ハワイの日焼け止め禁止成分と持ち込みへの影響

ハワイでは、サンゴに有害な成分を配合した日焼け止めの販売と流通を禁止する法案が提出され、2018年5月に州議会で可決されました。

いつから禁止?

日焼け止め禁止法案は、2018年7月3日に米ハワイ州のデイビット・イゲ州知事の承認の署名したことで、2021年1月1日から施行されることが決まりました (3)。

禁止される成分は?

禁止される成分は、「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」の2つです。ともに、「紫外線吸収剤」と呼ばれるもので、肌に塗ると、紫外線吸収剤が紫外線を吸収して、紫外線が皮膚の内部に侵入するのを防ぐ働きがあります。

オキシベンゾン

日本では厚労省が定めた化粧品に使用可能な32種類の紫外線吸収剤のうちの一つです。オキシベンゾン類は、紫外線吸収剤としてオキシベンゾン-3が使用される他、褪色防止剤としてオキシベンゾン-1,2,6,9などがあります。

オキシベンゾンは、EUで環境ホルモン作用が問題視されたことや、経皮吸収性が高く、肌に塗った際に体内に吸収される量が多いことなどから、代替が進んでいる成分です。

国内の日焼け止めやリップなどの製品には配合されているものも多く、例えば、資生堂の「アネッサ」や、DHCのUVリップに配合されています (4, 5)。

オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)

オクチノキサートは、化粧品表示名称は「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」です。

オキシベンゾンと同じく、EUでは環境ホルモンリストに挙げられていますが、日本では日焼け止めをはじめ、高SPFの下地やファンデーション、UVカットリップなど、様々な化粧品に配合されています。

近年、カプセル化することにより、肌への負担を減らした原料も流通していますが、今回のハワイ州の法案では、製造方法や原料にかかわらず一律に禁止となります。

アメリカでは3500種類以上の日焼け止め製品に、オキシベンゾンとオクチノキセートが使用されています。医師の処方箋があり、必要と認められたものは除外されますが、かなりの製品が販売禁止となるため、すでに各社はリニューアルや代替品の製造を予定しています。

サンゴへの影響

サンゴは動物ですが、光合成によってエネルギーを得ています。それは、体内に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という藻(も)類を共生させ、褐虫藻からの光合成産物により栄養を摂取しているからです。

サンゴの骨格はもともと白いのですが、褐虫藻を体内に取り込むことで、サンゴの色が変わります。サンゴから褐虫藻がいなくなると、サンゴの内部は透明化し、もともとの白い骨格の色になります。これがサンゴの白化現象です。

白くなったサンゴは、再び褐虫藻を取り込めば元に戻りますが、褐虫藻がいなければ栄養源がなくなるため、しばらくすると死んでしまいます。

このサンゴの白化は、温暖化現象や化学物質など様々な原因が疑われていますが (7, 8)、日焼け止めの影響も疑われています。

サンゴの白化

日焼け止めが、サンゴの白化や死に関係があるのではという疑いは、10年以上前からありました。

最初は、メキシコのユカタン半島にあるセノーテで、海洋生物の死亡率が高くなったことが始まりです。セノーテは、陥没した穴に地下水が溜まった天然の泉ですが、洞窟のように閉ざされた縦穴や横穴が、海に繋がっています。セノーテに潜るケーブダイビングが人気になり、多数のダイバーが潜るようになりました。

サンゴと日焼け止め
サンゴへの日焼け止めの影響 画像引用 (1)

Roverto Danovaroらは、日焼け止めがサンゴに与える影響を調べるため、様々な地域から採取したサンゴを、1リットルあたり10マイクロリットル(10万分の1)の日焼け止めを入れた海水で飼育したところ、18時間から48時間後には、サンゴが藻類の放出を開始し、96時間後には完全に白化しました。日焼け止めを添加していない海水で飼育したサンゴには、白化現象が起こりませんでした (1)。

Danovaroらは、日焼け止めの成分が、藻類に潜伏感染している休眠状態のある種のウィルスを活性化させてしまい、サンゴが褐虫藻を放出することによって白化が起こると推察しています。さらに、放出したウィルスが周囲のサンゴの褐虫藻に感染を起こして、白化が広がるのではないかと懸念しています (6)。

C.A.Downsらは、オキシベンゾンがサンゴの細胞やプラヌラ幼生(サンゴが受精した幼生形、つまり赤ちゃんです)に与える影響を調べています。

24時間でサンゴのプラヌラの半数が死亡するオキシベンゾン濃度は、1リットル中139マイクロリットル(7000分の1)と、ごく微量であり、サンゴのプラヌラ幼生の変形を引き起こす濃度は、1リットル中、たった6.5マイクロ(15万分の1)で、更に微量であった報告されています (2)。

オキシベンゾンは、光の中であれ、暗闇の中であろうとサンゴに毒性を発揮しますが、光毒性があるため、明るい場所でより毒性が強くなるとされています。

日焼け止めの影響を研究している研究者らは、オキシベンゾンはサンゴのみならず、海洋生態全体に影響を与え、ハワイの飲水や魚にも入り込むため、人体にも影響を与えている可能性があると警笛を鳴らしています。

オーガニックなら安全?

オーガニック認証=環境に優しいというわけではありません。

オーガニック認証は各国の認証団体が独自に規定を定めているものです。配合している植物原料の50%がオーガニックであること、合成香料を使用しないことなど、各団体で基準が定められています。

紫外線吸収剤については規制はありませんので、含まれている製品もそうでない製品も存在します。

持ち込みはできる?

観光客の持ち込んだ日焼け止めは規制対象外のため、旅行する際に使用することについて罰則はありません。しかし、ハワイ州は、観光客にも使用しないように、その有害性を伝えていくとしています。

ハワイでは、ノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)の日焼け止めをポンプボトルに入れ、ビーチサイドで宿泊客が無料で使用できるようにしているホテルもあります。

気になる方は、酸化チタンや酸化亜鉛といった紫外線散乱剤が主成分の日焼け止めを選択してください。当院でも、ノンケミカルの日焼け止めを推奨しています。

執筆 医師:岩橋 陽介

参考文献・サイト

  1. Roberto Danovaro et al. (2008) “Sunscreens Cause Coral Bleaching by Promoting0 Viral Infections” Environ Health Perspect, 116(4): 441–447. PMID: 18414624
  2. C. A. Downs et al. (2016) “Toxicopathological Effects of the Sunscreen UV Filter, Oxybenzone (Benzophenone-3), on Coral Planulae and Cultured Primary Cells and Its Environmental Contamination in Hawaii and the U.S. Virgin Islands” Archives of Environmental Contamination and Toxicology, Arch Environ Contam Toxicol. 2016 Feb;70(2):265-88. doi: 10.1007/s00244-015-0227-7. PMID: 26487337
  3. Maritza Moulite, CNN “Hawaii bans sunscreens that harm coral reefs” https://edition.cnn.com/2018/07/03/health/hawaii-sunscreen-ban/index.html 2018.7.26 アクセス
  4. 資生堂 “パーフェクトUVスキンケアジェル“ http://anessa.shiseido.co.jp/products/suncare/perfect_uv_gel/ 2019.05.15 アクセス
  5. DHC “DHC UVモイスチュア リップクリーム” https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=22791 2019.05.15 アクセス
  6. Roberto Danovaro et al. (2003) “Sunscreen products increase virus production through prophage induction in marine bacterioplankton.” Microb Ecol. 2003 Feb;45(2):109-18. Epub 2003 Jan 28. PMID: 12545312
  7. Ove Hoegh-Guldberg (1999) “Climate change, coral bleaching and the future of the world’s coral reefs” Marine and Freshwater Research 50(8) 839 – 866
  8. Peter W. Glynn (1996) “Coral reef bleaching: facts, hypotheses and implications” Global change biology Volume2, Issue6 December 1996 Pages 495-509

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