飲む日焼け止めの効果とFDAからの警告

飲む日焼け止めとは?

春から夏になると、「飲む日焼け止め」を飲み出す患者さんが多くなります。

飲む日焼け止めとは、「フェーンブロック」や「ニュートロックスサン」という成分が配合された、飲むだけで日焼けを防止できるという健康食品です。

英語では「Sunscreen pills」と呼ばれ、20年程前からアメリカで販売され、話題になりました。当初は1~2種類しか製品がなかったのですが、今や検索すると沢山な商品が販売され、アフィリサイトでランキングもされています。

飲む日焼け止めの成分

飲む日焼け止めの有効成分は「フェーンブロック」と「ニュートロックスサン」の2つに大別されます。

フェーンブロック

フェーンブロックは、Polypodium Leucotomosというシダ植物から抽出された成分で、成分名は、Polypodium Leucotomosの日本名がダイオウウラボシのため、「ダイオウウラボシ抽出エキス」と記載されています。

Polypodium Leucotomosから抽出したエキスなので、その頭文字を取って「PLエキス」とも呼ばれます。

フェーンブロックが入った飲む日焼け止めは、ヘリオケアやシェードファクターなどが代表的なサプリメント商品です。

ニュートロックスサン

ニュートロックスサンは、シトラスとローズマリーから抽出したエキスが成分であり、成分表記には「シトラス果汁・ローズマリー葉エキス末」と書いてあります。

ニュートロックスサンが入った飲む日焼け止めの商品は、沢山ありすぎて、具体的な商品名はここでは書きません。

飲む日焼け止めの効果

飲む日焼け止めは、どのような仕組みで紫外線を防ぐ効果を発揮するのでしょうか。

抗酸化作用(活性酸素除去やDNA損傷保護作用)、抗炎症作用など、様々な基礎医学的な研究報告がありますが、実際の日常生活での日焼け防止効果を検証していきます。

まず、フェーンブロックとニュートロックスサンについての論文の中で、主にUV-Bに対する効果を推察できるものを紹介します。

フェーンブロックの効果

研究報告によると、ボランティア20名に対して、Polypodium Leucotomosから抽出したエキス(フェーンブロック)1000mgを毎日飲んだ場合、UV-BによるMED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加し、統計学的に有意な増加を認めた [1]。

フェーンブロックによる紫外線防止効果
フェーンブロックによるMEDの変化 引用 [1]

これにより、フェーンブロックは太陽光による紅斑の減少や、紅斑に対する耐性を上げることができると報告しています。

MEDとは最小紅斑量のことですが後述いたしますので、ここでは「MEDがフェーンブロックによって増えたんだ。」という認識で構いません。

研究者のGonzález.Sは、当初、フェーンブロックの経口投与によってMEDが2.8倍となったということで、飲む日焼け止めのSPFが3程度あると主張していましたが [2]、上記の2014年のMED増加率は1.2倍程度あり、ずいぶん異なります。

それ以後、フェーンブロックがSPF3以上の効果があるなどの報告は見当たらず、論文の信頼性と妥当性ははっきりわかりません。

ニュートロックスサンの効果

ボランティア10名に対してニュートロックスサン250mgを毎日飲ませた場合、MEDが57日後に34%、85日後に56%の増加を示したと報告されています [3]。

ニュートロックスサンの紫外線防止効果
ニュートロックスサンによるMEDの変化 引用 [3]

原料会社公式HPでは、こちらの論文を引用して、「ニュートロックスサンにより56%の紫外線に対する防護作用が確認されました。」と宣伝されています [4]。

SPFとMED

飲む日焼け止めの効果を検証するのに、「SPF」と「MED」について理解する必要があります。

SPFの計測方法

SPFは、主な日焼けの原因で有害である「UV-B」を防ぐ指標です。

塗る日焼け止めのSPFの計測方法は、次のようにして行います。

人の背中6か所それぞれに、UV-Bを6段階の強さで照射します。20~24時間後に、その6ヶ所が赤くなっていないかどうかを見ます。赤くなっているところがあれば、その赤くなっている部分に当てた紫外線量の中で、最も小さい数値を「MED(最小紅斑量:赤みを起こすのに必要な最小の紫外線照射量)」として記録します。

上記の図のように、日焼け止めを塗らない状態で、30~80の強さのUV-Bを照射して、24時間後に少しでも赤くなっている部分の最小の紫外線量を記録します。ここでは、紫外線量70以上で皮膚が赤くなっているため、MEDは70です。

次に、上記の図のように、日焼け止めを塗った状態で、700~3500の強さのUV-Bを照射し、同様に24時間後に少しでも赤くなっている部分の最小の紫外線量を記録します。ここでは、1400以上で赤くなっているため、MEDは1400です。

SPFは、日焼け止めを塗った部分のMED÷何も塗らなかった部分のMEDで計算されます。上記の例では、1400÷70=20となり、SPFは20です。

上記の数値は一例で、MEDは一人ひとりの肌の性質によって異なるため、実際には10名以上で行い、その平均値で算出されます。

ちなみに、日本人の平均MEDは60~70kJ/㎡(0.06~0.07J/㎡)です。この数値が上がるほど、日焼けに強い肌質と言えます。

飲む日焼け止めのSPF

飲む日焼け止めによって、紫外線防止効果が56%アップなどと謳われているため、半分以上も紫外線がカットできる」と勘違いしている方もいらっしゃると思います。

飲む日焼け止めのSPFはどれくらいなのでしょうか。

飲む日焼け止めのSPF

ここで、もう一度フェーンブロックとニュートロックスサンの研究報告 [1, 3]を見てみます。

「フェーンブロック1000mgを毎日飲んだ場合、MEDが、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加した。」

「ニュートロックスサン250mgを毎日飲んだ場合、MEDが、57日後に34%、85日後に56%に増加した。」

塗る日焼け止めの場合、最初のMEDが70とすると、SPF2の日焼け止めを塗ると、MEDは140となり(140÷70=2)、塗った瞬間からMEDは70→140へと、100%増加します。SPF30の日焼け止めを塗ると、塗った瞬間からMEDは70→2100へ、2900%増加します。

それに対して、フェーンブロックは、1ヶ月間毎日飲んで20%の増加、ニュートロックスサンは、2ヶ月間毎日飲んで、34%の増加、3ヶ月間毎日飲んで56%の増加です。

つまり、飲む日焼け止めの数値は、現行のSPFで測定すると、3ヶ月毎日飲んでもSPFは1.56であり、SPFは2にも満たないことになります。

「プラセボと比較してMEDは3ヶ月で56%上昇しているので、有意差があり、統計上は意味がある数値だ!」という主張は良く分かりますが、既存の塗る日焼け止めと比較すると、SPFがあまりに低く、日焼け止めとしての効果はありません。

論文では、ニュートロックスサンを飲み始めてから29日目までのMED増加率の有意差はなく、1ヶ月間飲んでも、紫外線防止効果は期待できません。

「今日は海水浴に行くから、今日だけ飲む日焼け止めを1錠飲んで出かけよう。」という使い方は、まったく意味がありません。

アメリカ皮膚科学会からの警告

アメリカ皮膚科学会(AAD)が、飲む日焼け止めに警告をしています。以下に全文とその翻訳を載せておきます。

American Academy of Dermatology statement on oral supplements for sun protection

Recently, there has been discussion in the media about oral supplements that claim to provide protection from the sun. The American Academy of Dermatology (Academy) wants to alert consumers that these pills should not be used as a replacement for sunscreen or sun-protective clothing. There is currently no scientific evidence that oral supplements alone can provide an adequate level of protection from the sun’s damaging ultraviolet rays.

Sunscreen is the only form of sun protection that is regulated by the U.S. Food & Drug Administration (FDA). Broad-spectrum sunscreen with a Sun Protection Factor (SPF) of at least 15 has been scientifically proven to prevent sunburn and reduce the risk of skin cancer and early skin aging caused by the sun. Regardless of whether you choose to take oral supplements, the Academy recommends you seek shade, wear sun-protective clothing and apply a broad-spectrum, water-resistant sunscreen with an SPF of 30 or higher.

引用 [5]

近年、日焼けから守ると謳うサプリメント(飲む日焼け止め)について、メディアで論議されています。アメリカ皮膚科学会は、「これらの飲む日焼け止めを、塗る日焼け止めや、日焼けから守る衣服の代わりとして使用しないよう」消費者に警告します。現在、飲む日焼け止め単独で、太陽の有害な紫外線から、肌を適切に守るという科学的根拠は存在しません。

FDAによって規定されている唯一の日焼け対策用品の形態は「塗る日焼け止めのみ」です。SPFが少なくとも15以上で、広域スペクトラム(広い範囲の紫外線をカットする)の日焼け止めは、日焼けを防ぎ、皮膚癌のリスクや日光による皮膚老化を抑えることが科学的に証明されています。アメリカ皮膚科学会は、飲む日焼け止めを服用するか否かにかかわらず、日陰を探し、日光を防ぐ衣服を着て、SPF30かそれ以上の広域スペクトラム、かつ、ウォータープルーフ(耐水タイプ)の日焼け止めを使うことを推奨します。(翻訳:岩橋陽介)

FDAからの警告

アメリカのFDAはサプリメントの規制をしていないため、飲む日焼け止めについて長い間沈黙を続けていましたが、2018年5月に警告を出しました(2017年に記事を書いたときは、まだ警告は出ていませんでした)。

FDAは、「飲む日焼け止めの紫外線防止効果の科学的な根拠が乏しいにもかかわらず、日焼けを防止すると宣伝し、消費者を危険にさらしている」とし、飲む日焼け止めを販売している4つのブランドに対して、警告文を送っています [6]。

飲む日焼け止めの虚偽広告

日本では、サプリメントや化粧品は野放しでやりたい放題です。

飲む日焼け止めには怪しい企業が多数参入しており、誇大広告や虚偽広告が多数見られます。

下記はネットで見つけた飲む日焼け止めのウェブページの一例です。

前述した通り、飲む日焼け止めの効果は、日焼け止めとしての効果は期待できません。ましてや、塗る日焼け止めを超えたなんてことは絶対になく、そんなデータも科学的根拠も存在しません。

にもかかわらず、「UVクリームを超えた紫外線カット」などという広告は完全に嘘であり、「塗る日焼け止めは古い」「飲むだけで全身日焼け止め」「塗り直しも不要!」という記載は、消費者をミスリードし、紫外線の危険にさらしていると言えます。

日本でもいい加減この手の広告には、厳しい規制が入って良いと思います。

「飲む日焼け止めには、UV-Aに対する効果があるんだ!」という反論もありそうですが、UV-Aについても、いくつかのパイロットスタディでMPD(最小光毒照射量)の増加の報告はあるものの、PA値で換算すると、PA+の効果も得られていないはずです。

「直接、日焼けを防止する効果は低くても、間接的に、活性酸素を除去する抗酸化作用によって、紫外線によるDNA損傷から守るんだ!」という意見はあるのでしょうが、これは「日焼け止め」ではなく、抗酸化サプリメントの範疇です。

せめて「日焼け止め」を謳うのは、消費者の誤解を招くのでやめていただきたいものです。

まとめ

1.「紫外線ダメージ56%カット」「紫外線を56%もカット!」は完全に誤解を招く表現。

2.飲む日焼け止めのSPFは、3ヶ月毎日飲んだとしても1.56以下。

3.紫外線防止効果は、長期間飲んだとしても限定的だが、短期間(数日~1ヶ月飲んだだけ)だとほぼゼロ。

4.「1粒で24時間紫外線カット!」などの宣伝文句は誇大広告。

5.塗る日焼け止めの代用品にはならないので、塗る日焼け止めでしっかりと紫外線対策を!

医師としての私見

飲む日焼け止めは市販もされていますが、病院で販売されているケースもあります。病院と言ってもほとんどが美容外科や美容皮膚科などのクリニックです。

私が当院の患者さんに飲む日焼け止めを勧めますか?と聞かれたら、NOと答えます。

少しでも効果がありそうなのであれば、使った方が良いと考える医師はいるのでしょうが、良く効果を理解・検証せずに、健康食品会社からの情報を鵜呑みにして販売している病院もあります。

本当にきちんとした医師が推奨しているのか、単にビジネス(商売)で患者に勧めているだけなのかを良く見極める必要があります。

紫外線防止には、衣服や帽子、日傘などの物理的防御に加え、SPF30以上の日焼け止めと、汗をかいた際のこまめな塗り直しが重要であり、そのうえで、飲む日焼け止めを使うということであれば、副作用等なければ、それは別に構わないと考えます。副作用は少ないようですが、胃腸障害などが報告されています。

コピーコンテンツについて

こちらの記事は、2017年に記載したものをリライトしています。当時グーグルで、「飲む日焼け止め 効果」で検索すると1位に表示され、非常に反響があって拡散されました。

昨年のグーグルの医療アップデート以降は圏外となり、当院の記事を短くしてまとめたサイトやコピーコンテンツが上位表示されるようになってしまいました。

オリジナルの記事は圏外となり、コピーサイトや飲む日焼け止め宣伝サイトばかりが上位に表示されるグーグルのアップデートには憤りしか感じません。

各医院の先生方、ブロガー、ライターの皆様、当院の記事を参照して記事を書くのは全く問題ありませんしリンクしていただくのもフリーですが、著作権は放棄しておりません。最低限のマナーとして参考サイトとして記載をお願いいたします。

4/8追記・・・現在までにご連絡した法人様、ライター様のすべての方が当院の記事を模倣・参照して書いたことを認めてくださり、記事の削除、もしくは、参考サイトとしてのリンクを張っていただきました。

参考文献・サイト

1.Sergio.S, (2014) “The benefits of using a compound containing Polypodium leucotomos extract for reducing erythema and pigmentation resulting from ultraviolet radiation.” Surg Cosmet Dermatol;6(4):344­8.

2.González.S, (1997) “Topical or oral administration with an extract of Polypodium leucotomos prevents acute sunburn and psoralen-induced phototoxic reactions as well as depletion of Langerhans cells in human skin.” Photodermatol Photoimmunol Photomed. 1997 Feb-Apr;13(1-2):50-60. PMID: 9361129

3.Pérez-Sánchez A, (2014) “Protective effects of citrus and rosemary extracts on UV-induced damage in skin cell model and human volunteers.” J Photochem Photobiol B. 2014 Jul 5;136:12-8. doi: 10.1016/j.jphotobiol.2014.04.007. Epub 2014 Apr 20. PMID: 24815058

4.ウィルファーム株式会社 “原料紹介-ニュートロックスサン” http://www.willfarm.jp/material-nutroxsun.html 2019.04.02 アクセス

5.American Academy “American Academy of Dermatology statement on oral supplements for sun protection” https://www.aad.org/media/news-releases/american-academy-of-dermatology-statement-on-oral-supplements-for-sun-protection 2017.08.28 アクセス (現在リンク切れ)

6.FDA “Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D., on new FDA actions to keep consumers safe from the harmful effects of sun exposure, and ensure the long-term safety and benefits of sunscreens” 2018.6.24 アクセス

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