシジル外用剤は1本(55mL)で約1ヶ月分です。
- 各種薬剤は国内では未承認薬であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
- ミノキシジルは犬や猫に毒性があります。ペットが薬液を舐めたり、薬液がついた手でペットを触らないように十分ご注意ください。
標準治療の料金
スピロノラクトン50mg/日とミノキシジル外用剤2%を組み合わせた場合の治療費用例です。
初診時(2か月分)
項目 | 料金(税込) |
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初診料 | 3,850円 |
薬剤 | ・スピロノラクトン 120錠 5,280円 ・ミノキシジル外用剤2% 2本 6,600円 |
検査 | 血液 2,948円 |
合計 (2ヶ月) | 18,678円 1ヶ月あたり 9,339円 |
再診時の料金(4ヶ月分)
項目 | 料金(税込) |
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再診料 | 1,650円 |
薬剤 | ・スピロノラクトン 240錠 10,560円 ・ミノキシジル外用剤2% 4本 13,200円 |
検査 | – ※1 |
合計 (4ヶ月) | 25,410円 1ヶ月あたり 6,352円 |
- スピロノラクトンの処方には、初診時と6ヶ月に1度の副作用チェックのための血液検査が必要です。
- 再診の方は「遠隔診療(オンライン処方)」もご利用いただけます。
- 内服薬の処方には診察料がかかります。外用薬の処方のみをご希望の方は、2回目以降はご予約は必要ありません。
- 初診時は、副作用を観察するため2ヶ月分、再診時に問題がなければ4カ月分処方し、その後は3-6ヶ月に1回の診察を基本としています。
強力治療の料金
スピロノラクトン50mg/日、ミノキシジルタブレット2.5mgを組み合わせた場合の治療費用例です。
初診時(2か月分)
項目 | 料金(税込) |
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初診料 | 3,850円 |
薬剤 | ・スピロノラクトン 120錠 5,280円 ・ミノキシジル内服2.5mg 60錠 7,920円 |
検査 | ・血液 5,148円 ・心電図 2,706円 ・尿 1,848円 |
合計 (2ヶ月) | 26,752円 1ヶ月あたり 13,376円 |
再診時の料金(4ヶ月分)
項目 | 料金(税込) |
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再診料 | 1,650円 |
薬剤 | ・スピロノラクトン 240錠 10,560円 ・ミノキシジル内服2.5mg 120錠 15,840円 |
検査 | – ※1 |
合計 (4ヶ月) | 28,050円 1ヶ月あたり 7,012円 |
- ミノキシジルタブレットの処方には、初診時と6ヶ月に1度の検査(血液・心電図・尿)が必要です。
- 再診の方は「遠隔診療(オンライン処方)」もご利用いただけます。
- 内服薬の処方には診察料がかかります。外用薬の処方のみをご希望の方は、2回目以降はご予約は必要ありません。
- 初診時は、副作用を観察するため2ヶ月分、再診時に問題がなければ4カ月分処方し、その後は3-6ヶ月に1回の診察を基本としています。
※妊娠中・授乳中の方へはお薬の処方ができませんので、診察のみとなります。その他、持病やご年齢、喫煙などの生活習慣によって処方可能なお薬は異なりますので、診察時に医師にご相談ください。
頭皮メディカルアートメイク(SMP)
薬剤による治療と併用して効果的なのが、頭皮メディカルアートメイク女性の薄毛の悩みで特に多いのが、分け目の透け感です。頭皮メディカルアートメイク(SMP)は、分け目などの気になる部分の頭皮に極小のドットを施し、髪の毛の密度が高く見える効果を生み出す施術です。
自然な見た目で分け目の透け感をカバーできるSMPは、薬物治療では即効性が得られない方や、薬剤に頼りすぎたくない方に特におすすめです。
こんな方におすすめ
- 分け目やつむじなど、特定のエリアの透け感を軽減したい方
- 頭皮の傷跡を目立たなくしたい方
- 薬物治療と併用して即効性のある見た目の改善をしたい方
- 薬をこれ以上増やしたくない方
当院の頭皮メディカルアートメイクは、自然な仕上がりと持続性を重視。高品質な色素と専門技術により、まるで本物の髪の毛が生えたような外観を実現します。平均3-4回の施術で地肌の透け感が大幅に改善し、自信を取り戻すお手伝いをします。詳しい情報は頭皮メディカルアートメイク専用ページをご覧ください。
女性の薄毛治療についての質問
薄毛の一般的な質問や治療全般についての質問は「薄毛治療全般の質問」をご覧ください。
- びまん性脱毛症とはどのような病気ですか?
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びまん性というのは、広い範囲広がっていることを指します。つまり、びまん性脱毛症は単一の疾患のことではなく、症状を表します。びまん性脱毛症には、女性型脱毛症(女性男性型脱毛症)や休止期脱毛症などがありますが、円形脱毛症でも脱毛部位が広範囲に及ぶ場合は、びまん性脱毛症と分類されます。
びまん性脱毛症の中で、最も多い疾患は女性男性型脱毛症(FAGA)です。
- 育毛剤で薄毛は治りますか?
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化粧品、医薬部外品にかかわらず、市販されているすべての育毛剤には、医学的に見て薄毛を治す効果はありません。
もし育毛剤で改善された方がいれば、もともと一過性の脱毛であり、治療の必要がないものであった可能性が高いでしょう。
市販されている中で、唯一医学的にエビデンスがあるものは、第一類医薬品のミノキシジル(リアップリジェンヌ)のみです。ただし、ミノキシジルの濃度は1%であり、海外で使用されている2%や5%のものよりも効果は弱くなります。
- パンドガールは効果がありますか?
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パントガールは、成分的にはサプリであり、効果は乏しいと考えています。実際に当院でもパントガールを処方していた時期がありましたが、臨床的に効果が得られた患者さんがおらず、処方を中止した経緯があります。
- 薄毛の原因を調べることはできますか?
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脱毛の起こり方や過去の経過、視診を組み合わせると、薄毛の原因のおおよそは判断できますが、検査をしなければ判断できないこともあります。
必ずしも全員に検査が必要なわけではありませんが、一度も検査を受けたことがない方は、受けてみても良いでしょう。当院では、下記の2種類の検査を実施しています。
1. 原因検索のスクリーニング検査甲状腺ホルモン低下や、貧血、ビタミンDや亜鉛欠乏などで、脱毛症が起こることが分かっています。各種内臓系や自己免疫疾患の検査を加え、合計30項目以上の検査値を見て判断します。費用は14,080円(税込)です。
2. ホルモン検査女性ホルモン4種類に加え、男性ホルモン1種類を測定します。費用は9,746円(税込)です。
ホルモン剤やスピロノラクトン内服中の場合、正確な値が出ませんので、中止してから1ヶ月以上経って検査を行います。
閉経前の方は、生理の3~5日目(難しければ、1~7日目)の午前中にご来院いただくと、より正確な数値が測定可能です。
- 治療をやめると元に戻ってしまいますか?
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急激なホルモンバランスの変化による産後脱毛、ウイルス感染後の脱毛、ワクチン接種後の脱毛、円形脱毛症などは、改善後に治療を中断しても維持できる場合があります。しかし、びまん性脱毛症の中で最も多いFAGAでは、加齢によって進行していくため、治療を中断すると元に戻ってしまいます。
- 育毛メソセラピーは必要ですか?
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いいえ。詳しくは「育毛メソセラピーや頭皮注射は必要ですか?」の項目をご参照ください。