Q.ホルモン治療の副作用にはどんなものがありますか?

ニキビのために処方される頻度が高い抗生物質や漢方薬は、保険で認可されているため副作用がほとんど無いと思っている患者さんが多いのですが、実はホルモン剤のほうが重篤な副作用を起こす頻度が低いことがわかっています。

肌のクリニックでは低用量ピルと抗男性ホルモン薬を主に使用してニキビの治療にあたっていますが、低用量ピルにいたっては、全世界で毎日1億人以上の女性が使用しており、非常に安全性の高い薬剤です。欧米では20代、30代の女性の約半数が使用している国もあります(ドイツ52.6%、フランス43.8%)。

50年以上前から処方されており、風邪薬よりも安全な薬として認知されていますが、全く副作用がないわけではありません。飲み始めの頃はホルモンのバランスに変化が起きるため、吐き気や頭痛、乳房痛、むくみなどの症状が出ることがあります。それらの副作用は、服用を続けると次第に軽快していくことがほとんどです。

「服用すると妊娠に影響はありませんか?」と心配される方がいますが、低用量ピルを服用中は、それ自体避妊効果がありますので妊娠する可能性は非常に低く、また服用後も妊娠しにくくなるといったデータはありません(もしあれば、世界中でピルを使用する人はいなくなります)。

「癌にかかるのが怖いのですが」という患者さんもいますが、服用5年以内であれば乳癌、子宮頸がんのリスクの増加は少なく、また逆に子宮体癌、卵巣癌、大腸癌のリスクは減少します。今や日本人の12人に1人がかかる乳がんのリスクは、最大でも1.1倍から1.2倍程度とされています。また、服用を中止すれば徐々にリスクはなくなります。

子宮頸がんのリスクは5年以内の服用では増加はほとんどありませんが、10年以上の服用で2倍に増加するというデータがあります。当院ではピルを飲んでいる、飲んでいないに関わらず、子宮頸がんは20代から2年に1回、乳がんは30代から1年に1回の検診をお勧めしています。

ピルによる血栓症(血が固まり、静脈や動脈に詰まる病気)のリスクについては、薬の種類によって3倍から最大7倍程度まで高まることがありますので、注意が必要です。特にニキビ治療用のピルを使用した場合には、血栓症のリスクが高まります。例えば、ヤーズは低用量ピルの中では最も血栓症のリスクが高いピルの一つとして知られていますが、過去に国内で14万人処方された患者さんのうち、3名の死亡事故が報告されています。死亡事故までいかなくても、血栓症を発症した人数は87人と報告されており、他のピルに比べて格段に多い数値となっています。

ただ、14万人中3人というのは、10万人あたり2.1人の死亡数ということになります。統計上は、交通事故での死亡する確率よりも4分の1、喫煙によって死亡する確率より80分の1となっています。

肌のクリニックでは、年齢・血圧・体重・喫煙歴や、高脂血症、前兆がある片頭痛などの持病を確認し、血栓症のリスクが少しでもある方へは原則処方しておりません。また、当院では20代で若い方で1日1本しかタバコを吸わない方でも、必ず禁煙していただいています。

血栓を100%完全に予防することはできませんが、生活指導や詳しい副作用シートで血栓症のリスクが高まる状態や症状などを読んでもらい、できるだけ予防できるように心掛けています。

抗生物質は飲んだことはあるが、ホルモン剤はなんだか怖いという患者さんもいます。抗生物質の副作用としては、アナフィラキシーショック、スディーブンスジョンソン症候群、間質性肺炎、膵炎、大腸炎など、死亡事故へつながる重篤な副作用があります。

皆さんが抗生物質を医師から処方されたとき、このような副作用の説明を受けましたでしょうか?もし受けたならば、とても飲みたい薬とは思わないでしょう。低用量ピルは、皆さんが飲んだことのある抗生物質・解熱鎮痛剤・風邪薬よりも重篤な副作用が少ないことは確かです。

以上のように安全性は高い薬ですが、当院では単にメリットだけを並べるのではなく、デメリットやリスクの説明もしっかり行い、患者さん自身の同意を得た上で治療を行なっています。

ホルモン剤によるニキビ治療について詳しくは、「ホルモン治療」のページをご参照ください。