肝斑とは
肝斑(かんぱん)は、20代後半~40代にかけて発症するもやっとした「くすみ」です。頬や頬骨の周囲にモヤモヤとした黒ずみができ、左右対称に広がっていくことが多いのが特徴です。稀に、額やこめかみに出てくることもあります。
肝斑は、物理的な摩擦(肌のマッサージなどの物理刺激)、紫外線、妊娠やピルなどのホルモンの影響によって起こります。
シミとの違い
肝斑の治療
肝斑は再発しやすく、治療に手こずることが多い厄介なシミです。薄くなってもまた濃くなってしまうこともしばしばですが、正しい治療と日常の予防を行うことで、ほとんど目立たないレベルに消すことが可能です。
トラネキサム酸とビタミンC
肝斑治療の基本は、トラネキサム酸とビタミンCの内服です。レーザーで治療する場合も、原則は内服薬を服用する必要があります。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、メラノサイトを刺激する「プラスミン」の働きの抑制や抗炎症作用により、肝斑を改善させていきます。飲み始めてから4週間前後で効果が徐々に現れ、数ヶ月から半年で大部分の方に有効性が認められます。
当院では、1日量750 mgを基本としています。トラネキサム酸の効果は、飲まなくなると徐々に無くなるため、原則は長期に渡って服用する必要があります。
トラネキサム酸の副作用には、掻痒感、発疹、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、眠気等があります。また、血栓を溶かしくくするため、ピルとの併用は避けていただきます。
ビタミンC
ビタミンCは、1日600~1000 mg以上を飲むことをおすすめしています。シナールは1錠に200 mgのビタミンCが含まれていますので、1日3~6錠を目安に飲みます。市販のサプリメントでも構いません。
補助的な治療として高濃度ビタミンCローションの「VCエチルローション」、トラネキサム酸を配合している「EGホワイトローション」と「EGホワイトクリーム」でスキンケアしていただくことをお勧めしています。
ビタミンCの副作用は稀ですが、胃不快感、悪心・嘔吐、下痢等があります。
レーザートーニング
レーザートーニングは、肝斑に対する新しい治療法です。レーザーは、通常のシミ(老人性色素斑)には有効であったものの、肝斑に当てた場合、刺激になって逆に肝斑が濃くなってしまうため、長い間禁忌とされてきました。
レーザートーニングは、1064 nmの波長のQスイッチYAGレーザーを使用し、弱い出力で顔全体に照射することで、肌に炎症を起こさず、肝斑を徐々に薄くしていくことが可能です。治療は10分程で終了し、麻酔や術後の冷却も必要ありません。ダウンタイムはなく、当日からメイクも可能です。
レーザートーニングは、2週間に1度の照射を、合計10回程度行います。数回では効果を感じにくい方もいますが、多くの方が5回ほどで実感します。
副作用として、照射後の赤み(通常は数時間で治まります)、ニキビや毛包炎(通常は一過性です)があります。稀に白斑(白く色が抜けてしまうこと)が報告されていますが、2.0 J以上の出力で、週に1回以上当てている例で報告されており、当院では出力と頻度を制限しているため、白斑の副作用は起こっていません。
術後の再発率は半年で約7割と高いため、再発をできる限り少なくするように、トラネキサム酸とビタミンCの内服が大切です。メンテナンス的に1~2ヶ月に1回程度トーニングを続けることや、トレチノイン・ハイドロキノン療法を行うことも一つの選択肢です。
肝斑治療をひとつにまとめた「肝斑セット」
レーザートーニングとトラネキサム酸で肝斑を改善し、トラネックスレチピールでお肌のターンオーバーを促進させます。
体の内側と外側の両方から肝斑を改善させる。そんな治療をひとまとめにしました。
- トーニングとトラネックスレチピールを同日に行える方が対象になります。
- トーニング・トラネックスレチピール・トラネキサム酸について、過去に当院で医師から説明を受けていない方は、問診と診察が必要になります。
- トラネキサム酸が内服できない方でも、トラネキサム酸の処方抜きで肝斑セット治療を受けていただくことが可能です。(価格は同一)
【肝斑セットの予約方法】
①「トーニング・トラネックスレチピール・トラネキサム酸のどれか一つでも、当院で医師から説明を受けていない方」
問診と初回診察が必要になります。
流れは「事前に問診 → 電話でご予約 → 初回診察 → 施術および処方(診察とは別日)」となります。
問診は「レーザー外来」を選んでいただき、治療希望の選択で「くすみ(肝斑)」をお選びください。
ご予約は、初回のみお電話で、2回目以降はネット予約からご予約できます。
②「トーニング・トラネックスレチピール・トラネキサム酸の全て、当院で医師から説明を受けている方」
問診や初回診察は不要です。
流れは「電話でご予約 → 施術および処方」となります。
ご予約は①と同様に、初回のみお電話で、2回目以降はネット予約からご予約できます。
トレチノイン・ハイドロキノン療法
トレチノインとハイドロキノンに高濃度ビタミンCローションを組み合わせる「東大式シミ治療」を行っています。
トレチノインは細胞のターンオーバーを促進して、メラニン色素を排出する塗り薬です。ハイドロキノンはシミの元となるメラニン色素を作り出す「メラノサイト」の働きを抑え、シミを漂白していきます。
レーザートーニングを行いたくない方には良い治療ですが、使い始めに赤みが出たり、皮膚がポロポロと剥がれるため、肝斑が広範囲の場合、使用しにくいことが欠点です。また、レーザー治療中はトレチノインとハイドロキノンの治療を避けていただきます。
トレチノイン・ハイドロキノン療法について詳しくは、調剤化粧品のトレチノイン・ハイドロキノン療法をご参照ください。
日常生活のケア
肝斑は、物理的な刺激で悪化するため、患部にできるだけ触らないことが大切です。洗顔の際やタオルで顔を拭く際、お化粧をする際など、なるべく肌をこすらないようにご注意ください。
また、肝斑部分のマッサージをしないようにお願いします。併せて、SPFとPA値の高い日焼け止めを使用し、紫外線を徹底的に避けることがとても重要です。
肝斑治療の料金– Treatment Costs –
トラネキサム酸、ビタミンC、グルタチオン、トレチノイン・ハイドロキノンは遠隔処方も承っています(保険外処方)。
項目 | 料金(税込) |
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診察料 | 初診料 3,850円 再診料 1,650円 |
レーザートーニング (肝斑・くすみ) | 顔 初回 8,580円 (3000ショット) 2回目以降 10,780円 (3000ショット) 首(顔オプション)3,300円 (1600ショット) 半顔 6,380円 (1500ショット) 5×5㎝ 3,080円 (500ショット) 体1部位 9,680円 (2500ショット) |
トレチノイン | 0.05% 5g 2,178円 0.1% 5g 2,728円 |
ハイドロキノン | 4% 10g 3,278円 |
トラネキサム酸 250 mg | 90錠 1,980円 |
ビタミンC 200 mg | 90錠 990円 |
グルタチオン錠 | 90錠 1,980円 |
肝斑セット ①トラネックスレチピール ②レーザートーニング ③トラネキサム酸90錠 | 24,200円 |
- 同じ施術を2回目以降受けられる方で、診察を希望されない場合は再診料はかかりません。
- 化粧品・外用剤・ビタミン剤を2回目以降購入希望の方で、診察を希望されない場合は再診料はかかりません。
- ピル内服中の方は、トラネキサム酸の服用はお控えください。
肝斑についてのよくある質問
- 肝斑のレーザー治療は当日受けることができますか?
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空き状況によっては当日施術可能です。お電話にてお問合せください。
- レーザー治療を受けられない場合はありますか?
-
次の方は治療を受けられない場合がございます。
- 日光浴愛好者、日光に当たる職業の方、光過敏症(日光アレルギー)の方
- 妊娠中の方
- てんかん発作のある方
- 金の糸を入れている方
- 照射部位に入れ墨、アートメイク、落ちないファンデーション(BB Glow、CC Glow等)をご使用の方
その他、ご使用中の薬剤や施術によっては期間を空ける必要があるものもありますので、診察の際にご相談ください。
「治療間隔(インターバル)」も併せてご参照ください。
- トーニングレーザーのダウンタイムはありますか?
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レーザートーニングではダウンタイムはほぼありません。術後に多少赤くなることがありますが、数十分~数時間で消失することがほとんどです。
- レーザー中の痛みはありますか?
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トーニングレーザーはパチパチと軽い痛みを生じますが、麻酔が必要なほどではありません。
- 肝斑が再発してしまいました
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肝斑は、トラネキサム酸の内服やトーニングで改善した場合でも、内服やレーザーの中止によって再発してきます。2
当院では、原則は内服を持続してもらい、肝斑の再発を防ぎます。また、トーニングで1クール終了した後には、頻度を落として定期的に受けていただくことで肝斑の再発を防ぐようにしています。
- レーザー後に注意することはありますか?
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肝斑は非常に再発しやすい疾患です。患部を触らない、こすらない、紫外線を当てないことを心掛けてください。また、トラネキサム酸とビタミンCを飲み続けることや、調剤化粧品で予防美白を毎日行うことも大切です。
参考文献・サイト一覧
- Shah SD, (2019) “Laser Toning in Melasma”. J Cutan Aesthet Surg. 2019 Apr-Jun;12(2):76-84. doi: 10.4103/JCAS.JCAS_179_18. PMID: 31413475
- Wattanakrai P, (2010) “Low-fluence Q-switched neodymium-doped yttrium aluminum garnet (1,064 nm) laser for the treatment of facial melasma in Asians.” Dermatol Surg. 2010;36(1):76-87. doi: 10.1111/j.1524-4725.2009.01383.x. PMID: 20298254
- Omi T, (2012) “Low Fluence Q-Switched Nd: YAG Laser Toning and Q-Switched Ruby Laser in the Treatment of Melasma:A Comparative Split-Face Ultrastructural Study.” Laser Ther. 2012 Mar 28;21(1):15-4. doi: 10.5978/islsm.12-OR-03. PMID: 24610976