避妊用ピル
当院で避妊用に処方しているピルは、低用量ピルの「ラベルフィーユ」と超低用量ピルの「マーシロン」です。
低用量ピル
ラベルフィーユは、トリキュラーと同成分の第2世代のピルです。自然なホルモンバランスを模した処方設計がなされており、色が3つに別れていて三相性ピルと呼ばれています1。
血栓のリスクが比較的少なく、不正出血も起こりにくいのが特徴です。反面、男性ホルモン活性が高いタイプのピルなので、肌への好影響はあまり期待できません。
超低用量ピル
マーシロンは、低用量ピルのマーベロンよりも女性ホルモン量(EE2)を2/3の20μgに抑えた「超低用量ピル」です。
吐き気や頭痛、乳房の張りなどの女性ホルモン特有の副作用がより少なく、乳癌リスクとの関連がなく、血栓リスクは有意差はないものの低用量ピルよりも低く、より安全性の高いピルと言えます2,3。
避妊効果は低用量ピルと同様に得られ、肌に対する効果はマーベロンと同等レベルです。
ピルの避妊効果と副作用
ピルの避妊率は正しく服用すれば99%以上(パール指数0.3)4とコンドームよりも効果は高く、ヨーロッパでは妊娠可能な年齢の女性の約半数が飲んでいる国も珍しくありません。日本のピルの普及率は1%と少なく、まだまだいろいろな偏見があることも事実です。
もちろんピルは必要がなければ飲まなくても良いのもです。コンドームで十分だと考える人もいるでしょう。しかし、コンドームによる避妊は、男性任せの避妊法で、女性主体ではありません。ピルの服用によって、望まない妊娠を女性自身の意思で防ぐことは、とても大きなメリットになります。
ピルはそれ以外にも、女性の生理痛を和らげたり、生理周期を整えたり、生理をずらすこともできます。また、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOs)の症状を抑制したり、卵巣がん、子宮体がんのリスクを下げるなどの副効用も期待できます5。
ピルの副作用
ピルの副作用で最も懸念される副作用は「血栓症」です。血栓症は、血管内で血が固まってしまい、血管を詰まらせてしまう症状のことをいいます。血栓症のリスクは中用量ピルが低用量ピルよりも高く、同じ低用量ピルの中でも、配合されている黄体ホルモンの種類によってリスクが異なります。
低用量ピルの血栓症で死亡するリスクは、交通事故にあって死んでしまうというリスクよりも確率が低いことがわかっています。血栓症の危険性がある方を事前に問診票や診察で確認し、排除することでよりリスクを下げることが可能です。
また、ピルは卵巣がん、子宮体がん、大腸がんのリスクを下げるものの、乳癌、子宮頸がんのリスクを高める可能性があります。ピルを中止するとそのリスクは正常まで徐々に下がっていきますが、乳癌や子宮頸がんの既往がある方は飲むことはできません。また、当院では20代の方は子宮頸がん検診を2年に1回、30代の方は乳癌、子宮頸がん検診を毎年受けることをおすすめしています。
「肌のクリニック」では、ピルのメリット、デメリットの両方を説明して患者さんの同意を得たうえで処方しています。ピルの副作用について詳しくは、「ホルモン治療によるニキビ治療」のページをご参照ください。
また、当院ではニキビ治療や避妊目的にピルを処方しており、国内では未承認のため、医薬品副作用被害救済制度(重篤な副作用時の製薬会社からの保証)の対象外となります。
ピルを飲めない方
- 初経前の方
骨端線が閉鎖して、身長が止まる可能性があります。 - 18歳未満の方
18歳未満の方は初診時には保護者の方と同伴でなければ、薬の処方はできません。再診時はご本人だけでも診察可能です。 - 40歳以上の方
血栓のリスクが高まる可能性があるため、ピルの内服をお勧めしていません。 - タバコを吸われる方
血栓のリスクを高める可能性があるため、当院では必ず禁煙していただいております。 - 妊娠中、授乳中、妊活中、または1年以内に妊娠の予定がある方
- BMIが30を超えている方
BMI(体重÷身長m2乗)が30を超えている方は、治療を受けることができません。 - 前兆(目の前が暗くなる、キラキラする等)のある偏頭痛がある方や、35歳以上で偏頭痛がある方
- 既往歴による制限
乳癌、子宮頸がん、子宮頸部上皮内腫瘍、クローン病、潰瘍性大腸炎、高血圧、高脂血症、糖尿病、重篤な肝障害、腎障害、肝腫瘍、耳硬化症、抗リン脂質抗体症候群、血栓性素因、肺高血圧症、心房細動、心臓弁膜症、心内膜炎、ポルフィリン症、てんかん、テタニーの既往がある方は治療を受けることができません。 - 診断の確定していない異常性器出血がある方
- 妊娠中に高血圧、黄疸、持続的なかゆみ、ヘルペスがあった方
- 定期検診の重要性
半年に1度の定期受診と、副作用検査が必要となります。遠方の方には長めに処方することも可能ですので、診察時にご相談ください。定期的に当クリニックへ通うことが出来ない方は、お近くの他の病院での治療をおすすめします。
ピルでの避妊が難しい場合は、ミニピルでの避妊をおすすめしておりますので、「ミニピル処方外来」のページをご覧ください。
ピル処方外来の料金– Treatment Costs –
項目 | 料金(税込) |
---|---|
診察料 | 初診料 3,850円 再診料 1,650円 |
ピル | ラベルフィーユ 1シート 2,178円 マーシロン [海外製] (超低用量) 1シート 2,486円 |
検査料 | 血液検査(6ヶ月毎) 2,948円 血栓症検査(必要時) 1,408円 尿検査(初回のみ) 1,056円 |
- 最大6シートまで処方可能です。
- 価格は避妊目的のためのピルの料金です。ニキビ治療の場合は、初診料、使用するピルの種類が異なりますのでご注意ください。
- 初診時、その後は6ヶ月に1回の血圧・体重測定・血液検査が必要です。血栓症(D-ダイマー)検査は、血栓症の症状が疑われた場合にのみ必要です。
- 再診の方は「遠隔診療(オンライン処方)」もご利用可能です。
参考文献・サイト一覧
- 富士製薬工業株式会社 “ラベルフィーユを服用される患者さんへ” https://www.labellefille.info/ アクセス2020.05.16
- Beaber EF, (2014) “Recent oral contraceptive use by formulation and breast cancer risk among women 20 to 49 years of age.” Cancer Res. 2014 Aug 1;74(15):4078-89. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-13-3400. PMID: 25085875
- van Hylckama Vlieg A, (2009) “The venous thrombotic risk of oral contraceptives, effects of oestrogen dose and progestogen type: results of the MEGA case-control study.” BMJ. 2009 Aug 13;339:b2921. doi: 10.1136/bmj.b2921. PMID: 19679614
- Hatcher RA, (2011) “Contraceptive Technology” 20th Edition. ISBN-13: 978-1597080057
- 日本産婦人科学会 (2017) “低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合 ガイドライン(案)“