毛孔性苔癬 / 二の腕のブツブツ

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毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)とは

二の腕の毛孔性苔癬のブツブツの写真
毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)

「二の腕のブツブツ」として多くの方が悩む 毛孔性苔癬(毛孔性角化症とも呼ばれる) は、毛穴の出口が角栓でふさがり、小さなブツブツや赤いポツポツが出現する皮膚疾患です。

一般的に小児期以降に発症し、思春期に悪化、30代以降には自然に軽快することもあります[1]

  • 好発部位:二の腕の外側、肩、お尻、太もも[10]
  • 自覚症状:かゆみは少なく、触るとザラザラ(「さめ肌」と表現されることも多い)
  • 季節性:乾燥する秋冬に悪化しやすい

男女差はありませんが、美容上の問題から女性が受診するケースが多くみられます。

毛孔性苔癬の原因

毛孔性苔癬は、毛穴の出口に ケラチン(角質タンパク質)が過剰に蓄積 することが原因です。

  • 毛穴のつまり → 白いブツブツ
  • 炎症が起きる → 赤いポツポツ

原因には以下が関与すると考えられています[2–5]

  • 遺伝(常染色体優性遺伝)
  • 肥満やホルモン異常
  • 乾燥肌、アトピー性皮膚炎
  • ビタミン不足

自宅でできる毛孔性苔癬の治し方(市販薬・クリーム)

市販薬だけで毛孔性苔癬を治すのは難しいですが、スキンケアを継続することでブツブツを目立ちにくくしたり、再発を予防することは可能です。

1. 尿素クリーム(市販)

  • 20%尿素配合の保湿クリームは角質を柔らかくし、ザラつきを改善します。
  • ドラッグストアで購入可能。毎日継続がカギ。
  • ケラチナミンコーワ20%尿素クリーム(興和)
  • パスタロンM20α(佐藤製薬)

2. ビタミンA(レチノール)配合クリーム

  • 角質のターンオーバーを促進し、毛穴のつまりを改善。
  • 体に使用する場合、高濃度(0.5%以上)推奨

3. ビタミンD軟膏

  • 角化異常を正常化し、再発を防ぐ効果。
  • 国内市販薬では低い濃度のみ
  • ポリベビー軟膏(ビタミンD2 1 µg/g)(佐藤製薬)

医療機関での治療

当院では以下の治療を行っています。毛孔性苔癬は一度良くなっても再発しやすいため、長期的な治療によるコントロールが必要です。

ダーマペン

  1. 特徴
    • ブツブツを物理的に破壊します。1回治療で約20~30%のブツブツが消失します。
  2. 治療方法
    • 4週間以上間隔を開け、3~5回治療。その後は、気になった際に治療を行います。
  3. 治療を受けられない方
    • 色素沈着や傷跡が残りやすい方
    • ケロイド体質の方
  4. 副作用
    • 赤みや出血などが起こりますが、1~2週間程度で引いていきます。
    • ダーマペン後の傷に色素沈着が起こる可能性があります。通常は、半年以内に自然に改善していきますが、長期に残存し、色素沈着の治療が別途必要になることがあります。
    • 稀ですが、体質によって傷あとが瘢痕として残ってしまうリスクがあります。
  5. 料金
    • 両上腕(片側20×10cm)27,280円
    • 5×5cm 10,780円
    • クリーム麻酔 3,300円
    • 施術範囲が広範囲の場合、面積に応じて料金がかかります。詳しくは診察の際に医師にご相談ください。
  6. 治療経過観察
    • ダーマペン3回終了後、治療経過を見るため、赤みが引いてから診察のご予約をお取りください。

当院のインスタグラムに「毛孔性苔癬のダーマペン治療」の動画を掲載していますので、下記をご覧ください。

毛孔性苔癬をダーマペンで行う場合、かなりしっかり目にブツブツを潰すように施術します。
他院で改善しなかったという方もご相談ください。

活性型ビタミンD3軟膏(マキサカルシトール軟膏)

  1. 特徴
    • 市販薬の25倍(25μg / g)のビタミンD濃度。角化異常を正常化して毛孔性苔癬の再発を防ぐため、ダーマペン後の再発予防に併用します。
  2. 治療方法
    • 1日2回、患部に薄く塗りこみます。片上腕あたり約1~2cmが使用量の目安です。ダーマペン後は2日間(48時間)空けてからご使用ください。
  3. 副作用
    • 赤み、発疹、かゆみなどが起こることがあります。
  4. 料金
    • 1本 10g 1,210円(1本で10~14日分)

サリチル酸マクロゴールピーリング

  1. 特徴
    • サリチル酸30%~40%のピーリング剤。角質をやわらかくして毛孔性苔癬を改善させます。
  2. 治療方法
    • 4週間に1回、患部に薄く塗って10分おいた後に洗い流します。両上腕あたり1回分(1.65g)が使用の目安です。肌が弱い方は30%濃度、そうでない方は40%濃度を使用します。
  3. 副作用
    • 赤み、発疹、かゆみなどが起こることがあります。
  4. 料金
    • 1回分(1.65g) 4,378円 
    • 6回分 21,780円

トラネックスレチピール

  1. 特徴
    • レチノール4%のピーリング剤。強力な角質剥離作用と柔らかくする作用があります。
  2. 治療方法
    • 4週間に1回、合計5回を目安に院内で施術を受けていただきます。施術後はピーリング剤を塗布した状態で、初回は施術2~3時間後、2回目以降は6時間後にご自宅でシャワーで洗い流します。
  3. 副作用
    • 施術後2~10日間、赤み、かゆみ、ひりつき、皮むけ、乾燥が起こります。また、皮膚の刺激、痛み、かぶれ、湿疹、水疱、腫れ、かさぶた、反応性ニキビ、色素沈着が起こる場合があります。
  4. 料金
    • 1回 16,500円(両上腕)

ビタミンA / ビタミンDの飲み薬

  1. 特徴
    • 全身性に角化を改善、再発予防に。
  2. 治療方法
    • ビタミンAは3日に1錠、ビタミンDは1日1錠を夕食後に服用します。妊娠中、授乳中、妊活中の女性は服用をお控えください。
  3. 料金
    • ビタミンA 10錠 330円
    • ビタミンD 30錠 660円

その他

ピーリング作用と角質軟化作用を持つ「トレチノイン軟膏」や「イソトレチノイン内服薬」を処方する場合があります。また、ご自分でできるケアとして、20%の尿素クリームでの保湿をおすすめします。

症例写真

ダーマペンによる毛孔性苔癬の治療を行った際の経過です。

治療前

治療前の毛孔性苔癬
治療前 左:通常撮影 右:暗室撮影

明るい場所では見えにくいのですが、暗室で撮影すると細かい丘疹が多数あり、肌全体にざらつきがあります。写真の赤みは麻酔によるものです(麻酔前の写真は撮り忘れ)。

治療直後

ダーマペン治療直後の毛孔性苔癬
ダーマペン治療直後

写真は、ダーマペンで治療した直後の状態です。治療後は、エアウォールUVという紫外線カットテープを貼って、傷を保護して早く治します。

赤みは3日~1週間で引いてきます。

2回治療後

治療後の毛孔性苔癬
ダーマペン2回治療後 左:通常撮影 右:暗室撮影

写真はダーマペンを2回行ってから1週間後の状態です。丘疹が少なくなり、保湿とビタミンD軟膏を併用しているため、肌が滑らかになり、実際の触り心地も良くなります。

ダーマペンは物理的に丘疹を破壊するため、外用剤と比較して有効性が高いことと、再発までの期間が長いことが特徴です。その反面、肌を傷つけるため、施術後の跡が色素沈着として残るリスクがあります。

参考文献・サイト一覧
  1. 山本 幸代, (1981) “5年間の蓄積デー タからみた代表的皮膚疾患の性別年令別分布” 皮膚・第23巻・第2号 p197-205
  2. L Poskitt, (1994) “Natural History of Keratosis Pilaris” Br J Dermatol. 1994 Jun;130(6):711-3. doi: 10.1111/j.1365-2133.1994.tb03406.x. PMID: 8011494
  3. Robert Gruber, (2015) “Sebaceous Gland, Hair Shaft, and Epidermal Barrier Abnormalities in Keratosis Pilaris with and without Filaggrin Deficiency” Am J Pathol. 2015 Apr; 185(4): 1012–1021. doi: 10.1016/j.ajpath.2014.12.012 PMID: 25660180
  4. Fatima-Zahra Agharbi. (2019) “Keratosis Pilaris” Pan Afr Med J. 2019 Jul 30;33:274. doi: 10.11604/pamj.2019.33.274.16158. PMID: 31692799
  5. Penelope A Hirt, (2019) “Skin Changes in the Obese Patient” J Am Acad Dermatol. 2019 Nov;81(5):1037-1057. doi:10.1016/j.jaad.2018.12.070. PMID: 31610857
  6. 徳島県医師会. 公開日:2009.02.12 “毛孔性苔癬” https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/492-494 アクセス:2020.06.21
  7. Sang Ju Lee, (2013) “Combination of 595-nm Pulsed Dye Laser, Long-Pulsed 755-nm Alexandrite Laser, and Microdermabrasion Treatment for Keratosis Pilaris: Retrospective Analysis of 26 Korean Patients” J Cosmet Laser Ther. 2013 Jun;15(3):150-4. doi: 10.3109/14764172.2013.769276. Epub 2013 Mar 6. PMID: 23464682
  8. Rehab Mohamed Sobhi, (2020) “Comparative Study Between the Efficacy of Fractional CO2 Laser, Q-switched Nd:YAG Laser (1064 Nm), and Both Types in Treatment of Keratosis Pilaris” Lasers Med Sci. 2020 Jan 11. doi: 10.1007/s10103-020-02956-w. PMID: 31927647
  9. Vasanop Vachiramon, (2016) “Fractional Carbon Dioxide Laser for Keratosis Pilaris: A Single-Blind, Randomized, Comparative Study” Biomed Res Int. 2016;2016:1928540. doi: 10.1155/2016/1928540. PMID: 27247936
  10. 大塚 藤男. “皮膚科学 第9版” 金芳堂, 2011, p341-342

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